45話.第三回は省かれた
土曜日曜は嵐のように過ぎていった。
俺にとって輝いていた二日間だった。
今でも目を瞑ると浮かんでくる、二人の水着姿が……ってダメだろ、直視出来なくなるから早く忘れ、いや封印しなければ。
その夢を諦めないで……ってやかましいわ俺の幻聴。
案の定咲に色々と詰め寄られたが、無難に返しておいた。
まぁ言えない事なんて起こらなかったからね。
起こるわけないんだけど。
「えー、おにいのヘタレー」
何故俺は貶されてるの?
水着の二人相手に暴走しなかった俺を褒めてほしいくらいなのに。
まぁ錯乱して二人に襲い掛かったところで、一撃で沈められてしまうけどね、俺が。
そういう意味でも安全な男と認識されているのだろう。
むしろ異性と認識されていないまである。
やめよう、考えていたら悲しくなってくるから。
それから月曜日はいつも通りに過ぎて、第三回目となるクラス内順位争奪戦の日が来た。
三回目の今日は、実質的にメンバー選定の日でもある。
「あー。E組代表チームは、『榊チーム』とする。異論のある奴ぁいるか?」
「「「「「いませーん!」」」」」
「よし。つー事で、よろしくな榊、リーシャ、水無瀬、アイン。この時間は後は好きに使え、解散!」
えええええ。
藤堂先生の鶴の一声で、E組のクラス代表が戦う前に決まってしまった。
クラス全員反対意見も出なかった。
どうなってるのこれぇ。
「まぁ、当然と言えば当然の結果かしらね。ほら、先週は私達、結月先輩や本郷先輩達と模擬戦をよくやってたでしょう? あれ、いろんな人達に目撃されてたみたいよ」
「あ、僕も聞いたよ。なんか、あのクラスにどうやって勝つの? みたいに噂になってるみたい」
「あ、あ。俺も、聞いた」
なんという事でしょう。
まさか陽葵先輩はそこまで考えて……
イマジナリー陽葵「にしし! 当然っしょ!」
いや、ないな。
あの陽葵先輩がそこまで考えてるわけがない。
俺は思い浮かんだ考えをすぐに否定する。
イマジナリー陽葵「れおち―!?」
なんか頭の中の陽葵先輩がショックを受けてたけど、貴女は普段の行動を思い返してほしいと思う。
百歩譲って彰先輩なら、考えてたかもしれないと思うけれど。
「榊様、今日も宜しければお相手願えますか?」
「お嬢様、何かふしだらな気配が致しますね」
「勝負を申し込んでいるだけですわよ!?」
この二人の主従は相変わらずだな。
後ろの二人、ミリリアさんにアズールさんも苦笑してしまっているし、いつもこんななんだろう。
「うん、勿論。皆も大丈夫だよね?」
「ええ、聞くまでもないわ」
「うん!」
「あ、あ!」
うちのメンバーはいつだって万全だ。
「今日こそ、お二人を抜いてリーシャ様へ届かせてみせますわー!」
と意気込むロスファルトさんだったけど、
「「ばたんきゅう」」
主従揃って、アインと剛毅に倒されてしまいましたとさ。
陽葵先輩や千鶴先輩にこそ及ばないけれど、二人とも別格の実力してるんだよねぇ。
息もぴったりだし、正直俺の指揮なんて必要ないくらいなんだよね。
阿吽の呼吸とでも言うのだろうか。
後ろの二人も、リーシャさんの遠距離技で倒されてしまう。
リーシャさんが万能すぎてヤバい。
いや知ってたけど。
『エア・ブレイド』の汎用性の高さが凄い。
魔法よりも出が早く、大抵の魔法よりも威力が高く、中距離であれば届く。
ゲームではあまり意識しなかった点だけど、こうしてリアルで見ると反則技である。
それでいて攻撃の種類は物理である。
魔法職って、同じ魔法に対しては抵抗力が高く効きにくいんだけど、紙防御なのは共通だ。
そこに飛んでくる物理。
痛すぎである。
案の定というか、二人とも一瞬でリーシャさんにその場を動くことなく倒されてしまうんだよね。
「「ひーん、リーシャ様が鬼すぎるぅ!!」」
その言葉に頷かざるを得ない俺だった。
いやクラスメイト全員顔を上下してた。
「まぁ玲央君にバフ貰ってるから」
苦し紛れにそう言うリーシャさんだったけど、嘘は良くないですよ?
俺なんにもしてませんよ?
「「「「「流石は榊(君)……!」」」」」
やめて、何もしてないのに俺の評価が上がる現象はやめて!
いや、小指に身に着けてくれてる指輪をさすってこれのお陰感出してますけど、それ魔法にしか効果ないんですけど!
『エア・ブレイド』って物理技ですよね!?
風・物理表記だったはず。あれ、なら魔法も入ってるのか?
でも物理だったんだよなぁゲームのダメージ分類ではだけど。
そんな事を考えていると、
「次は俺達が挑んでも構わないかな?」
「流星君。うん、勿論だよ!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
こうしてまた、午前中は模擬戦をし続ける事になるのだった。
皆腕を上げているけれど、こちらもそれは同じなので結果は変わらずだったとだけ。
E組のクラス代表に決まったわけだし、皆にも学食で伝えようかな。
お読み頂きありがとうございます。
公募というわけではないのですが、Xでのラノベコンテスト、とみりん大賞の5作目にノミネートされました。
この場をお借りして、選んで頂けてありがとうございます!
また、ご紹介頂きありがとうございました!




