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第27話 新たな決意

ついにバルナ王国編、最終回です。

ルミナとルキの新たな決意。

どうぞ最後まで見守っていただければと思います。


 静かな部屋に、すすり泣く声だけが響いていた。


 ベッドの上でルミナがルキを抱きしめている。肩を震わせながら、ルキはルミナの背に腕を回し、ただ黙って涙を流していた。姉を失った痛み。仲間を守れなかった無力感。そして——生きていてくれたことへの安堵。


 やがて、涙が少しずつ落ち着いてきた頃、静かに扉が開く。


 「……落ち着いたか?」


 優しく声をかけたのは、アバンだった。陽の光を背負いながら部屋に入ってくる彼の顔には、気遣いとわずかな疲労の色があった。


 ルミナは慌ててルキから離れ、目元を袖でぬぐいながら立ち上がった。


 「……ごめんなさい、アバン。あたし、取り乱して……」


 しかしアバンは、微笑を浮かべて首を横に振る。


 「気にするな。……誰にでもあることだ。それより、話しておかないといけないことがある」


 ルミナとルキが真剣な面持ちでうなずくと、アバンは静かに話を続けた。


 「援軍が遅れた理由だが……帝国軍は、バルナとの国境線に、予想以上の数の妖魔を配置していた。無理に突破しても、多くの犠牲が出ると判断して、迂回路の確保に時間がかかった……すまない」


 ルキの顔が悔しそうに曇る。ルミナは拳を握りしめて下を向いた。


 「……結果として、バルナ王国は陥落した。だが完全に無意味だったわけではない。避難命令が早かったおかげで、バルナ国民の多くは無事だったらしい」


 ルキが小さく息を吐き、ルミナも少しだけ目を潤ませながら微笑む。


 「……よかった……少しでも、守れた人がいて」


 「それから……」


 アバンの表情が僅かに固くなる。


 「……マルクは、帝国軍に捕らえられた。偵察隊の報告で確認されている。現在、帝都へ護送された可能性が高い」


 ルミナの心臓が強く跳ねる。


 捕らえられた。


 その言葉が、胸の奥で何度も反響した。


 「……マルクは……生きてるんだね……?」


 「ああ、間違いなく。まだ生きている」


 その言葉に、ルミナはぎゅっと胸を押さえた。


 「それと……マールも一命を取り留めた。重症だが、こちらの医療施設で手厚く看護されている。今は昏睡状態だが……生きてるだけ、奇跡だ」


 「マールさん……!」


 ルキが顔を上げる。ルミナの瞳にも再び光が戻る。


 「……よかった……本当に……」


 アバンは、二人の様子を見て静かに口を開く。


 「……お前たちさえ良ければだが、しばらくギルバディアに滞在していかないか?」


 不意の申し出に、ルキはぱっと顔を上げた。


「この国には、大陸一の兵を養うだけの設備もある。そして……願わくば、俺たちと共に戦ってほしい」


 「いいのか!? もちろん行く! 俺、もっと強くなりたいんだ!」


 即答するルキの姿に、アバンは口元を緩めて頷いた。


 「そうか。……ルミナは?」


 その言葉を聞いたルキは、すぐに隣に立つルミナの方を向く。


 「ルミナも……残るよな?」


 ルミナは、しばらく黙ったまま視線を落とし、拳を軽く握りしめた。


 ギルバディアに留まるということは、マルクが捕らわれている間、すぐに助けに向かうことはできない。けれど——


 (私が、今なにをすべきか……)


 胸の奥で響くマルクの声。生きて、アリヴェルを取り戻すという意志。その願いを、誰かが繋がなければ。


 「……うん。私も、ギルバディアに残る」


 顔を上げ、しっかりとした声音で言ったルミナに、ルキは嬉しそうに微笑み、アバンもまた深く頷いた。


 「ありがとう、アバン。……これからは、よろしくね」


「俺だって、マルクよりも、アバンよりも、マールさんよりも強くなるぜ!……そんで、帝国のやつらは全員ぶっ倒す!」


アバンは微笑み、温かい言葉を繋ぐ。


「その意気だ。……我らギルバディアの民は、お前たちを歓迎するぞ」


アバンの言葉に、ヨヨも続けた。

「これからは、この国を故郷だと思っていいからねえ」


その言葉に、深々と頭を下げるルミナ。


「ヨヨ婆様……本当にありがとう」


アリステラから引き継ぐ女神の力。

二代にわたる“女神の系譜”を見守るヨヨには、感謝の言葉しかなかった。

その系譜を絶やす事なく、この地の人々に平和をもたらす為にルミナは、ついに立ち上がる事を決意した。


——元アリヴェル王国の姫……

……“アリシア”として。


 それは、新たな決意だった。

かつてマルクが言っていた“辛い戦い”の本当の意味はまだまだこれから知る事になるかもしれない。

 ルミナが経験してしまった、大切な人との別れなど、まだまだその入り口なのかもしれない。

 ——やっと踏み出せたこの一歩は、ルミナがこれから掴む希望につながる大きな一歩である事は、間違いなかった。



——一方、帝都では。


 鉄の重たい音が、ひとつ。


 暗く冷たい床に横たわるマルクが、ようやく目を覚ました。視界はぼやけ、肩が鈍く痛む。手足を動かそうとした瞬間、がしゃりと硬質な音が鳴り、鋼の鎖が彼を拘束していることを知らせた。


 ここは、牢か——いや、ただの牢ではない。天井は高く、壁には荘厳な装飾が施され、まるで儀式の間のような空間。灯る光は少なく、重苦しい静けさが支配していた。


  そして、不意にかけられた声に、マルクの肩がぴくりと反応した。


 ゆっくりと顔を上げる。その先に立っていたのは、禍々しい威圧感を放つ一人の男。白銀の髪を後ろに流し、黒装束を纏ったその男は、鋭い眼光でマルクを見下ろしていた。


 ——パルメシア帝国皇帝。


 マルクが視線を向けただけで、体が戦慄する。殺気ではない。まるで底の見えない深淵に、魂ごと呑まれていくような異質な存在感だった。


 「……僕を殺さなかったのか」


 かすれた声で問うマルクに、皇帝は笑みすら浮かべて応じた。


 「殺す? いや、殺しはせん。お前にはまだ価値がある。実に“興味深い存在”だよ、アリヴェル最後の騎士——否、あの女王の忠犬よ」


 「……何が目的だ」


 低く絞り出すように問うマルクに、皇帝は笑みを浮かべる。


 「お前にはまだ“役目”がある。……そう簡単には、死なせんよ」


 「……くだらない理由だ」


 「くだらないかどうかは、お前が決めることではない」


 皇帝は歩を進め、マルクの正面に立つ。暗がりの中、その眼差しは異様なまでに澄んでいた。


 「さて、話してもらおうか」


 マルクは顔を上げた。だがその瞳に宿るのは反抗の意志。皇帝はそれを面白そうに見下ろしながら、続けた。


 「——女神の血を継ぐ者、

        “アリシア”について」

第一章バルナ王国編ここに終了いたしました。

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

しばらく連載を空けますが、第二章からはギルバディア王国編に突入いたします。

ギルバディアでは主にルミナとルキが色々な仲間との出会いを通じて心身ともに成長していく物語です。

女神の系譜、いかがだったでしょうか?

また、どのようなコメントでもお待ちしておりますのでどうぞよろしくお願いします。


そして近日、女神の系譜の裏ストーリーの連載なども予定していますのでお楽しみに。

女神の系譜の世界に反った物語で本編と共に読むと二度面白いストーリー展開となっております。

こちらの方もぜひ読んでいただけたらと思います。

ではまた、お会いしましょう。

白銀鏡でしたm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
一瞬凄い盛り上がりを見た、んだけどやっぱり淡々とした流れになって、あれ?終わってしまった?これもしかして「俺たちの戦いはこれからだ!」になったのかな?という不完全燃焼な気持ちになりました。 第二部すご…
2025/09/10 20:31 退会済み
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