表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

156/497

第156話・人生全部を賭ける覚悟、あんの?

 

 俺とアリサは2人の敵を、それぞれ背中合わせに正対していた。

 彼女の正面には、キール政治将校ベアトリクス少佐。


 そして––––


「竜王級……! アルス・イージスフォードッ! さっきの魔力波はまさかっ」


「よぉ捜査官さん、王政府直々の命令をガン無視してるとは正直思わなかった。キャリアを求めてるくせに命令違反とは––––」


 俺がこの場に駆けつけることを、全く予期していなかったのだろう。

 怯え切った表情のクラークへ、俺は最高の笑顔を見せた。

 当然、過去最高の怒りも込めて……、


「組織人として頂けないなぁっ、そんでもってその拳銃で……」


 次の瞬間には、クラークの手からハンドガンが弾け飛んでいた。

 ヤツの手へ目掛けて、非殺傷弾を撃ち込んだのだ。

 非殺傷とは名ばかりに、死なないギリギリの威力なだけだが。


「グオッ……がぁ!!」


「なんにも悪くない少女を撃ったんだ、無実の子供を撃つということの意味と重みと責任––––テメェならわかってるよなぁ?」


 すぐさまコッキングし、俺は次弾を発射した。


「あぐぇっ!!?」


 非殺傷弾がみぞおちを直撃し、カエルのような声でひっくり返るクラーク。

 すかさず肉薄しようとした俺の真横へ、数瞬の間も無くベアトリクスが立っていた。


「貰ったッ!!」


 振り下ろされた拳を、銀色の風が防いだ。

 肩や腹、スカートまで血で赤く染めた少女が両手で受け止めていた。


「アリサ・イリインスキー……!!」


「お前の相手は……わたしだッ! もう倒れない! アルスくんと約束したんだ! 絶対絶対絶対––––」


 放出された魔力は、さらなる輝きを放ってベアトリクスを怯ませた。


「何があってもアルスくんのエンチャントには頼らない! わたしの壁は、わたしの力で超えるって!! 約束したんだ!」


 今の今まで劣勢だったであろうアリサが、ベアトリクスを気合いだけで弾き飛ばした。


 思わずニヤける。

 これほど嬉しい感情が湧いたのは、アルテマ・クエストにおけるミライや、ファンタジアにおけるユリア以来だ。


「そうだ、それでいいんだアリサ! 俺は自分を持つヤツにエンチャントは一切掛けない! この意味がわかるな?」


「うん! わかるよ……っ! ベアトリクスは任せて、アルスくんはそいつにキッツイお仕置き、頼んだよ」


「任されたっ」


「よっしゃっ!! いっくよぉ!!」


 覚醒したアリサは、なんと勢いの乗った蹴り一発でベアトリクスを吹っ飛ばした。

 崩れる家屋のさらに向こうへ追撃していくアリサ。


「べ、ベアトリクス政治少佐……」


「アイツはアリサがぶっ倒す、さぁて捜査官さん」


 コッキングで排莢した俺は、悪魔もかくやという顔で恐怖に震え続けるクラークを見下ろした。


「改めて言ってやる、少女の人生を台無しにしようとしたんだ––––テメェの人生全部を賭ける覚悟くらい、とっくにあるんだよなぁ?」


「ふざけんなっ!! 俺を殺すつもりか!? その銃で!」


「おや、公安なのにご存知ないんだな。これ非殺傷弾だから絶対死なないよ」


 俺は「いや……」と、すぐに訂正した。


「滅多なことじゃ”死ねない“の間違いか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ