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第250話・移動要塞ネロスフィアⅡ

 

 ルールブレイカーの本拠地である移動要塞ネロスフィアⅡは、一言で言うなら––––移動する街だった。


 6つ足を交互に動かしながら、亀の甲羅のように背負う上部の古代住宅街を揺らし、要塞はゆっくりと移動する。

 真ん中には尖塔がそびえ立っており、高さは500メートルを超えていた。


 その塔の頂上部にあたる場所で、赤色のクリスタルが不気味に輝いている。

 これこそが––––


「全ての中心……、『神結いの儀式』の中核だな? ドクトリオン」


 要塞の高台から高原を見下ろしていたのは、ルールブレイカーのマスターにしてこの世の道理を超えた存在である大天使。

 名をスカッド。


「もちろんですスカッド様! ファンタジアでは失敗しましたが、今回は十重二重の策を講じ––––必ずや“神の復活”を実現して見せます!!」


 配下の科学者の返事に、緑色の長髪で片目を隠した大天使は満足そうに頷く。


「なら、例の兵器も準備できたな?」


「120%準備オーケーですよスカッド様!! ご覧あれえぇええッ!!!」


 歩行の振動とは別に、ズズン……と足元が揺れた。

 巨大な塔の中心部が円形に開き、中から砲身がゆっくりと突き出した。


「これこそ我が至高の発明!! 人類が想像できる最大最強の兵器にして、天罰の地上代行者!! どんな軍隊でも一発で蹴散らす無敵の具現化ですッ!!!」


 要塞内スピーカーで叫び散らすドクトリオンが吼えると、砲が音を立てて固定された。

 砲身の下部を、巨大な2脚が支える。


 この砲の名は––––『超高出力荷電粒子砲(ガルガンティア)』。

 王国最高の叡智たる天才科学者ドクトリオンが開発した、世界最強クラスの大規模殺戮兵器だ。


 特定の粒子に電流を帯びさせ、亜光速まで加速させてから目標へ直撃させる。

 まさしく新世代の兵器だった。


「私の『ガルガンティア』は電力換算にして1発で大陸が使うおよそ1ヶ月分のエネルギー量を誇りますが、今回使用するのは魔力粒子!! 量産した第5世代ホムンクルスによって生み出されるこれを利用する! まさに革命的環境ブレイカーな兵器なのです!!」


「大変に素晴らしいじゃないか、して威力は?」


「驚かないでくださいよぉ? なんと1発でTNT換算500ギガトンの砲撃を加えられます!! 発射速度は30分に1発ですが、十分かと!」


「なるほど実に良い兵器のようだな、しかし念のためだ。欠点も聞いておこう」


「半径20キロ圏内の目標には、その威力の大きさ故に射撃できません。これはあくまで遠距離殲滅兵器、近距離用ではありません」


「そうかなるほど、じゃあ敵はすぐに発見しないとな」


「はい、ですがご安心を。ノイマンの演算能力によって空中への高速目標へも攻撃可能です! さらに––––」


 ネロスフィアⅡ全体を、二重の膜が覆った。

 一瞬だけ見えたそれは、やがて透明になって空へ溶けた。


「この通り、魔甲障壁を二重に展開しております!!」


 これならば、敵が––––あの竜王級がいかに攻勢を掛けて来ようと対処可能だろう。

 目的地であるミリシア王都50キロ圏内まで辿り着けば、儀式遂行は十分可能。


 それに今回は––––


「剣聖グリード、君にはある特別な任務を与える。万が一の可能性が発生すればだが……君が竜王級を討ち取るのだ」


 スピーカーから威勢の良い返事が飛んでくる。

 “あのプラン”なら、物理的に竜王級を実質無力化できるだろう。


 残りは……、


「レイ、君は塔の死守に専念したまえ。これが破壊されればファンタジアの二の舞だ」


「……了解しました」


 さぁ、これで全ての準備は整った。

 今日この日こそ、くだらないこれまでのルールを破壊する時だ。


 防げるものなら防いでみろ、阻止できるのならやってみろ!

 今さら他の大天使が介入したところでもう遅い、世界は––––


「私の物になるのだッ!」

  

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