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第十一話 耳にした噂

今回は短めです。

 指名依頼を受けると答えてから二日が経過し、依頼の前日となった今日は一人で行動していた。

 依頼を受けることになったのは昨日の内にシエラとイリアには言ってあり、『蒼炎の剣士』に話が派生した時は少し焦ってしまったが……。


「おっちゃん、三本くれ」

「あいよ! 今焼いてやるからちょっと待ってな!」


 最近はそれを見ただけでついつい買ってしまっている串焼き肉を、今日もまた同じように売っている中年の男性に注文してしまう。

 酒場では肉と言ったらからあげを食べている方が多いのだが、こういう買い食いする場合は(ほとん)どこの串焼き肉を選択している。これといった理由は特に無いのだが、まあ強いて挙げるならば歩きながら食べることを考えるとからあげは少し食べにくいから、という所だろうか。


「そう言えば知ってるか兄ちゃん? 最近王都に聖剣を持った冒険者がやって来たらしいぜ」


 周囲の風景を眺めながら時間を潰そうとしていた俺に、ふと串焼き肉を焼いていたおっちゃんがそんな風に話し掛けてきた。


「……聖剣を持った冒険者?」


 少しばかり興味の()かれる内容だったので思わず聞き返してしまった俺に、視線は下に落としながら串焼き肉を焼いているおっちゃんが説明してくれた。


「なんでぃ、知らねぇのか兄ちゃん。何でもネルバの町で一気に有名人になって、今この王都に来ているって話だぜ」


 肉の焼ける良い匂いが漂ってくる中、早く出来ないかなと思いつつおっちゃんの話に耳を向ける。

 聖剣を持った冒険者、か。実力はあるのかどうかは取り敢えず置いておくとして、聖剣を持っている奴が今の今まで無名だったというのは考えにくい。だとしたらネルバの町に聖剣を持った冒険者が現れたと考える方が可能性で言えば高いだろう。そしてその噂が王都にまで届くって事は、ネルバから王都までの移動時間を考えて少なくとも二週間くらい前には既にネルバの町で有名になっていたのは間違いない。


「へえ、どんな奴なんだ?」

「それがまだ若いガキって話だせ。最近のガキは王立学院の学生にしても冒険者にしても、本当に化け物みたいに強いんだな」


 ガキ……言い方から察するに男、それも少年なのだろう。それにしてもそんな大した年月も生きていない若いガキが聖剣を持ってるのかよ。それってもう完全に主人公の道を突き進んでいるっていう感じがしてそこはかとなくイラッとしてくるな。

 まあ強さは聖剣との相性と更に聖剣にどれだけ気に入られているかによって大きく上下するが、どれだけ相性が悪くて聖剣にも気に入られていなくても剣そのものはもうそいつの物だから運任せな所もある。……が、いくら初期のなまくらであっても聖剣そのもののスペックはそこらの名剣の比じゃないしな。本来の力を引き出せなくともそれだけあればかなり魔物の討伐は捗るだろうし、レベルもあっという間に上がっていくだろうな。

 っと、そういや聖剣使いの他にもこのおっちゃん気になること言ってたな。


「王立学院の学生も強いのか?」

「ああ? 兄ちゃんだって知ってんだろ。この国の宝石である王女様に、大貴族様の子供だって何人かいるらしいぜ。あんまし詳しくねえが、かなりの天才揃いらしい」


 そろそろ串焼き肉が焼き終わるのか、肉の上にタレをかけ始めながら語るおっちゃん。

 まだ内心では確信には至っていないのだが、大陸最大の大国(仮)の王都である此処に学校の一つや二つあった所で何ら不思議な事はない。と言うか寧ろ学校が無いとかだったら逆にどうやって大国に成長したんだよと思ってしまう。まあそれだけの国が設立した学校が普通の枠に収まるとは思えないからそれ相応の優秀な生徒がいても可笑しな事はないし、少しだが期待している俺がいるのも確かだ。

 一体どれだけの者がいるのか、とても気になってしまう。特におっちゃんが国の宝石とまで呼んでいたフィリアに関しては本当にきになってしょうがない。王城で暮らしていた頃はちょくちょく会っていたから魔法の才能があるのは知っていたが、はたして実力はどうなのだろうか。

 と言うか何だよおっちゃんの言ってたその〝国の宝石〟って……あれっ? 心の中で馬鹿にしようと思ったのに、何故だか分からないが無性に共感できるような……?


「……世代交代なのかもな」

「そうだなあ。〝賢者〟様にしても他の奴等にしても、歳には勝てねえからな~」


 自分の事を考えて割と真面目な話で言ったつもりなのだが、おっちゃんはノリ良く分かるぞとでも言いたそうに首を縦に振る。

 話が噛み合っていないという事におっちゃんは気付いていないようだが、まあこの見た目で俺の歳を話したとしても笑われるだけだしそのまま会わせておく。


「ほら焼けたぞ。お前も冒険者なんだろう? だったら面白い話とか手に入れたら教えてくれよな!」

「面白い話があったらな」


 紙に包まれた出来立ての串焼き肉を受け取り、話を聞かせてくれたお礼として少し多目の大銅貨を一枚を置いておっちゃんと別れる。


(聖剣使い……か)


 時期的には可能性がありそうな奴を一人だけ知っていたりするが、まあどうせあいつじゃないだろから気にする必要は無いだろう。


(……まさかな)

読んでくださりありがとうございます!

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