表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

219/497

第219話・欺天使バリアン

 

「さーて、見つけたよ……犯人さん」


 空中からミサイルのように着地したアリサは、体操服に付いた埃を手で払いながら立ち上がった。

 睨め付けた先に立っていたのは、シャツにジーパンというラフな服装をした男。


 けれどアリサには、それが一般人だという風にはとても見えない。

 彼の名はルールブレイカー王都支部 支部長バリアン。


 先日行われたアルト・ストラトス海兵隊による掃討戦、その唯一の生き残りだった。


「誰だお前は……この結界で動けるのか?」


「こっちも同じ疑問だね、もしかしなくても……胸にかっこよくつけた“アクセサリー”のおかげかな?」


 視線の先には、淡く光る石ころ。

 もはや疑う余地などない、無能力者を魔導士にしてしまう人口宝具––––『フェイカー』だった。


「異世界研究部の魔法を妨害したのも、あなた?」


「ふん、だとしたら?」


「簡単な話だよ」


 バリアンの眼前からアリサが消えた。

 転移ではない、恐ろしい領域にまで底上げされた身体能力による超高速肉薄。


 1回のまばたきより速く、バリアンは顔面を殴り飛ばされていた。


「ごあぁっ!?」


 木の葉のように宙を舞ったバリアンは、小石がごとく転がった先でトラックに激突。

 荷台を大きくへこませた。


「あなたを今、この場で––––たっぷりぶちのめす。ルールブレイカーの目的がアルスくんなら」


 全身から紫色のオーラを溢れさせたアリサは、普段こそ優しい目つきを鋭いものへ変貌させた。


「一切合切、遠慮容赦なく、可能な限りの全力で! お前を殴り殺す!! フェスティバルの邪魔者はわたしが許さない!!」


『魔壊竜の衣』に変身した今のアリサは、間違いなくバリアンを超えていた。

 そこに妥協や油断が介入すれば話も別だろうが、彼女にそんなものは全くない。


 正攻法で挑めば、勝率100%の戦いだ。


「たしかに……、お前は強そうだ。スカッド様が”竜の力“にだけは気をつけろと仰っていた意味が、今ならわかるぜ……」


 ゆっくり立ち上がったバリアンは、乱れた髪を整える。


「だがお前は考えたことがあるか? その力––––『血界魔装』についてだ。見たところ伝説の竜、オーニクスと同じ能力を持っているな」


「時間稼ぎの雑談には乗らないよ、2分後にあなたは地面に這いつくばってるんだからさ」


「はっ! やはりだな……思った通りだ。貴様はただ手に入れた力を闇雲に振るうだけの子供だ。自分の力に全く向き合っていない」


「魔導士モドキにだけは言われたくないね、そのフェイカーに誰の能力が入ってるかは知らないけど––––」


 再び地を蹴ったアリサは、直上から縦に拳を振り下ろした。


「これで終わりだよ!!」


 チェックメイトと思われた瞬間、複数の事象が同時に起きた。

 バリアンの『フェイカー』が輝いたと同時、彼の目が“金色”へ染まったのだ。


 0.5秒後、通りにある建物が砲弾でも落ちたように瓦礫を散らした。


「がっ……はッ!?」


 高速で吹き飛ばされたアリサが、壁に打ち付けられた状態で姿を現す。

 なにがどうなった……、記憶を探っても訳がわからない。


 気づけばアリサはここに叩きつけられていたのだ。


「魔法が一切効かない竜の少女よ、無知なお前に良いことを教えてやろう」


「ッ!?」


 煙が晴れた先に立っていたのは、さっきまでの中年男性ではない。

 純白のトーガを身につけた、若く色白の青年へと変貌していた。


 背後からは、同色の翼が翻る。


「この『フェイカー』に収まりし能力は、偉大な上位種にして我らがルールブレイカーのマスター。大天使––––スカッド様の一部。竜の力ごときで上回ることなぞ決してできん」


「ケホッ……、天、使……?」


「あぁ、軍に襲われた中––––これだけは守り抜けたんでな。本来使うことなど許されないが……この状況ならスカッド様もご許可くださるだろう」


 剥がれ落ちる形で地に足をつけたアリサは、一瞬薄れかけた意識を気合いで覚醒させる。


「天使の能力持ちが、ずいぶんとセコイ絡め手ばっか使ってたもんだ……。そんな能力あるなら最初から使いなよ」


「なーに、状況が少し変わっただけだ。お前が天空から突っ込んできた段階で予定は変更された」


 偽りの翼を広げる欺天使(ぎてんし)バリアンは、口角を吊り上げた。

 その身体からは、魔力とも違う力が燃え盛る。


「スカッド様のお達しでな、愚かな古代帝国の遺産である竜使いの能力者は––––接敵したら全力で能力を奪えと厳命されている。さぁまずはお前からだ……魔壊竜」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ