第142話・突入、王都魔導士収容所!
アリサを地獄の底から連れ出すため、俺は単身で収容所へ突っ込んだ。
関係者以外立ち入り禁止、セキュリティロック付きのガラス扉をブチ破り侵入。
「なんだ貴様ッ!!」
突入した暗いエントランスで、俺目掛けて警備員が怒鳴った。
無理もない、向こうからすれば完全にこっちがテロリストだ。
しかしこちらも引くわけにはいかない、無罪の少女を見殺しにすることこそ倫理への冒涜だからだ。
俺はローブを翻し、暗記した見取り図を頼りに突っ走った。
「待て!! おい止まれッ!」
「こちらエントランスだ!! 非常警報発令!! 侵入者だ! 至急警備班を寄越せ!!」
職員が一斉に戦闘態勢へ入る。
なんとも早いことで、狭い通路にもう常駐の警備員が立ち塞がった。
ホルスターから、躊躇なく9ミリ拳銃が抜かれるのが見える。
だが問題ない––––
「ぐおぁッ!?」
「いってぇッ!!」
壁のように進路を塞ぐ警備員を、俺は手に持っていたショットガンで撃ち倒した。
もちろん殺すなど論外なので、これは普通の弾じゃない。
当たれば痛いは痛いが、撃ったのは低致死性の非殺傷弾だ。
一般人はともかく体格のゴツい彼らなら、数分動けないくらいのダメージで済むだろう。
《侵入者の魔力等級を測定、計測結果––––りゅうお……》
天井の監視カメラが余計なことを言う前に、破壊して黙らせる。
すかさずコッキング。
俺はそのまま地下へ繋がる鉄扉を見つけた。
「『身体能力強化』!」
金色の魔力を纏った俺の蹴りは、指向性爆発すら耐える設計の扉を一発で蹴り破った。
すかさず真後ろへ向き、装填済みのショットガンを発射した。
「クソッ! こちら警備2班! 敵人数は……1だと!? ふざけんな! とんでもない強さだぞ!!」
「CQB(近接戦闘)訓練を受けている動きだ! 軍人か!? 釘付けにされてる!!」
「班長より許可が出た!! 即刻射殺だ! 撃ち殺せ!!」
「それができたら苦労しないッ!!!」
屋内放送で非常事態を告げる放送と、けたたましい銃声が折り重なる。
向こうもまさか、王立魔法学園の生徒会長が攻めてきたとは思わないだろう。
「よっ!」
地下へ伸びる階段を全速で下っていく。
上から手すり越しに発砲された銃弾が、周囲に着弾した。
やっぱ容赦ないが––––
「ぐおあっ!?」
追撃してきた警備員を踊り場で射撃。
こっちは大英雄や、精鋭軍人の元勇者と訓練をしているのだ。
彼らの弾に当たる気など毛頭ない。
ハッキリ言って練度が違う。
「地下収容所へ向かってるぞ!! 特殊対処班!! 跡形もなく吹っ飛ばしてやれ!!」
通信で叫ぶ警備員。
いよいよ地下の収容室が左右に並ぶ廊下へ出ると、1人の男が立っていた。
通路を塞がんばかりの巨体と、顔にはガスマスク。
何より手に持っている武器がヤバかった。
「これはまた、凄まじいものを出してきたな」
長く放熱性の高いハンドガードに覆われたその銃は、名を『MG42』。
アルテマ・クエストでも使った、7.92ミリの軍用マシンガンだ。
おそらく、脱走した魔導士を確実に殺すために配備されているのだろう。
「ヒャアアアァァァァッハアアアアアア––––––––––––––––っッ!!!!!」
無茶苦茶な連続射撃が来るッ。
発砲炎が見える直前、俺は紅い魔力を纏いながら左手を振った。
毎分1200発という超高速連射の銃弾へ、六角形に連なった焔が壁となる。
「『イグニール・ヘックスグリッド』!」
以前カレンに教えてもらったこの技は、現状どんな攻撃も防いでいる最強の防御魔法。
いくらMG42といえど、例外ではなかった。
「無駄だとわかんねぇかあ魔導士!! このままこの通路を通さなきゃ、後ろからの挟み撃ちで俺らの勝ちだ! 大人しく死ねぇッ!!!」
ガスマスクの横扉から、さらに同様の装備をした男たちが出てきた。
こちらはMG34、発射速度こそ控えめだが同口径の強力なマシンガン。
もれなく、75連ドラムマガジンを装備していた。
「弾幕こそ至高!! 弾幕こそ正義!! 火力こそ全てを解決するのだぁッ!!!」
横殴りの弾雨が俺を襲う。後ろから追っ手も来ていた。
まったく……火力至上主義という考えは俺も賛成したい、がっ!
砕かんばかりに足を踏み込み、魔法の出力をグンと底上げした。
「歩兵用マシンガンで竜王は殺せないよ」
壁から天井まで広がった焔を、俺は思い切り前方へ押し込んだ。
「なっ!?」
銃弾をものともせず撃ち出された焔の壁が、ガスマスク連中へ直撃して奥まで吹っ飛ばした。
俺は硝煙も構わず全力で息を吸い込み、本気で叫んだ。
「アリサああぁァアアッ!!! どこだぁッ!!!!」




