第十九話 古代遺跡攻略 ⑥
一段落して、先駆した冒険者達と合流した。
「もう実感しているだろうけど、この遺跡は何かおかしい。一度遺跡を出た方が良いと思う」
開口一番にアストさんが言った。
その言葉に冒険者達は押し黙る。それが正しいと判断したからだ。
「……確かに、この遺跡の魔物は異常だ。だがここで逃げれば依頼はどうなる」
「一度、と言っただろう。態勢を立て直してからまた再開すれば良いじゃないか。滞在日数は十分にあるしね」
「態勢を立て直した程度であんな奴等に敵う訳がない!」
ふと、ある冒険者が叫んだ。
「Sランクの俺達ですら自分の身を守るだけで精一杯だったんだぞ!? 此処にいるのは全員レベル500はあるんだ、それで勝てなかったんだ。もう剣聖や賢者を連れてくるしかこの遺跡を攻略する方法は無いだろ!」
「──なら、ここで降りるか?」
「ッ!」
グランさんの言葉に男は息を飲む。
「確かに此処の魔物は強い。たが、連携して挑めば問題なく倒せる筈だ」
「それは、そうだがっ」
「なら何も心配する事なんて無いだろうが。お前はただ怯えてるだけだろう」
「……ぐっ」
かなりきつい言い方ではあるが、その通りだ。
先程の戦闘は取るに足らない相手だと油断していたからこその結果であり、仲間と協力していれば違っていただろう。
「グラン、その辺にしておけ」
「……ああ」
ニグルさんに諌められてグランさんは口を閉じる。
「やっ、やっと追い付いた!」
そんな時、一人の冒険者が駆け込んできた。
かなり急いで走ってきたのか、息を切らしながら此方に近付いてくる。
道中の魔物は全て討伐されているとはいえ、仲間を置いてたった一人で此処まで来るとは一体どういう事だろうか。
それに、口振りから俺達に用があるらしい。
まるで想像もしていなかったからこそ、俺達は冒険者の口から発せられた言葉を理解できなかった。
「──撤退だ!」
「はあ?」
この場にいる冒険者達の言葉を代弁するかのように、グランさんが間抜けな声を上げた。
周囲が一気に静まり返り、駆け込んできた冒険者へ自然と視線が集まる。
「撤退?」
「何かあったのかな」
そんな疑問がアストさん達からあがる中、切らした息を整えた冒険者が口を開く。
「正面から攻略にあたった奴等に、かなりの被害が出たらしい。し、死者も出ているとかっ」
「「「「「っ!?」」」」」
Aランク以上を集めた精鋭揃いの冒険者達ですら、死者を出すほど追い詰められている?
横道から入ったこっちに比べて、正面からだと探索の範囲も広い。つまり戦力が幾つにも分散されたから対応出来なくなった、という事か?
それに、此方よりずっと魔物の数も多いことだろう。
でなければ殺られる筈がない。
「これって依頼はどーなるの?」
「ま、失敗だろうな」
「此方で死者が出ていないこと事態、奇跡のようなものだからね。それだけオルフェウス君の力が大きいって事さ」
……いや、それだけではないと思うのだが。
今はそんな事より遺跡から撤退するのが先だな。
「取り敢えず撤退しましょうか」
「そうだね、じゃあ行こうか」
俺の声に反応したアストさんが出口へと歩きだし、それに連なるように俺達もその後ろを着いていく。
他の冒険者達も複雑な表情を浮かべながら歩きだす。
「良かったな、お前の望み通り撤退できて」
「くっ」
グランさんは冒険者にそれだけ言い残して足早にアストさんを追って行ってしまった。
「グラン」
「ちっ、……悪かったよ」
ニグルさんに睨まれて、グランさんは頭を掻きながら言う。
そんな光景を眺めつつ、俺は思考を巡らせる。
(結局、原因は何だったんだ……)
遺跡の中心部に近付くにつれて魔力探知の範囲が制限されてしまうので、そこへ行くしか原因の解明には繋がらない。
俺としてはかなり気になっている事ではあるが、だからといって依頼中に勝手な行動も出来ない。
一先ず、命令に従う他ないだろう。
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