第187話・アルスVSユリア 二度目のガチバトル
公式戦に続いて、俺とユリアは二度目となる干戈を交えた。
見せてやろう、王立魔法学園のツートップはそこらの自称エリート等と一線を画していることを。
「星凱亜––––『木星巨弾』!!」
最初に仕掛けたのはユリア。
宝具をハンマーモードへ変えながら肉薄。
俺へ全力で叩きつけた。
「うわああぁァアアッ!!?」
このたった一撃だけで、セント・レグナムの学生たちが余波によって吹き飛ばされる。
フォルティシアさんが彼らへ防御魔法を展開したことを確認し、俺は素手で受け止めていた宝具を押し返した。
「金色のオーラ……『身体能力強化』ですね、やはりダメージは与えられませんか」
「あぁ、でもお前だって技の威力かなり上がってるぞ」
「お褒めに預かり光栄です、ではこれならどうでしょうッ」
宝具が変形、魔法杖モードに変わった先端へ魔力が集中した。
そして、超至近距離から技が放たれる。
「星凱亜––––『火星獣砲』!!」
発射されたのは、街すら丸ごと薙ぎ払って見せた高出力レーザー。
こちらも当時より威力は大幅に上がっているが、俺は蹴り1つで軌道を曲げて見せた。
「うわっ! うわああ!!」
逸れたレーザーが、学園の尖塔を粉微塵に粉砕した。
無論––––これで終わるはずもない。
距離を取った俺は、もう片方のエンチャントへ切り替えた。
「『魔法能力強化』!」
そして––––
「「『飛翔魔法』!!」」
俺とユリアは、同時に天へ飛翔した。
「飛翔魔法!?」
「しかも飛行に乱れが一切ないわ! あんなの見たことない!」
驚くセント・レグナムたち。
まだ終わりじゃねえぜ。
「さぁ来いユリア! 派手なの頼むぜ!!」
「了解です、会長! では––––」
俺より数段高く昇った彼女は、天空で眩い光を雷光のごとく輝かせた。
より集まったエネルギーが、一気に解放される。
「星凱亜––––『金星煌爛雨』!!」
数十もの追尾式エネルギー砲が連続で、文字通り雨の如く降り注いだ。
俺目掛けて突っ込んだそれらは、1発も外すことなく着弾。
爆風が学園を含め、周囲の建物のガラスを砕き破る。
「なるほど……こんなのにやられたら、キールの特殊部隊も瞬殺されるわけだ」
黒煙から出た俺は、全身を囲むようにして展開した六角形の焔を解除する。
自分の身体はあれほどの爆発にも関わらず、全く無傷だった。
「『イグニール・ヘックスグリッド』ですか……さすが会長ッ。簡単には行きませんね!」
再び『火星獣砲』を放つユリア。
俺は発射された攻撃を全て受け止めた後、彼女へ肉薄。
下からは目で追うのも困難だろう空中機動戦を演じた。
だが相手はあの元学園1位であるユリア……思った通り、竜の力を持つミライとアリサを足してドッコイかそれ以上。
––––けど。
「はっ!!」
俺は瞬間的に、切っていたもう片方のエンチャントを発動。
紅色の上を金色のオーラがかぶさり、同時に深い蒼色へと変わった。
「『身体・魔法能力極限化』!?」
ユリアが対応するよりも早く、俺はブルーの異次元的な超高速で彼女の背後を取った。
手刀を首の前で寸止めし、ユリアの金髪をなびかせる。
「ッ……やはり違いますね、わたしの負けです……会長」
「良い勝負だったぜユリア、あと協力サンキュー。おかげで……」
互いに地上へ降りると、そこにはフォルティシアさんに守られながら腰を抜かすセント・レグナム学生たちの姿。
「これでわかったかな? 今日は俺たちが特別講師だ。素直に受けてくれるヤツは立ってくれ」
各々が、まるで化かされたような顔で起き上がる。
「なんなんだよあの技……、とんでもない威力だったのに全部無傷で防いでたぞ……」
「あんな激しい飛翔……ウチの先生たちでもできないわ、これが––––王立魔法学園のレベル。同じ歳でも次元が違いすぎる」
目論見通り、みんな素直に授業を受ける気になったようだ。
すっごく今さらですけど本作キャラの技紹介コーナーでもポチポチやっていきましょうか。
おさらいのつもりでどうぞ。
第1回。
【身体能力強化】。使用者:アルス。
特徴:文字通り身体能力が一通り強化される初級エンチャントで、アルスのみ発動時は金色のオーラに包まれる。
竜王級の受容量が化け物なので、これ自体は普通のエンチャントだが通常時から少なく見積もっても50倍以上まで跳ね上がる。
この状態で彼が本気パンチした時のJ(エネルギー)値は、現代戦車の放つ120ミリAPFSDS高速徹甲弾に匹敵する。




