表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/497

第101話・洗いっこがマナーなら、貴女も洗って差し上げましょう

 

 ファンタジア・ツリーの入浴施設だけあって、そこはかなりのスペースと多彩なお風呂で満ち溢れていた。


「さぁアリサちゃん! 早速お風呂のマナーを教えてあげるわ!!」


 シャワーエリアの前に来たミライは、嬉々とした笑顔で振り返った。

 いつもはポニーテールにまとめている彼女も、当然だが髪を下ろしている。


 スラッとした身体には、タオルが巻かれていた。


「お、お願いしますっ!」


 律儀にお辞儀するアリサへ、よからぬ笑みを浮かべながらミライは近づく。


「まずお湯へ入る前には、必ずシャワーで身体を洗うの。自分以外の人も入るからね」


「なっ、なるほど……! 他の人が気持ちよく使うためのマナーなんだね!」


「そう! で……ここからが重要。初めての人は誰でもいいから他人に身体を洗ってもらうの」


「洗いっこするの!? システムが斬新過ぎない!?」


「驚くのも無理ないわ……でも大丈夫、アリサちゃんの白くて艶やかで華奢な身体は、このわたしが隅から隅まで––––プヒャぁ!?」


 そこまで言いかけたミライの顔を、シャワーが直撃した。


 既に頭を洗っていたユリアによる犯行だ。

 シャンプーハットをかぶりながら、金髪を泡まみれにしてジトーっと見つめている。


「よく回る舌ですねブラッドフォード書記、今日はエイプリルフールじゃありませんよ?」


 ギクっと固まるミライ。


「わ、わたしは親切心でマナーを教えてあげてるだけ……よ? エーベルハルトさん誤解してるんじゃない……?」


「へぇ〜、じゃあこうしないとわたしもマナー違反ですねぇ」


「ひゃうっ!?」


 バッとミライは腕を引っ掴まれる。

 元の能力値からそもそもかなわないので、なすがままに後頭部をユリアの膝の上へ置かされた。


 妖艶な笑みが上に来る。


「まずはこの綺麗な茶髪から洗ってあげましょう、優しくシャンプーしなきゃですね」


「やっ、ちょ……!!」


「トリートメントもしてあげますよ、初めての浴場では洗いっこがマナーなのでしょう? 心配せずとも耳にお湯が入らないよう気をつけ––––」


「ごめんごめんごめん!! 嘘つきました! デタラメなマナーしゃべってました! 赤ちゃんみたいな扱いはやめてぇッ!」


 ユリアの拘束から解放されたミライは、顔を真っ赤にしながら猫のように遠ざかる。


「あら、結構可愛かったのに……残念ですね」


「やっぱアンタ、油断なんないわ……!」


「それはお互い様ですよ、っというわけで副会長として命じます––––普通に教えてあげてください」


「ッ……は、はい」


 改めてちゃんとしたマナーをアリサに教えて、3人はシャワーで汗を洗い落としていく。


「ミライさん、さっきユリに膝枕されてた時の照れ顔––––マジ萌えだったよ♪」


「アリサちゃんあんたまでぇ……、マジ死にたい」


「フフッ、いいじゃないですか……とても旅行っぽくて。他にお客もいませんし、多少の騒ぎじゃ迷惑になりません」


 シャワーが終わって、三人は温泉の前に別のお湯へ入ってみた。

 カラフルな着色がされている、俗に言う炭酸風呂というヤツだ。


 初めて入るお風呂に興奮し、アリサはずっと感嘆しているようだった。


「アルスは今頃、温泉まっしぐらかなぁ」


 縁にもたれるミライへ、ユリアがタオルを頭へ乗せながら反応する。


「会長、温泉好きなんですか?」


「うん、多分アイツ……めっちゃ楽しみにしてたんじゃないかな。普通わたしらの裸を覗き見するのがマンガじゃ王道展開なのに」


「よく見るやつですよね、実際のところ……ああいうのってあるんでしょうか」


「フィクションフィクションw、リアルでそんなんやったらもう事件でしょ。普通ないって」


「そうですよね……、会長レベルでモラルを持っている方なら尚ありえませんし」


 いよいよ今度は温泉へ行ってみる。

 外に繋がる仕切りのガラス戸を開けると、思わず3人は声を上げた。


「ちょっ、景色すごッ……!!」


 外一面に、ファンタジアの壮大過ぎる夜景が広がっていたのだ。

 色とりどり、銀河のように輝く街を見下ろす。


「ここの魅力は、この夜景を見ながらの温泉ってわけかぁ〜! わざわざこんな高層まで温泉を引っ張ってくるなんてだいぶ凝ってるよ」


 またも目を輝かせるアリサに続いて、2人も温泉に入る。


「あっ……ヤバいこれ」


 まさに極楽の一言……。

 至高とも言える景色を見つつ、3人は文字通り溶けていた。

 来てよかった、そんなことを言おうとした矢先だった––––


「ッ……」


 ユリアの目つきがスッと変わる。


「どうしたのユリ?」


 アリサの問いにも答えず、ユリアは高速で近くにあった桶を壁へぶん投げた。


「ふぎゃあッ!!?」


 何もない空間で桶は弾かれ、マヌケな声だけが響く。

 タオルを巻いて立ち上がったユリアは、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。


「姿は消せても、優越感にまみれた気配がダダ漏れでしたよ––––自称弓ガチ勢の“レナ”さん」


 尻もちをついた状態で透明化を解除したのは、昼のコロシアムでアルスに完敗した弓使い––––レナだった。


【大事なお願い】

ブクマなどしていただけると凄く励みになります!

ほんの少しでも面白い、続きが気になるという方は広告↓にある【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】→【★★★★★】へしてくださると超喜びます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ