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27話 無自覚な天才


 あれからリズリーとルカには、なんとなく気まずい空気が流れていた。

 だが、どちらからともなく少しずつ距離を取ると、すぐさまミリアムが眠っている部屋に行こうという話になり、歩き始めた。


 大量にある魔法紙はそのままでは運ぶのが大変なので、リズリーが事前に用意してあった格納の術式を使い、今は異空間へと保存されている。


「本当に、少し休憩しなくて平気なのか?」

「はい。術式絵師課にいるときは徹夜なんて日常茶飯事でしたから。それに、もしもミリアム様が目を覚ますことができるなら、一秒でも早く呪いを解いてあげたいです」


 ミリアムの部屋までの道すがら、二人はそんな会話をしながら足を動かす。

 先程のどこか甘酸っぱい空気は一転し、二人の表情は少し強張っていった。


(魔力は回復したとルカ様は仰っているし、あとはこの術式に効果があるかどうか……)


 あとはルカに任せることしかできない歯痒さはあるものの、術式絵師としてやれるだけのことはやったつもりだ。


(どうか、呪いが解けますように──)


 リズリーはそう願って、ミリアムの部屋に足を踏み入れた。



「──それじゃあまず、あの大量の術式を説明して貰っていいか」


 まるで人形のようにぴくりともしないミリアムの頭を撫でながら、ルカは問いかけた。


「はい、もちろんです。ではまず、格納の術式を解いてください。実物を見せながら説明しますね」

「分かった」


 ルカは格納の術式を手に持ち「解」と宣言すると、その場には大量の魔法紙が現れる。


 リズリーは礼を言うと、いくつかある紙束の山の中から一枚手に取ると、ルカに見えるように持ってみせた。


「まず大前提として、おそらく解呪の術式には何かしらの付与を付け足さなければなりません。しかし、呪いのどの部分にどのような付与が成されたか分からない以上、全てのパターンを試すというのは、正直、非現実です」

「……少なく見積もっても……万単位だからな」

「その通りです。解呪にはそれなりに魔力を使うため、筆頭魔術師であり、いつ討伐任務に向かうか分からないルカ様は、一日にそう何度も解呪を試すことができないというのも難点ですね」


 数が多い上に、一日に試せる数は、ルカの膨大な魔力を持ってしても片手の指の数できるかどうか。

 それにルカは多忙だし、早朝から遠征や討伐任務が入っていれば、解呪の術式を試せない日もあるだろう。


 そもそも、何万通りもある付与の組み合わせを、いちいちメモしながら試すのもなかなか無理な話だ。


「けれど私、思ったんです。その何万通りもの付与を与えた術式、全てを試す必要はないんじゃないかって」

「……! どういうことだ?」

「何故なら、もし付与が正常に作動すれば、呪いにその付与の効果が現れますよね?そして、反対に呪いを打ち消すような、または相性の悪い付与を使えば、呪いが発動しない恐れがある……つまり」

「…………! そういう、ことか」


 どうやらこの説明でルカは納得したらしい。

 流石ルカ様だなぁと思いつつ、リズリーは自身が持つ術式を指差した。


「ミリアム様に掛けられた呪いは、『当時の姿のまま眠り続ける』というもの。その呪いの説明とミリアム様の症状に違いはないですよね?」

「……ああ」

「それ以外に変わったこと、症状もありませんか?」

「ああ」

「つまり……呪いの術式には何かしらの付与がなされているのは間違いないのに、その付与が表面上には表れていないということ……。付与自体が無効化されているか、付与が二つ以上あり、相殺していることによって、呪いに干渉していないのかもしれないと、考えました」


 そこでリズリーは、深夜からずっと術式を描き続けたのだ。


 ミリアムを呪った術式に関与しない、無効の付与がどれなのか、どの位置に描くべきか──何万通りもの付与の組み合わせになるものの中から、無効になるものだけを正確に選んで。


「──数は約三千。おそらくこの中に、ミリアムちゃんの呪いを解く術式があります」


 まるでいとも簡単に成し遂げたような素振りのリズリーだが、ルカにはその凄さが手に取るように分かった。


「……やっぱり、お前は」


 膨大な知識と経験、類稀なるセンス。術式を描く速さや、集中力。その全てを兼ね備えている持つリズリーは、紛れもなく──。


「術式オタクめ」

「えっ……!? 術式が大好きなだけです……!」 

「……無自覚は怖いな」


 そう言ってルカはくつくつと喉を震わせるようにして笑う。


(あっ……笑って、くれた……)


 ルカの笑顔に喜びで心を擽られるが、今はまず解呪が最優先だ。

 リズリーは「話を続けますね……!」とやや早口でそうに言い放った。


「ルカ様には、私が描いた約三千の術式に魔力を注いでほしいのです」

「ああ。一日に五つ試したとして……運が悪ければ二年弱掛かるか。それでも希望が見えたんだから、リズリーには本当に感謝しか──」


 しかし、そこでルカの言葉は遮られた。リズリーの思わぬ発言によって。


 ルカは信じられないと瞠目し「リズリー、もう一度言ってくれ」と、ほんの少し言葉を震わせた。


「ルカ様には今日──というか、今から全ての解呪の術式に魔力を注いでいただきます」

「は……?」

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