表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/497

第114話・元パーティー魔導士 ミリア

 

「ミリア……!! 貴方がなぜッ!」


 歯噛みしながら前に出たユリアは、敵意に満ちた目でビルを見上げた。

 普段こそ人間味に溢れた瞳は、憎悪に染まっている。


「なぜも何も、用があるから来たのよユリア。相変わらず強さしか興味ない感じ? まぁ私は今さらあなたに興味もないけど」


「勘当された身の上で……よくおめおめと師匠の前、そして会長の前に姿を出せましたね」


「––––いまさら家族ごっこの思い出なんて、掘り出されてもこっちが恥ずかしいわ。あなたも生意気なのは変わらないのね……」


「フン、無神経さを競うコンテストがあれば、今すぐ貴女に優勝を差し上げたい気持ちですよ」


 軽蔑の眼差しを向けるユリア。

 そんな彼女を無視し、ミリアは俺たちと同じ屋根へ降りてくる。


 魔導士ミリア––––彼女は俺の元パーティーメンバーだ。

魔法能力強化(ペルセウス)』で強化されて魔人級を名乗っていたが、今は最底辺のヒューマン級に成り下がったはず。


「フッフ、豪胆と言って欲しいわねぇ」


 ずいぶんと余裕そうだ、ラントと同じく魔人級の力を手に入れていると見ていいだろう。

 俺はうんざりしながら質問した。


「ラントのヤツは変なスーツを着てたが、さて……お前の能力はなんだ?」


「あら、再会の挨拶もなし? 王立魔法学園の生徒会長とやらはずいぶん礼儀知らずなのねぇ」


「お前が他人の力でイキリ倒すガキなのは、もう知ってるからな。親しくない仲に礼儀なんざ求めてどうする」


「じゃあ親しい仲なら礼儀もあるのね」


 ミリアの背中から姿を現したのは、灰髪の少女。

 俺の妹を自称し、今日1日ずっと共に街を巡った人間だった。


「レイちゃん……!?」


「ッ……」


 動揺し、駆け寄ろうとしたミライを俺はその場に引き留める。


 ニコニコと不気味に微笑むレイ。

 あぁそうかよ……そっちが黙りこくるなら、こちらからバラすまでだ。


「––––鉄柱、当たらなくて残念だったな。俺の妹ならもうちょい計画とやらに力を入れて欲しかったところだが」


「フーン……やっぱお兄ちゃん、気づいてたんだ」


「旅行先でいきなり実の妹が、あれだけの人混みの中から俺をピンポイントで見つけるとか……普通ないだろ。考えがありきたり過ぎるんだよ」


「あ〜やっぱりかぁ、そこのユリアさんにも指摘されたのよねぇ〜……わたしのシナリオ、そんなに使い古されてたかぁ」


 わざとらしく、心底どうでもよさそうにため息をつくレイ。

 目尻に涙を浮かべたミライが、手へめいっぱいの力を込めた。


「ホントなの? ……レイちゃん」


「あー……うん、ホントだよ。あっ! もしかしてバカ正直に騙されちゃってた? きゃっはっはっは!! だったらわたしのシナリオも捨てたもんじゃないわねぇ」


「シナリオ……? 今日ずっと一緒に遊んだのも、わたしたちを殺すためのシナリオだったっていうの?」


「そうだよぉ、全部貴方たちを殺すために立てたものよぉ」


 ミライの身体から、雷属性のスパークが走った。


「ッ!! ふざけんな……ッ」


 周囲に激しく電気が駆け回る。


「ふざけんな! ふざけんなッ!! あの鉄柱や狙撃が全部計画だったとして、間違ってもわたしの前で人殺しの算段を“シナリオ”だなんて呼ぶなァッ!!!」


「アッハッハッハ! 創作家とやらは面倒くさいわねぇ! レイ様の前でよくそんな戯言吐けること」


 ブチ切れるミライを嘲笑いながら、ミリアは両手を広げ恍惚な笑みを浮かべた。


「今から……そんなの気にもならなくなるくらい、人が死ぬのに」


 刹那––––突き上げるような揺れと同時、空に幾何学な紋様が浮かんだ。

 尋常じゃなく巨大なそれは、祭りで盛り上がる街いっぱいに広がっていった。


「まさか……! おぬしらッ!!!」


 血の気の引いた顔をしたフォルティシアが、金色の碧眼を空へ向けた。


「『神結いの儀式』を……ファンタジアごと贄にして行うつもりか!」


「えぇそうよ……だとしても、魔力切れの竜王級と大賢者じゃ、阻止なんてできないでしょうね」


 やっぱりか、こいつら俺とフォルティシアさんが戦って双方魔力切れになるのを待ってやがったのか。

 枯渇した魔力は、通常回復に2〜3日掛かる––––銃は弾もないし、ここで今連中をぶっ倒すのは相当骨が折れる。


 だが、俺の記憶が確かなら––––


「フォルティシアさん、あなたが作ってる途中だった“魔力回復ポーション”。すぐ取りに行っても?」


 俺たちがファンタジア巡りをしている中、この人はポーション作っていた。

 本人も思い出したのか、(きびす)を返す。


「わかった! 互いに魔力もないゆえ、走るぞッ!!」


『ぶっ飛び君1号』も壊されたし、致し方ない……!

 俺は背を向けると同時、3人の生徒会役員へ告げた。


「わりい……っほんの少しだけ、ここは頼んだぞッ」


 ユリアが、


「お任せください」


 アリサが、


「待つまでもなくぶっ倒してやるっ」


 ミライが、


「30分以内に戻らないと、アンタのユグドラシルの検索履歴、全部バラすから」


 それぞれの頼もしい?言葉を受け取り、俺は屋根から飛び降りた。

 目指すはフォルティシア邸の、魔力回復ポーションだ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ