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第158話・アルスVSクラーク捜査官

 

 俺は控えめに言ってもブチギレていた。

 それこそ、『神の矛』のメンバーと相対した時以来の怒りの感情がとめどなく押し寄せる。


 眼前で怯える汚職捜査官は、この後に及んでもなおベアトリクスの救援を期待しているようだ。


「お、お前らなんか……少佐に掛かれば一瞬だぞ! たかだか学生の身分で俺に銃口を向けるなど––––」


 唾を撒き散らしながらみっともなく喚く口を、右足への非殺傷弾の直撃で黙らせた。


「がっ!! ……あぁ!?」


「何か勘違いしているようだな捜査官さん、いいか?」


 コッキングし、装弾数をMAXにしながら俺は表情を変えず距離を詰めた。


「こっちをただの学生と侮って、傲慢な態度を取った時点でお前の負けは確定していた。そう––––生徒会室からアリサを連れ出した瞬間から」


「そ、そんな理不尽が……!」


「まだわからないか」


 今度は2発、非殺傷弾を左足へ撃ち込んだ。

 骨が完全に砕けたことで、もう逃げられなくなっただろう。


「ヒギィ……!!」


「“傲慢は転落の直前に訪れる”。本当にその通りだ……この言葉を聞いて以降、俺は常に忘れないようにしている」


「く、来るな狂人……! 傲慢だと? 寝言は失神でもしながら言えよ! テメエなんか怖くねえ、おれの権利に掛かれば貴様なんてあっという間に終わりだ!」


「はぁっ、大人ならいい加減気付けよ……」


 今度は右手を撃ち抜く。

 四肢をゆっくりと使用不能にされていく恐怖が、徐々にクラークの顔へ満ちていった。


「お前らが国家や組織を使うから、テメェのバックより遥かに大きい味方をこっちもつけた。この状況––––もうどうやったってお前らの詰みだ」


「ッ!!」


「自分の弱さ……噛みしめろっ」


 逃げようと身をよじったクラークの背へ、弾を叩き込んで阻止。

 ついでに、残っていた左手も忘れずに撃ち砕いた。


「あぁっ、ああ…………べフッ!!」


 倒れ込んだクラークの顔を、感発入れずに思い切り蹴り上げる。

 転がった捜査官へ、俺は問う。


「怖いか? そうだろうな。お前がアリサにしたことはまさしく今お前がされていることだぞ」


 アリサから聞いた。

 無抵抗の状態の彼女を、この男は好き放題痛めつけたのだ。

 到底許される行為じゃない。


「同じ恐怖、味わってもらおうか」


 銃を縦にし、硬い木製ストックを倒れるクラークの顔面へ叩きつけた。


「ぐおあっ!?」


 鼻が砕けたのか、鼻血を大量に噴き出すクラーク。

 それでも俺はお構いなしで、何度も何度もストックを顔面へ振り落とした。


「ついでに聞くけど、お前––––今の地位へ就くまでにアリサみたいな濡れ衣の人間を……かなり犠牲にしただろ」


「ぶひゅっ、ゴフッ……」


 顔を紫色に腫れ上がらせたクラークは、もはや喋ることすら困難なようだった。


「お前のこれまでの汚職は全て暴かれた、今ごろ公安本部はテメェを血眼で探してるだろうさ」


「ッ!?」


「だから逃げられないよう、しっかりしっかり、徹底的に––––」


 俺は銃をクラークへ向けた。


「動けなくして、犠牲となった人間へ俺が代わって鎮魂の意を捧げさせてもらう」


 そこからはもう語るまでもない。

 必死で逃げようとするクラークを、弾が尽きるその瞬間まで何度も撃った。


 失神したなら電撃魔法で叩き起こし、またぶん殴る。

 全て、今までクラークが濡れ衣で捕まえた人間へ行った仕打ちの再現だ。


「助け……てっ!」


「聞こえない」


 ひたすらに死なないギリギリで撃ち続ける。

 まるで事務作業のようになった辺りで、俺は携行していた弾薬が残り1発になったことへ気づく。


 大量の蜂に刺されたがごとく腫れ上がった顔のクラークへ、俺は胸ぐらを掴み上げながら睨んだ。


「お前の罪を考えれば正直これでも足りないくらいだが、こっちもいい加減……」


 パッと離すと、尻もちをついたクラークが涙目で後ずさろうともがく。

 俺はゆっくりと片手で銃を持ち上げ、照準を定めた。


「や、めっ……! 俺が悪かった! もうこんなこと……ごめんなさッ」


「疲れた、もう二度と––––会わないことを願っているよ」


 ゴースト区画に、最後の銃声が轟然と響いた。

 せめてヤツに殺された多くの人間が、安らかに眠れますように……。


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[良い点] スッキリした! [一言] さすがに玉は潰さなかったかー
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