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第110話・ユリアVSレイ・イージスフォード

 

 ––––ギィンッ––––!!!


 路地に響く爆発のような金属音。

 不意の一撃をナイフで防いだユリアは、大きく後方へ飛び退いた。


 想定していた通り、攻撃の重さはカレンに匹敵している。

 とてもじゃないが––––


「安物のナイフじゃ……まぁまぁキツいですね、わかっていましたけど」


 ユリアの武器は、お昼にストーキングしながら駅前で買った100均の家庭用ナイフ。

 とてもじゃないが、レイの武器スペックには全く敵わない。


「アッハハハハ!! よぉく防いだわねぇ〜チビくせに。勘? それとも戦闘経験かしら」


「両方ですよ。わたし、こう見えて天才ですので」


 笑いながら突っ込んでくるレイ。


 だが100均ナイフでもやりようはある。

 すぐさま魔力でコーティングを行い、ユリアは強度とリーチをアップさせた。


 誰からも見えない路地裏で、激しい剣撃の打ち合いが発生する。


「ッ……! ふざけてるの? そんな小さいナイフでわたしに勝てるなんて本気で思ってないよね?」


「ある物は全部使えるし全部有効だ、ゆえに使用を誤らねば役に立つ。会長の言葉です」


「フッフ、お兄ちゃんらしい言葉だわぁっ、大陸トップの天才でも貧乏性に感化されたりするんだ」


 レイがさらに勢いづく。


 だがユリアの立ち回りは斬新だった。

 パワーと武器スペックで勝る相手に対し、ユラユラと不規則な動きで対応したのだ。


 時に早く、時に遅く……緩急ある動きであらゆる攻撃をスラスラといなす。


「そうですね。まぁわたしを好きに言うのは結構ですよ、しかし––––」


 振り下ろされた大剣の一撃を、真横から弾くことでかわす。

 砕かれる地面、舞い上がった瓦礫に紛れてユリアは肉薄した。


「会長の悪口だけはいただけませんね」


「ッ……!!!」


 超至近距離で爆裂魔法を放つ。

 一点集中、前方指向型のそれはレイの腹部だけを狙って局所的にダメージを与えた。


 黒煙を引きずりながら、レイは吹っ飛んだ体をなんとか地面に着地させる。


「がっ……! くはっ!!」


 口から吐き出した血が、荒れた石畳にビチャリと飛び散る。

 乱暴に口元を拭いながら、レイは大剣をヨロヨロと構え直した。


「はぁっ、はぁッ……なにが宝具のない今こそ狙いどきよ……! 全然強いじゃないのっ!」


「わたしはこう見えて生徒会副会長、いくら宝具なしとはいえ––––アッサリ負けたとあっては選んでくれた会長に申し訳がない。簡単には倒れませんよ」


 繰り返すが、ユリアは全てにおいて常人を大きく上回る天才である。

 その彼女が唯一敗北を喫した相手こそが現生徒会長アルスであり、彼1人だけが本気になったユリアを倒せている。


「お兄ちゃんへの果てなき想い……、それが強さの秘密とでも?」


「そうかもしれませんね。口で言うと恥ずかしい限りですが」


 天才である彼女が本気で挑み、敗れ、そして認めた相手だからこそ……ユリアはアルス以外に負けることなど絶対にできないのだ。


「超ムカつく……っ、ぽっと出のアンタが知った風な口聞いて……ッ!! お前がお兄ちゃんを語るなァッ!!」


 レイは大剣のない左手を、ユリアへ向けた。

 闇を上塗りするような黒い魔法陣が、道いっぱいに広がる。

 未知の上級魔法だ。


「もう路地ごと吹っ飛んじゃえ……っ。そしたらこんな未完成の身体でも関係ないッ! お前なんかにお兄ちゃんは渡さない!!」


 不気味な光が瞬いた瞬間、ユリアは笑みを浮かべた。


「あっ、ちなみにわたし1人じゃないので」


 魔法陣が崩壊した。

 発射寸前だった技もひび割れ、周囲に粒子となって四散する。


 レイは、この路地裏を覆った空間の正体に思わず歯軋りした。


「ッ!!『マジックブレイカー』か……ッ!!」


「ピンポーン。だいせいかーい」


 屋根から降りたアリサは、髪も瞳も淡い紫色だった。

 自己のスキルをフルに使っている状態だ。


「チェックメイトです……レイさん。今の貴女ではもうどうしようもないですよ」


 困惑から抜け出せていないレイへ、ユリアは容赦なくわき腹に重い蹴りを叩き込んだ。


「がっは……!?」


 今さら慈悲を掛けるつもりもない。

 膝をつく彼女の首元へ、ナイフの先端が突き刺さろうとした……その刹那だった。


「転移させろッ!! ドクトリオンッ!!!」


 レイが張り裂けんばかりに叫んだ。

 直後、ユリアのナイフは大きく空振りをつかまされる。

 眼前にあったはずの目標が、跡形もなく消え去ったのだ。


 なぜ『マジックブレイカー』を無視して……。

 まさかと思い振り返ると––––


「ご、ごめんユリ……! 驚いて一瞬だけスキル解除しちゃった……」


 涙目になったアリサが、髪と瞳を元に戻しながら狼狽えていた。

 半袖から出た腕には、ハチに刺されたらしい跡がクッキリ残っている。


 ––––レイさんに都合のいい偶然……じゃなさそうですね。


「大丈夫ですよ、取り逃したのは惜しいですが。それより貴女……今までハチに刺されたことは?」


「は、初めて……これ死んだりしないよね!?」


「なら毒を抜いて薬塗れば大丈夫です、とりあえずここを離れましょう……あんまり長居すると、わたしまで“ヤツ”に刺されそうですし」


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