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追放系婚約破棄令嬢な私は追放系チート王子様と道連れに  作者: えとう蜜夏


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十四 旅路

「とてもお似合いですよ」


 と店員さんに勧められて旅の装いも一通り揃えてもらった。


 私には所持金はないのでレイノルド様が全てお支払いだ。


 どれくらいお借りしているのか分からない。


「後で必ずお返しします」


「いいって、俺のしたいようにしてるだけだから。気にしないで」


「き、気にします。冒険者になって働いてお返しします」


「冒険者ねぇ。じゃあ。君が冒険者登録できるまで、俺は商人のクラスも持っているから、そちらの職員として雇うというのはどうかな」


「え? よろしいのですか?」


 それなら少しはできるかもしれない。


「実際入国の際はそうしたし、仕入れとかの台帳の記入のお手伝いをしてくれると助かるよ。俺は細かいの苦手だから」


 ははと笑っているけれどそれは謙遜なのも分かっている。昔からそういう人だった。


 アゼリアの中の記憶を思い出して懐かしむように微笑んだ。


「じゃあ。仕事はアドニスから教えてもらうといい」


「分かりました。正直、これだけ助けていただいて申し訳ないのですが、お願いします」


「そんなことない。アドニスが君の料理や掃除を手伝ってくれて助かってると言っていたよ」


「たいしたことはしていません」


「いやいや、楽しみにしてるから」


 レイノルド様が微笑んでくれたので私も嬉しくなって微笑み返した。


「はい。頑張りますね」 


 気のせいか、レイノルド様の笑みが深くなった気がした。イケメンが微笑むと凄すぎて……。




 翌日、セルバン共和国の商業ギルドに立寄った。ギルドの職員がレイノルド様を見て、


「ああ、レイノルド様。いらっしゃいませ。丁度良かった。実はお願いしたいことがあって…」


「何でしょうか? とりあえず、いつもの薬品類の買い取りを頼みますね」


「あ、はい!」


 職員はレイノルド様が渡した薬草やら毒消し草の査定を始めた。


 私は物珍しそうにそのやり取りを眺めていた。


 薬草は体力回復するものだけど冒険者とか騎士でもなければあまり使うことはなかったから実物をこうして見るのは初めてだった。


 それにしても小さい。薬草の形をそのまま一口サイズにした感じだ。まあ、戦闘中に使う時もあるからコンパクトな方が良いのだろうけど。


 薬草一つが銅貨八枚でギルドで販売する値段は銅貨十枚だそうで、命に関わるのでギルドの利益は薄くなっているそうだ。


 レイノルド様はいろいろとそれなりの数を出したので結構なお値段になっていた。私も作れないだろうか。


「それで、頼み事とは? 急いでいるので、あまり時間は取れないよ?」


「ああ、それですが、薬草を追加でお願いしたいのです。実は先日、モンスターの襲来があって外壁が崩れ、怪我人も多く、薬草が足りなくなっています。在庫が足りなくなって、また大きな事故が起こったら対応できません」


「いくら必要ですか?」


「そうですね。おおよそ追加で百本くらいをお願いしたいのですが……」


 ギルド職員が恐る恐る応えるとレイノルド様はふむと考えられて、


「そうですねその倍の二百で明日にでも大丈夫です」


「本当ですか!?」


「俺が契約を破ったことがありましたか?」


 レイノルド様はギルド職員に微笑む。余裕の笑みだ。


 ちょっと、というかデキる男という感じでカッコいいとか思ってしまった。


 ギルド職員もレイノルド様の微笑みに見惚れていたようで、はっと我に返ると、


「いいえ! ありません。では早速、契約を、報酬としては急ぎなのでこれくらいで……」


 職員が羊皮紙にサラサラと書いてレイノルド様はサインしていた。


「それじゃあギルドが赤字だよ。いつもの買い取り金額でいいですよ」


 レイノルド様の言葉にギルド職員は目を潤ませた。


「レイノルド様、ありがとうございます」


「いいよ。ギルドにはお世話になっているからね」


 レイノルド様の言葉にギルド職員が頭を下げた。


 レイノルド様のお持ちの商業ギルドのランク付けは冒険者より簡単で陶器、銅、銀、金のランクがある。


 始めは陶器のプレートで取り引きや評判でランクが上がっていくシステム。それにしても最高ランクになるまで、どんなやり取りしたのだろう。

お読みいただきありがとうございました。

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