表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/497

第135話・生徒会の足元

 

 アリサの濡れ衣を晴らすためには、まず公安の汚職––––正確にはクラーク捜査官を調べねばならない。

 彼に誠実な捜査官としての態度は、欠片も見当たらなかった。


 プロにあるまじき言動行動……調べる価値は十分あった。

 そのために超短期間で“ある魔法”を習得する。


 だがその前に––––


「ねぇアルス……、ホントにここにあんの?」


 生徒会室の扉を開けた俺へ、疑問符を浮かべたミライが訪ねてくる。

 ユリアも来て欲しかったが、あのメンタル状況ではなかなか難しいと判断。


 寮に待機をしてもらっている。

 近いうちに出向く予定だ。


「アリサが北の隣国キールに脅されてるのは、十中八九間違いないからな。アイツの送ったシグナルには全部意味がある」


「だからって、なんで生徒会室に来る必要があるのよ? 


 他にもっとやるべきことがある、そう言いたげな彼女へ俺は書類の詰まったファイルを渡した。

 非常に分厚いそれを、彼女はワタワタと慌てて受け取る。


「それ、読んでみ」


「えぇ? なになに〜? 工事の全工程表? 意味わかんない」


「職員室にあったのを借りてきた、まぁ読んでみろよ」


 しぶしぶ目を通すミライ。

 内容は単純だ––––俺の学園入学から少し経った時期。

 つまり、この生徒会室を誰も使えない期間の間で工事に入った業者がいる。


「壁と床の補修、空調魔法の点検、その他保守整備……これがどうしたのよ。専門用語多すぎて意味わかんないのが多いけど、アリサちゃんに関係ないってだけは明らかだわ」


「普通そうだな、正面から見たら直接は関係ないだろう。でも世の中ってのは色々繋がってるもんなんだぜ……表紙見てみ?」


「表紙〜表紙〜、えっと……『ピョートル・ヴェリキー株式会社』? 名前の雰囲気が……あっ!」


 ファイルを再び、バッと開くミライ。


「キール共和国の企業……!? なんで!」


「他にも数社関連している会社はあるが……生徒会室を担当したのはその会社だ。全く恐れ入るよなぁ」


 持ってきた”物“を床に置き、部屋を見渡す。


「安いからってだけで迂闊に仕事をさせたら、大体ロクなことにならん。ギルドも会社も––––全く変わらない」


 細い金属製グリップを掴み、皿のように平べったい先端を床へ近づけた。


「なんか実感こもってるわね……」


「ブラック時代……安いギルドに仕事を代行させたら、筆舌に尽くしがたい事態になってな。それ以来額面の安さで判断するのはやめてるんだ」


 特別な道具のスイッチを入れた瞬間、けたたましい警報音が響き渡った。

 ビクッと驚いたミライが、後ずさりながら声を出す。


「アルス……これって」


「あぁ……、思った通り」


 なるほどな……こんなのが足元にあったんじゃ、アリサがなにもできないわけだ。

 俺は思わず頬を吊り上げた。


「大当たりだ。バカな共和国企業の杜撰さが表に出たな」


「ど、どうするのこれ……? その––––『金属探知機』だっけ? めっちゃ音鳴ってるけど」


「慌てんな……多分まだなんも起きねーよ。既にマスターとカレンには動いてもらっている、今は存在が確認できただけで十分だ」


「でもっ、早くこの生徒会室の下をなんとかしないと––––」


「これは後で良い、まずは魔法の特訓から始めるぞ」


 スイッチを切り、俺は時計を見上げた。


「忘れんな、俺たちが夏休み終了までにアリサの濡れ衣を晴らせなきゃ––––アイツは退学。そのままスパイとして処理される……もう二度と会えないぞ」


「ッ……!!」


 足元の物は、俺たちが下手に触るべきものじゃない。

 “専門のプロ”に任せるのが一番だ、そのために夕方あの場所へ赴く。


 タブレットを取り出し、地図上の赤い点を見つめた。


「絶対助け出すからな、どんなことされても耐えるんだぞ……! アリサ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ