◆【Shana's Side】Sudden Awareness
「どっちから行く?」
夕闇が迫るなか、森へと駆け出しながら弾む声で聞いてくるジュニパー。訊いているのは二方向からやってくる敵の、北西側か北東側かだ。
「北東!」
「ぼくも、そう思った♪」
北西から来る方は、しょせん人間だ。超精密砲台のミュニオ姐さんなら三十程度は単なる的だろう。対して魔物は不規則な動きや予想外な行動に出たりするので、長距離からの対処が面倒だ。我らが凄腕スナイパーにとっては誤差程度という気もするが、それはそれとしてだ。
「魔物だって言ってたけど」
「うん、たぶんゴブリン」
またかよ。やっぱミエニー族、なんかやってんじゃねえかな。
「行くよッ」
木々の合間を縫って疾走していたジュニパーが、大きく飛び上がって人型に変わる。そのまま背に乗っていたあたしを抱き寄せながら着地。なんだこれ。なんかフィギュアスケートのペア演技みたいになっとる。
顔を上げると、目の前にはゴブリンらしき人型のシルエット。ただでさえ暗いのに森のなかではろくに見えん。鳴き声を頼りに自動式散弾銃を掃射しながら、銃火に照らし出された魔物を探り撃ちする。
「いいね! M1887 、ゴブリンにピッタリだ!」
隣では短銃身散弾銃を乱射するジュニパー。彼女のショットガンは、射程が短い代わりに散弾が大きく散らばる。数を恃んで乱戦に持ち込もうとするゴブリンには、たしかに最適の武器だ。たとえ一発で殺せなくても、被弾した魔物たちは警戒して距離を取る。出血は着実に敵を弱らせ、それは確実な死につながる。
今回はあたしが中距離のサポートに入り、手負いを仕留めてアッサリと片が付いた。
「思ったより早く済んだね♪」
「うん。そんじゃ北西側に……」
「ああああぁーッ‼」
「うわ、ビックリしたあ!」
いきなり暗闇でうずくまったジュニパーが叫び出したんで、あたしは思わずビクッとしてしまった。
「どうした、なにか問題⁉」
「あのときの筒!」
「つつ?」
「ミエニー族が、最初の襲撃のとき落としてったのと同じ筒だよ、ほら!」
ほら、って言われても……と思っていたあたしは、リレーのバトンみたいなダイナマイトみたいなのを見せられて完全に思い出した。
「これがルエナさんの言ってた、魔物誘引剤じゃないのかな⁉」
こんなんゴブリンが自分で持ってくるわけないもんな。ミエニー族が魔物を嗾けようとして撒いたものなんだろう。と思ったところで気づいた。
「ってことはさ。つまり……あたしたちが戦ってきたのって、ミエニー族の町じゃなく、北部のミエニー族だったってこと?」
「わかんない。けど、そうなるのかな」
そのとき城砦遺跡から銃声が上がって、ミュニオの狙撃が始まったことがわかる。脅威の排除は時間の問題でしかない。それ自体は問題ない、のだが……
「ミュニオに、ひとりくらいは生かしておいてもらう?」
ジュニパーに言われて、少しだけ悩む。たしかに、情報を取るために確保するのもアリかな、とは一瞬思った。でも、そのためにリスクを取るのも違う気がする。いまの状況では、ミュニオに伝えるのも難しい。そもそもの話、ミエニー族の事情には興味も関心もない。
「どうでもいいよ。相手がどこのどいつだろうと、あたしたちには関係ない。脅威になるなら排除するし、向かってくるなら殺すだけだ」
ジュニパーはニッと笑って、水棲馬姿に代わる。
「それじゃ、そのためにできることをしない?」
ミュニオの射撃間隔が妙にまばらなのは、あたしも気づいていた。遮蔽が多くて射界が取れないんだろう。当然ジュニパーも、それは察していた。
「いいね」
ミュニオの物見塔から視界外になる位置の敵を、ぶっ飛ばす。
【作者からのお願い】
「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は
下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。




