表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/497

第179話・VSセント・レグナム学園

公園でゴミ掃除をするだけのほのぼの回です。

 

「「『飛翔魔法(メテオール)』!」」


 全方位から迫る攻撃魔法。


 ユリアと一緒に、俺は包囲陣の中央から空中へ飛び出す。

 足元の大爆発を味方にして、焔のドームの頂上まで一気に跳ね上がった。


「さて、連中どうしてくれようか……」


 邪悪な笑みを隠さない俺を見て、ユリアは浮遊しながら呆れ顔。

 下には、こちらを呆然とした表情で見上げる学生たち。


「飛翔魔法もできない人たちです、わたしまで加わったらオーバーキルも良いところなので、会長が戦う様子を大人しく見ときますよ」


「あぁ、ぜひゆっくりしといてくれ。アイツらがユリアをどうこうしようなんざ––––1万年早いと教えてくる」


「お願いします、正直ナンパでは過去一番腹が立ちましたし」


 ユリアが俺の右手を掴んだ。


「ゲス野郎に身の程を教えましょう」


 珍しく丁寧台詞を捨てたユリアが、回転と同時に俺を地上目掛けてぶん投げた。

 迎撃の魔法が飛んでくるより早く、俺は公園に隕石がごとく突っ込んだ。


「うわああぁぁッ!?」


 その衝撃だけで複数の魔導士が同時に吹っ飛ぶ。

 土煙の中心で、俺は膝を上げながら笑った。


「さて、どいつから来る? どんな武器で戦う? なんでも良いぞ––––剣でも魔法でも銃でもなっ」


「おっのれぇ……!! だが聞いているぞ! その紅い変身は魔法だけが強化されるとな! であれば肉薄して即終了!! 近接戦闘もできない竜王級など恐るるに足らず!!」


 グラハム含めた6人が砂塵を切って、装飾の豊かな剣や杖を振った。


「『高速化魔法(ミーティア)』」


 俺は全周から繰り出される剣撃を、残像ができるほどの速度で避けた。

 そして、


「わからねえか、こっちはあえて––––」


 相手の一太刀が終わる時間より速く、俺は6人全員の溝落ちへ蹴りを浴びせた。


「ごはっ!?」


「ガフッ!!」


 連中から見れば、全方位へ同時に蹴りを繰り出したように映っただろう。

 包囲していた学生が、男女平等に砲弾がごとく弾き飛ぶ。


「身体能力上げずにそのままでやってんだよ、セント・レグナムの意地? 大変結構、なら––––」


 俺は近くのゴミ箱に立てかけられていた、清掃用のホウキを掴んだ。


「テメェらには、我が王立魔法学園の聖剣をプレゼントしてやろう」


 清掃用ホウキが、魔力コーティングによってリーチと硬度を激的に変化させる。

 これに関しては全く加減してないので、おそらく戦車砲弾でも壊れない聖剣(ホウキ)の完成。


「グッ……ふざけた真似を……!! おい! ヤツに致命打を与えた部は来学期の予算増額だ! 掛かれ!!」


「へぇ、そうやって釣ってたのか。正直褒められた行為じゃないぞ」


「く、喰らえ! 我ら魔法研究部の共同秘奥義––––グランドクロ……」


 魔法陣を展開した数人の女子生徒たちは、詠唱することなく宙を舞った。

 俺が軽く振り下ろした聖剣(ホウキ)が、横にした竜巻のように彼女たちを衝撃波で吹っ飛ばしたのだ。


 後にできたのは、焔の壁まで一直線に伸びた土の道。


「じ、地面が……あんなにえぐれっ」


 俺は手に持ったホウキを、縦横無尽に振った。

 本当にたったそれだけのことであるが、発生する斬撃は魔人級の爆裂魔法にも引けを取らない威力。


「なっ! なんなのよこれ! こんなデタラメ––––あぐっ!?」


 掃除でもする感覚で、セント・レグナムのエリートたちを次々戦闘不能にしていく。


 数の劣勢など、俺にとって心配するファクターにすらなり得ない。

 渾身の防御魔法も、カウンターで放たれた攻撃魔法も、術者含めて薙ぎ払った。


「どうした、変態生徒会長……数で囲めばいけるとでも思ったか?」


 さっきまでの威勢が消滅し、放心状態で立ち尽くすグラハム。

 再び空中へ浮き上がった俺は、ホウキを今一度両手でガッチリ握った。


 紅色の魔力が放出され、地響きが発生する。


「俺が今までどれだけの魔人級魔導士と戦ったと思ってる、お前らは確かにエリートかもしれんが……ハッキリ言って素手のユリアの足元にも及ばねえ」


 輝くホウキを天高く伸びる十字架のように持ち上げ、雲すら消し飛ばす魔力の光が紅く王都を照らす。

 必死で支え合いながら、立ちあがろうとする連中へ照準をゆっくり定めた。


「神聖セント・レグナムなんだろう? 変態生徒会長と金銭目当てのゲス部員共––––ほら。テメェの神にでも祈れよ」


 世のゴミ共へ向けて、俺は聖剣(ホウキ)を真っ直ぐに振り下ろした。


「あぁ……女神アルナ様、大天使様……どうか、我らに救いとご慈悲を……っ」


 諦め泣きしながら、生徒会長グラハム率いるセント・レグナムの学生たちは光に飲み込まれた。

 ドームの中を爆裂波が覆い尽くし、王都全体が地鳴りで揺れ動く。


「––––高い授業料だったな、俺の慈悲でいくらかは割引いといてやる」


魔法能力強化(ペルセウス)』解除。


 煙が晴れたそこは、さっきまで公園“だった”焼け野原。

 あちこちで、セント・レグナムの学生たちが全員土と瓦礫にまみれて気絶していた。


「お疲れ様です、最後の攻撃は神の姿を借りた悪魔みたいでしたよ」


 空中の安全圏から降りてきたユリアが、苦笑しながら俺の隣に立つ。


「神より慈悲深いと思うけどな、一応全員脳震盪だけで済ませれたし。まぁそれでも3日はろくに動けんだろうが……」


「手加減のコツは掴めましたか?」


「そこはまだまだだな、けど殺すわけにもいかんだろ。ほら」


 俺が指差した場所は、空中。


「これ以上やったら、あそこの人が黙ってないし」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ