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第190話・成功! 中央通りブランド協賛

 

「うっそだろ……」


 いつもと変わらぬ王都の大通り、『中央通りブランド』を巡る交渉は苛烈を極めるだろう。

 そんな俺の予想を見事に裏切った、隣を歩く大賢者のしたり顔に思わず胸中の声を漏らす。


「まさかここまでトントン拍子で行くとは、正直思ってませんでした……」


 自分の手にあるのは、何度見ても協賛に関わる合意と契約内容の書類。


「むっふふ〜、こう見えて伊達に大賢者を名乗っとらんからのぉ。楽勝じゃわい」


「さすがです、師匠!」


 大魔導フェスティバルにおける、中央通りブランドとの厳しい協賛。

 その交渉に、今回フォルティシアさんがついてきてくれたのだが……まず結果から言って大成功だった。


 理由は単純、持ってるコネが違ったのだ。


「師匠って魔導具もそうですけど、あらゆる分野に結構手広いですよね。お陰で今回は本当に助かりました」


 胸を撫で下ろすユリア。


 どうやら、『中央通りブランド』に普段小麦や果物を卸している農耕ギルドが、フォルティシアさんの管轄するギルドだったらしくまさかの2つ返事でOK。


 交渉自体はたぶん1時間も掛かってないんじゃないか?


「別に簡単な関係じゃよ、ワシは作った魔導具を農耕ギルドに提供する。ギルドはそんなワシの声に応えてくれる。ギブアンドテイクというヤツかの」


「ちなみに何を提供してるんですか?」


「特別製の肥料や、後は魔導農業トラクター……通称”(たがや)しくん7号“とかかの?」


 相変わらずネーミングセンスが謎である。


 まぁ、影響力で言ったら株式会社における大株主に近い感じか。

 どっちにせよ、これで大魔導フェスティバルにおける障害は1つ消え去った。


 これで次のステップに進める。


「そういえば会長、留守番の2人は順調そうですか?」


「あぁ、ミライは今フェスティバル実行委員会へのヘルプとして調整に出てる。アリサも各種クラスとの予算会議で大忙しだ」


「出店についても……そろそろ決めないとですね」


「だな……正直もう遅いくらいだが、帰ったらすぐに場を設けよう」


 大魔導フェスティバルは、午前中に他校で言う体育祭的なイベントを催す。

 そして午後から、クラスや部が各々で出店して学外からのお客をもてなす。


 このお客の規模が毎年凄まじく、人数が大量なのはもちろん国の要人クラスまで訪れるのだ。

 それだけに、学内の全生徒が本気(ガチ)で望む。


 過去には、大臣に目をつけられて国家の要職に引き抜かれた者もいるほどだ。


「師匠は来るんですか? 大魔導フェスティバル」


「ちょうど王都に滞在せねばならんしな、行くつもりじゃよユリア」


「やった! じゃあ何か出し物すると思いますので、是非来てください!」


 出し物かぁ……、一応既に案は出てはいるのだ。

 主にミライとアリサの2人から、出ている。

 出ているのだが……。


「果たして許可して良いのか……? ”アレ“を」


「ん? どうしました会長?」


「いやなんでもない!! それより帰ったらミライとアリサを呼び戻すぞ。さらに忙しくなるだろうからな!」


 とりあえず現状は保留で良いだろう。

 聞いた時は非常に嫌な予感しかしなかったので、どうにかして破却しよう。


 うん、そうしよう。


「じゃ、また近いうちにの〜」


 フォルティシアさんと別れ、足早に王立魔法学園の正門をくぐろうとした時だった––––


「やっと見つけたぞ、悪の生徒会長っ」


 校舎へ続く道の真ん中で、1人の少女が待ち構えていた。

 緑色の髪をセミロングで下ろした……なんというか、幼い印象の子だ。


 えっと……確か。


「どちら様?」


「ニーナだ!! 異世界研究部の部長! こう見えてアンタらより年上なんだぞ!!」


 目の前で激しくがなったのは、事あるごとに問題しか起こさない異端部。

 名を––––『異世界研究部』の部長、ニーナだった。


技紹介コーナー第3回。


【血界魔装】。

使用者:ミライ、アリサ、カレン、ミリア(フェイカーによる擬似)。


死んだ竜がこの世に遺した力を、まさしく”衣“のように纏うことで大幅にパワーアップする変身。

身体的変化がかなり激しく、瞳から髪まで大きく色を変えて輝きを放つ。

いまだ謎多き変身で、会得するのはもちろん使いこなすのにも尋常ではない才能が必要である。

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