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無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
4章 現代編『美郷荘殺人事件』
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第64話 名探偵

A「うーむ(もっもっもっもっもっもっも)」

B「………………」

A「しかし……(もっもっもっもっもっもっも)」

B「………………」

A「ってことは……(もっもっもっもっもっもっも)」


――…………よく食べるなあ。


B「Aちゃん、テンポでもの食べると、無限に太ってくで」

A「つまり……(もっもっもっもっもっもっも)」

B「あっ。これ、ぜんぜん聞いてないやつや」

A「この方法なら……(もっもっもっもっもっもっも)」

B「………………。こういう時、推理小説なら、一見関係の無い会話から、事件解決のヒントが導き出されたりするもんやけど……」


――現実には、そう上手くいかないものだろうねえ。


B「ねえ、GMはん。このお話ってホントに、Aちゃんのお母様が書いたもの、なんです?」


――ん? そうだけど。


B「Aちゃんのお母様、物語を書かれる人やったんです?」


――ああ。そうだった。


B「ほな、GMはんと一緒ですねぇ」


――うん。

 ただはっきり言って、私なんかより彼女の方がよっぽど才能があったと思うよ。……姉は、人を喜ばせるのが何より好きだったから。


B「そうなんですか。……じゃ、長生きされてたら、ご姉弟で物書きさん、やられてた可能性もあったんですね」


――まあこの業界、そういう人も珍しくないけど。


B「へぇぇぇぇぇ。……ちなみにAちゃんのご両親って、どういう感じで知り合ったんですか?」


――えっ。どうだったかな。

 たしか、婚活か何かで出会ったって聞いたけど。


B「Aちゃんのお父様、TRPGは?」


――少しは、やる。

 とはいえ、姉に付き合って、って感じがほとんどだったかな。

 彼女が亡くなってからは、あまり遊ばなくなってしまったから。


B「……そうやったんですか……」


――…………。


B「…………それはちょっぴり、寂しいですね…………」


――まあ、といっても……、


A「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

B「わっ。びっくりした」

A「人が悩んでいる間に、個人情報をべらべらと……! この卓、セッション内容をぜんぶ録音してるんですよ! ろ・く・お・ん! 家族の話とか、あとあと聞き返したりしたとき、恥ずかしくなっちゃうでしょーが!」

B「ええやん。きっと十年後に聞いても、微笑ましいよ」


――そうそう。


B「……で。どーする? あんまり考え込むようなら、そろそろセッションに戻りたいところやけど」

A「ん。もうおっけーですよ」

B「えっ。マジで?」

A「はい」

B「ってことは、ひょっとして……」

A「お二人が話している間に、謎は全て解けました。……今度こそ完璧に、です」


――おお。すごいじゃないか。


A「ふふーん。まーね♪」

B「ひょっとして、ウチらの雑談が何かのヒントになった?」

A「残念ながら、特には」

B「なーんだ。現実は、推理小説みたいにはいかへんねぇ」

A「ただ一つだけ、思い出したことがあります」

B「なあに?」

A「おかーさん、むかしこんなことを言ってたんです。お話作りの基本は、『普通』をよく知っておかなくちゃいけないって」

B「? ……それってどういうこと?」

A「常識を打ち破るには、誰よりもそういったことに精通して無くちゃいけないんです。今回の事件も、きっとそういう発想で書かれたものに違いない」

B「はあはあ、なるほど。……つまりこの一件、その”常識”を利用した心理トリックっちゅうことか」

A「はい」


――では、……そろそろ、円筆あくむと色式べにに登場してもらおうか。

 この物語を終わらせるために。



あくむ「……お待たせしました。推理を続けましょう」

ササオ「今度は、本当に大丈夫なんだろうな?」

あくむ「おまかせください」


――では、お答えいただきましょう。

 フーダニット?(犯人は誰か?)

 そして、ハウダニット?(どのようにして?)について。


あくむ「犯人は依然として、杉上サキコさん、あなたで間違いありません」

サキコ「………………」

あくむ「では、足の折れたあなたが、どのようにして殺人を行ったか? ……考えてみれば、とっても簡単なことなんです。常識が邪魔をして、それを『不可能だ』と思い込んでいただけで」

サキコ「……どういうこと?」

あくむ「単純な話ですよ。あなたの足が、”犯行前”ではなく”犯行後”に折れたものだとしたら、どうでしょうか? 靴の大きさは、女性のあなたならいくらでも誤魔化すことができます。あなたは健康な足で犯行現場に向かい、殺人を行いました。その後、再び自室に戻ってから、自らの手で足を折った……どうです?」


――一瞬、談話室内が静まりかえります。

 ぱち、ぱちと、暖炉の中で燃えている炎が爆ぜる音だけが、あなたたちの耳に聞こえていました。


べに「そぉか。サキコさんの部屋で見つけたハンマーは、自分の足を折るために使ったんやね」

あくむ「仰るとおり。……それに、犯行後にサキコさんを襲った高熱も、骨折直後の症状と考えれば、筋が通ります」

べに「なるほど」

あくむ「さて! わたくしの推理は、以上です。……サキコさん。何か反論はありまして?」


――…………ふむ。


B「ええっと。……一応、奇襲された時のため、戦闘態勢を取ってもいいですか?」


――いいでしょう。


A「ちなみに、いまの推理の成否は……? この上、ダイス振った方がよろしい?」


――いいえ。必要ありません。シナリオは自動的に進行するでしょう。


B「……あかん。……なんか知らんけど、うち、すっごくどきどきしてきた……!」

A「とはいえ、推理に穴はないはずです。……例の、『犯人は魔法使い』ってオチでなければ」


――犯人は、杉上サキコ。

 彼女の足は、つい先ほど折られたもの。

 ここに来た時点で、彼女の足は折れていなかった……。

 そんなあなたたちの推理を聞いた一行は、固唾を呑んでサキコの顔色をうかがいます。

 彼女から、何らかの言い逃れがある。

 そう思っていたあなたたちの予想は、あっさりと裏切られました。


サキコ「すばらしい推理だわ。小説家にでもなったらどう? ……なんちゃってね。

 どうやら、ここまでみたい。

 そうよ。アカリの脳を奪ったのは、私。あなたの推理は、正解よ」


――すると、その言葉に驚いたニンジロウさんが……。


A「うおおおおおおおおおおおおおおおおやったああああああああああああああああ! あたしはやったぞおおおおおおおおおおおおおおお!」


――ニンジロウさんが……、


B「すごいすごい! さっすが、うちのAちゃんや!」


――ニンジ……、


A「ねえ、おじさん! 褒めて褒めて! あたし、名探偵!」


――ええと……、


A「今日だけは特別に、頭を撫でていいですよ! それはもう、わしゃわしゃと! さあ、どうぞ!」


――あの……、


A「いやー、スッキリした! 今日は機嫌良く眠れそう!」

B「勝ったな。ほな、うち、お風呂入ってくる」


――まだ、シーン描写が終わってないんだけども……。


【To Be Continued】


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