第29話 B
(過剰なまでに整理整頓されたワンルームで、三人の男女が向かい合っている。
一人は、どこか哀しげな目をした中年男。
もう一人は対称的に、十代半ばほどの、勝ち気な娘。
そして最後に、――ふわりとした栗毛が特徴的な、おっとりとした顔つきの娘だ)
(男は、少し困惑した顔つきでフリー音源のBGMを流し始める。
彼らの物語が始まるのだ)
――……で。
ええと…………あなたは、どなた?
B「うち、綾部牡丹、申しますぅ」
――はあ。牡丹ちゃん。
で? なんでAちゃんは、この娘を連れてきたわけ?
A「そりゃあもぉ! ……二人目の勇者を連れてきたのですっ」
――え。二人目?
A「前のセッションの最後に、次のシナリオは二人用だって言ってたでしょ? ですので! せっかくだから、牡丹ちゃん……いや、Bちゃんを連れてきました!」
B「よろしゅうに」
――あー……なるほど。ちなみにBちゃんのTRPG歴は?
B「オンライン限定ですけど、だいたい一年くらい、でしょか」
――へーえ。結構やってるじゃないか。システムは?
B「『クトゥルフTRPG』の6版が主で、あとは『アリアンロッド・サガ』とか、『ダンジョン&ドラゴンズ』の5版とかをちょっとずつ摘まんだ感じです」
――へえ。でもなんか、意外だな。きみみたいに若い子が……。
B「TRPGは最近、ネット配信者さんがたくさんプレイしていて、けっこー人気なんですよ!」
――ってことは、ネットから入った感じ?
B「そおですねえ」
――まあどんな時代も、最初は真似っこから始めるのが普通か。
B「おじさまも、そういう感じだったんですか?」
――うん。私の場合はほとんど、身内の影響だけれど。
B「そーなんや」
――ちなみに、今回遊ぶ『えんぴつTRPG』のルールは……?
B「ばっちり、Aちゃんから手ほどき受けてます。学校の休み時間中にね」
――おや。そうかい。……学校、行ったのかい。
A「…………ふんふん!」
――(なんだか、嬉しそうだ)
ちなみにこのシステムは、私たちが学生時代に作った簡易ルールであることを付け加えておく。
だから、後期に書かれたシナリオになるにつれて、どんどん新しいルールが追加されていったりするんだ。
A「あ、そうなんですか。……ちなみに、今度のシナリオは?」
――二ツほど、追加要素がある。
Aちゃんは、魔神フォルターのコトを覚えているかい。
A「覚えてるかって……そりゃーもう! あたしが間違って蘇らせちゃった魔神でしょう?」
――そう。
フォルターは、”ヒューマン”を皆殺しにするためだけに召喚された、恐るべき魔神だ。
今回のシナリオはそんな、”魔神フォルター”が召喚されてしまった世界線の物語である。
A「召喚……えっ。それってつまり、とんでもないことが起こった後ってこと?」
――そう。
この世界では、全ての”ヒューマン”が全滅してしまっているんだよ。
A「えっ。……ってことは実質、前回の続きじゃないですか?」
――そうとも言える。
A「ま、まさか、バッドエンド後の世界線が存在するとは……! なんでそんなシナリオがあるんです?」
――諸事情あってね。
B「シナリオライターさんの趣味、的な? こっち側のルートの方が話が膨らむから、っていう」
――まあ、そんなところだ。
……というわけで、きみたちは今回、”ヒューマン”以外の種族をプレイしてもらう。その際、種族ごとの特性を獲得してもらいたい。それが一ツ目の追加要素だ。
A「なるほど。ちなみに、”ヒューマン”以外の種族というと、他に何があるんですか?」
――”エルフ”、”ドワーフ”、”ホビット”、”獣人”、そして”転移者”と呼ばれるものだ。
A「ほうほう。最初の四つはなんとなくわかりますけど、……”転移者”というのは?」
――”転移者”は……まあ要するに、ぼくたちの世界から転移してきた現代人、って感じの連中だよ。
A「へえ。それっていわゆる、”なろう”系ってヤツ?」
――まあ、そんな感じかな。
ちなみにこの世界において、”転移者”の数は少なくない。各街に”転移者”グループがあるくらいには、彼らの存在は一般的だ。
A「なるほどぉ」
――ではさっそく、キャラクターの作成を初めてくれ。
A「りょうかい!」
B「はいな♪」
(コロコロ……カキカキ……)
A「あ、ちなみに、能力値の下限は、合計35で間違いありませんね?」
――うん。
(コロコロ……カキカキ……)
A「ふーむ、悩ましい……Bちゃんは、なに系で行きます?」
B「うちはこういうとき、回復役っぽいスキル、選びがち」
A「あたしは、さっさとぶん殴って終わりにしたいタイプ」
B「ほな、バランスとれてちょうどええかもね♪」
(コロコロ……カキカキ……)
A「できました!」
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キャラ名:シュリヒト
種族:獣人
体力:7
精神力:7
筋力:7
知力:4(+1)
五感:10(+2)
設定:純真無垢な獣人族の少女。
頭はそんなに良くないが、優しい心を持っている。
かつて”ヒューマン”に命を助けてもらったことがあり、滅びてしまった彼らを再びこの世に戻すべく、冒険者となった。
●種族特性
《獣人:猫族》:”知力”能力値を+1、”五感”能力値を+2する。
《夜目》:暗い場所にいても、松明なしで行動できる。
●覚えたスキル
《剣術(初級)》:剣を使った命中判定に、【+1D6】する。
《必殺剣Ⅰ》:精神力を2消費して、剣を使ったダメージを【+3】する。
《第六感》:奇襲攻撃、事故によるダメージロールの前に宣言できる。その後”筋力”判定に成功することで攻撃を回避できる。
《狩猟技術》:山・河の近くで休憩した場合のみ使用可能。狩りによって獲物を獲得する。効果は捕らえた獲物によって変動する。
《雑学》:三種類まで、そのキャラが詳しい雑学を設定する。それに関連した行為判定の難易度が1段階下がる。
●初期装備
ロングソード……両手武器/攻撃力1D6+2/命中率16/射程:接近/75G
チェイン・メイル:装甲+6。300G
治癒ポーション ×1:50G
冒険者セット:50G
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――なるほどなるほど。結構思い切った前衛キャラで来たなあ。
……っていうかきみ、また《雑学》とったの? 前回役に立たなかったのに。
A「いいんです! いずれこのスキルが役に立つ時が来ますから! たぶん!」
――ふーん。そうかい。
【To Be Continued】




