65話 救出へ
◇◇◇
ひとしきり酒を飲んだルカは、一度宴の席に顔を出すかと食堂に赴いていた。
かなり酔っ払ってゼンに絡むジグルド。鬱陶しがるゼンに、彼を守るクリスティア。メイド仲間や第二魔術師団の団員たちと酒と食事を楽しむシルビアに、端の席でしっとりと酒を嗜むバートン。
皆それぞれが宴を楽しんでいるようだったが、そこに主役の姿がないことを、ルカはすぐに気付いた。
「おい、リズリーはどうした」
「いてっ」
クリスティアにばかりジグルドとゼンの面倒を押し付けるのは申し訳ないと、ルカはジグルドの頭を小突きながらそう問いかけた。
ジグルドは痛みで頭を押さえ、クリスティアは「あれ?」と辺りを見渡している。一方でゼンは、「え?」と驚いた声を上げた。
「団長と一緒にいたんじゃないんですか?」
「確かにリズリーは俺の部屋に来ていたが、かれこれ一時間は前になる。……まさか、ここに戻ってきていないのか?」
「知る限りは……はい」
状況を把握したところで、ルカの眉間にしわが寄る。言い表せられない程の不安が、胸を蠢いた。
そんな中、緊迫した声を出したのはクリスティアだった。
「え……つまり、リズリーがいなくなったってこと!?」
「クリスティアちゃん、落ち着けって。そうと決まったわけじゃない。ルカ、一旦屋敷内を探そうぜ。案外、どこかで迷ってたりしてな」
「……ああ」
酔っ払っていると思いきや、こういう時に意外と冷静なのがジグルドの強みだ。
ルカも一度深呼吸することで自分を落ち着かせると、食堂にいる者たちに宴を一時中断することを告げ、リズリーを探すよう命じた。
(リズリー……)
皆が屋敷内を捜索する中、ルカもまたリズリーを探していたが、なかなか見つからないことに焦っていた。
(どこにいるんだ、リズリー……!)
リズリーの部屋、研究室、中庭……。大勢で屋敷内をくまなく探したが、一向にリズリーを見つけたという報告は上がってこない。
(まさか、屋敷の外に出たのか……!?)
しかし、呪われているリズリーが自らの意思で屋敷に張られた結界の外に出るとは思えない。もしもやむを得ない事情があったとても、彼女なら誰かに言伝くらいはするだろう。
……と、考えると、残る可能性は一つしかなかった。
「まさか──」
「ルカ!」
最悪に可能性を口にしようとした瞬間、前から走ってきたジグルドに名前を呼ばれた。
「皆必死に探してっけど、リズリーちゃんどこにも見当たらねぇ……! お前の方はどうだった!?」
「俺の方もだめだ。……これだけ探してもいないとなると、この屋敷にはいないだろうな」
「は!? ……って、まさ、か……」
ルカは拳を力強く握り締める。
「リズリーは、ユラン・フロイデンタールに連れ去られた可能性が高い」
そうじゃなければ、逆にこの状況は考えられなかった。
「それまずいだろ! だってあいつが、リズリーちゃんを呪った犯人なんだろ!? 何をされるか……」
「分かってる……! だから、今から助けに行くんだ」
「助けに行くっつっても、どうやって……場所が分かるのか?」
「ああ」
ルカは胸元に付けてあった、筆頭魔術師のみが与えられるユニコーンのブローチを手に取った。
そして、そのブローチに魔力を注ぎ込む。
「リズリーには、このブローチの対になるユニコーンのネックレスを渡してある。実はあれには探知の魔法を組み込んであるから、俺がブローチに魔力を注げば、このブローチを通してリズリーの居場所が分かるようになっているんだ」
「いつの間にそんなことを……。で、どうだ!? 居場所は分かりそうか……!?」
ブローチを通してルカの頭に流れ込んでくる、リズリーが見えている景色。どこかの屋敷の一室に、ユラン・フロイデンタールと一緒にいるのは間違いないらしい。
「やはり、リズリーはあの男に連れ去られたと見て間違いなさそうだ」
「じゃあ早く助けに行かねぇと!」
「ああ。俺は転移魔法で先に行くから、お前は部下たちに声をかけてリズリー奪還の準備を急げ! 正確な位置情報については、俺が現場に着き次第、魔法を介してお前に送る! いいな!」
「了解!」
ルカは転移魔法の術式が描かれた魔法紙を取り出し、ブローチを通じて見えるリズリーがいる場所を思い浮かべる。そして、術式に魔力を注ぎ込んだ。
(リズリー……今行く……!)




