43話.海底神殿ダンジョン攻略①
「さぁ、海底ダンジョンに行きましょうか玲央君! 紅葉!」
「ええ、行きましょうリーシャ、玲央さん!」
おぉう、目覚めに二人の美女の水着姿って、眼福過ぎて俺死亡フラグ立ってないですかね?
「おはよう二人とも。その分ならよく眠れたみたいだね」
「ええ! 普段寝ているベッドとは段違いの性能のベッドだったもの。紅葉、アレ私も買うわ」
「毎度アリですリーシャ。値段増量でお届けしますね」
「なんでよ。そこは割安にすべきでしょ、友人なんだから」
「その言葉が胸に響きましたので、3割引きにしておきますね」
なんだこの尊い会話。
一生聞いていられる。
「……止めましょう紅葉、玲央君が普段よく見る緩みきった顔してる」
「あれはあれで味があって良いと思うのですが……」
「まぁ否定はしないけれど……」
どんな味のある顔になってるんです!?
というか俺はそんな顔に出るんですね、気を付けようにもどうしようもない気がしてるけど。
まだ普通に服を着ていた俺は、一旦着替えに戻ろうとして、
「玲央君はそのまま脱げば良くない?」
「そうですよ玲央さん。玲央さんは脱ぐだけじゃないですか」
とんでもない事をおっしゃりますね!?
推しの前、もっというなら女の子の前で公開生着替えをしろと!?
男だってパンツは履き替えるんですよ!
「あの、流石に海パンにここで着替えるのはちょっと……」
「大丈夫です。黒木」
「はっ! おいお前ら、榊様を囲って背を向けやがれ!」
「「「「「押忍!!」」」」」
「!?」
どこから出てきたのか、黒いスーツを着たマッスル達が、俺を囲う。
背を向けて手を後ろで繋いだ状態である。
「これで安心して着替えられますね玲央さん」
「ちょっと紅葉、これじゃ私達も見えないわよ」
「あっ」
あっじゃないんですけど紅葉さん。
「黒木、ほんの少し間を空けても構いませんよ……?」
「お嬢すんません、その命には従えません。オジキより榊の旦那を守るよう言われております故」
「くっ……御爺様……!」
一体なんの話をしているのだろう?
というか、俺はこの人達に囲まれながら着替えないといけないの?
「「「「「……」」」」」
これは覚悟を決めて着替えるしかなさそうだ。
『魔法のカバン』の中に入れていた海パンを取り出し、服を脱いで着替えていく。
「布の擦れる音がっ……これはこれで、想像力が掻き立てられるわね紅葉」
「大変よろしいです……!」
あの二人はちょっと今おかしくなってないかな?
それ、男側が女性の着替えに言う言葉ですよ……?
男の、それもモブの生着替えとか一体どこの誰に需要があるんだ……!
そんな事を考えながら、着替えを終える。
海パン一丁モブ野郎の出来上がりである。
「「「「「おおー!」」」」」
ぱちぱちぱちぱち……!
やめて! SPの皆さん、手を叩かないで!
めっちゃくちゃ恥ずかしいから!
なにこれ、公開処刑か何かですか!?
「相変わらず玲央君の体は引き締まってて、良い筋肉よね」
「はいリーシャ。盛り盛りというわけではなく、それでいてガリガリというわけでもなく。なんというのでしたか、黄金比でしょうか?」
「それだわ!」
それじゃないです。
人間が最も美しいと感じる比率なんて大それたものを、俺の肉体なんかで見出さないで欲しい。
筋肉質というわけでもなく、細いわけでもない。
ただそれだけの普通の体である。
「それじゃ、昨日と同じ場所に行こうリーシャさん、紅葉さん」
「ええ、そうね」
「はい。お前達はついて来なく良いですからね」
「分かりましたお嬢。お気をつけて」
「「「「「お気をつけて!」」」」」
「榊様、お嬢をお願い致します」
「黒木さん、でしたか? 俺が守るなんて気の利いた事は言えないですけど……俺が出来る精一杯で、頑張ります」
「榊様……! 名乗りもしていないこの俺の名前を憶えて頂けましたか……! 野郎ども! 今日は祝杯だっ!」
「「「「「オオオオオッ!!」」」」」
……あの、このSPさん達大丈夫なんだろうか?
そう思って紅葉さんの顔を見ると、視線を横にずらされた。
まぁ、俺がとやかく言える事ではないのでスルーしよう。
昨日と同じように船に乗る。
紅葉さんの運転で船は進み、再度海底神殿の入口の上付近についた。
「二人とも準備は良い?」
「ええ、大丈夫よ」
「はい、大丈夫です」
「よし。それじゃ飛び込むよ!」
二度目は最初よりも慣れたもので、すぐに昨日と同じ場所に辿り着いた。
違うのは、大きな神殿の存在は綺麗に無くなっていた事。
神社のような神殿へと足を踏み入れる。
多少の違和感はあれど、これこそがダンジョンに入ったという証拠だろう。
「結構暗いのね」
「慣れれば見えそうですが、視界が悪いですね」
「こんな事もあろうかと!」
一度言ってみたかったこのセリフ!
「『光の玉』ね」
「『光の玉』ですね。流石です玲央さん」
ちなみに、闇の衣をはぎ取るような効果は無く、ただの光る玉である。
しかし侮ることなかれ、使用者の近くを照らしてくれる便利アイテムなのだ。
少し遠いところまで光が届くので、奇襲を受けてもすぐに対処出来るだろう。
この時の俺は、水の中という事を楽観視していたと言わざるを得ない。
「はぁぁぁっ!」
「そこですっ!」
二人が動くたびに、その、揺れる。
全体を見なきゃいけないのに、雑念が支配してしまい、二人を直視出来ない。
「ふぅ、水の中での動きも慣れてきたわね」
「そうですね。服がないので動きやすいまであります。スカートを気にしなくて良いですし」
「分かるわ」
分からない。それよりも意識してほしい大きな存在について、二人は何も感じないのだろうか?
「まぁ、仮に脱げても紅葉と玲央君しかいないし」
「ですね。仮に脱げてもリーシャと玲央さんしか居ませんし」
あれ、俺異性として意識されてない?
もしかして女友達の、キャッキャウフフに入れられてる!?
「どうしたの玲央君?」
「玲央さん?」
そういう事ならば、俺もそうした態度を取るべきだろう!
二人に気を遣わせるなど、言語道断!
「よし、切り替えたよ。二人とも、先に進もう!」
「? ええ、了解よ」
「? はい、玲央さん」
水の中ならではのトラップを回避しつつ、魔物は二人が排除してくれて、道中すんなりと進む。
しかしここで、やはりというか……厄介なモンスターが現れ……いや、浮いていた。
「デカいわね……」
「大きいですね……」
ゲームでも確かに、物凄い大きさで表されていたけれど。
うん、リアルだとヤバいね。
でっっっかいクジラが、通路を埋めつくす勢いで浮かんでた。
お読み頂きありがとうございます。
ええ、また①です。すみません(脱兎)




