第193話・レイ・イージスフォード&グリード・ランチェスター
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大魔導フェスティバルまで、あと25日。
ちょうどユリアVSニーナの公式戦が行われている頃、街の大通りでローブ姿をした男女のペアがいた。
「今の––––感じた?」
そう呟いた少女は、アルスと同じ“灰髪”を揺らしながら14歳らしい顔つきで隣の男を見た。
「もちろんだぜ、レイ・イージスフォード。あれほどの魔力を剣聖の俺が感知できないはずもないだろう?」
「剣聖ねぇ……、あんたいつまでその名を引きずるつもり?」
呆れ声でそう言われたのは、元冒険者ギルド『神の矛』リーダー。
アルスをパーティーから追放した張本人にして、今はスカッド直々に対竜王級の筆頭を任された男。
剣聖グリード・ランチェスターだった。
「いつまでも何も、俺はこの世で唯一無二の剣聖だぜ? 裏切り者アルスの野郎を圧倒できるのは世界で俺しかいない」
いつもだが、どこからそんな自信が湧いてくるのだろう。
レイはため息をつきつつ、賑やかな街並みを見渡した。
「街は大魔導フェスティバルのムード一色ね、さすがはわたしだけのお兄ちゃん……ここまで盛り上げるなんてホント凄いっ」
「テメェはアルスか俺……どっちの味方だ、レイ」
「わたしはわたしだけのお兄ちゃんのため、愛しのお兄ちゃんに群がる生徒会とかいうのをぶっ潰すだけよ。そして––––」
手に握った石のような外見の人工宝具を、強く握りしめる……。
「お兄ちゃんを竜王級という力から解放して、わたしの傍でしか……生きられなくするわ。ぜったいっ……ゼェッタイそっちの方が幸せだもの」
恍惚とした顔で述べるレイは、一種の狂気を宿していた。
グリードを持ってしても、ドン引きさせるレベルに。
「歪みきってやがるな、なぜスカッド様はこいつなんかとペアを組ませたんだ」
「それはこっちの台詞ね、アンタと組まされるなんてわたしも良い気分がしないわ。だってわたしのお兄ちゃんを殺すつもりなんでしょ?」
「はっ! 俺はアルスのヤツから能力を奪えればそれでいい。まぁその過程でボコボコにして半殺しにするわけだが」
「フーン、できるの?」
「できるさ! 俺は”新たな力“を頂いた。そしてヤツから能力を奪うためなら何でもして良いと全権すら委任された! だから指示には従ってもらうぞ、レイ・イージスフォード」
「ッ……! 気に入らない。けれどどうするの? 真正面から言ったんじゃまた前回みたいに返り討ちにあうだけよ」
「合わねえよ、そして––––」
胸へ埋められた『フェイカー』に手を当てながら、グリードは下卑た笑みを浮かべる。
「俺はこの後に竜王級を超える、そしてヤツに味わわされた屈辱を全てお返ししてやるぜ」
彼の言う屈辱とは、理不尽に追放しておきながらアルスに逆恨みしている全ての事柄。
ユグドラシルで全世界中継の大恥をかき、チャンネルもギルドも崩壊。
自業自得なのだが、グリードはその責任をアルスへ完全転嫁していた。
「俺の力のデモンストレーションだ、フェスティバル当日––––ヤツが主催するこのデケェ祭りを崩壊させてやる。そんでもって思い知らせるんだ、自分の無力と俺の偉大さをなっ」
技紹介コーナー第4回。
【追放の拳】。
魔壊竜の衣に変身したアリサだけが使える、必殺の滅軍戦技。
飛来するあらゆる攻撃・防御魔法を無効化しながら放たれる、武闘派な彼女らしい一撃必殺の特大高威力パンチ。




