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第十九話 古代遺跡攻略 ⑤

「ブモオオオオオオオオオッ!」


 空気を震わす雄叫びとともに突進してくるオーガキングは、有り得ない大きさの大剣を軽々と振り下ろしてきた。

 それを横に跳ぶことにより躱すと、つい先程までいた地面が崩壊して地割れを発生させる。


(……!)


 完璧な身のこなしにより攻撃を躱した──そう思っていた俺とオーガキングの視線が交錯する。

 それはつまり、俺が躱すだろうと予測していたという事。


 次の瞬間、地面を抉り取るように振り上げられた大剣が俺を襲った。


「ちぃ!」


 避けられない──空中に身を投げていた俺はそう判断し、少しでも衝撃を往なそうと刀を突き出した。


 結果は言うまでもない。


 派手に吹き飛ばされた俺は何とか体勢を建て直して壁に着地し、衝撃を完全に殺しきることに成功する。


「オルフェウス君!」

「大丈夫です!」


 アストさんの声に即座に反応し、無事を報告する。

 現状では誰一人として余裕がある者などいない。俺達が加勢してどうにか均衡を保っているに過ぎないのだから。

 そんな状態で余所見などあってはならない。


「『エンチャント』」


 付与魔法を掛け直し、一気に駆け出す。


 奴はかなり頭が切れる。俺が避けるのを予測して次なる手を講じれる程に。

 つまり通常の戦い方では簡単に先を読まれかねないという事。

 懐に入り込めれば大振りな攻撃など取るに足らないものになるが、それまでかなりの苦戦が強いられてしまう。


(──なら、俺は俺の戦い方をすれば良い)


 俺の戦い方、時空を操る俺にしか出来ない戦い方。


「グオオオオオオオオッ!」


 リーチが長い分、攻撃の動作に入るのが早い。

 普通なら避けるか往なすかの二択を迫られる所だが、俺はそんな事など御構い無しに真っ直ぐ突き進んでいく。

 そして刀を一閃。

 刀から跳ぶ斬撃『飛刃』が発生して迫りくる大剣に衝突する。かなり強力に付与魔法を施した飛刃は振り下ろされた大剣をいとも簡単に弾く。


「グガ……ッ!?」


 大きく目を開き此方を見下ろすオーガの瞳、そこには動揺と焦りが映し出される。


 刹那の時間に距離を詰めた俺は高く跳躍し、その頸を刎ねようと接近し──。


 ──オーガキングがニヤリと笑った。


「…………」


 目の前に広がるのは炎の渦。

 オーガが限界まで俺を引き付けた理由、それがこれなのだろう。

 翼を持たない人間がこれを避けられる筈がない。そう確信しているからこその行動。

 本当に賢い魔物だ。だが、見たことのないモノには流石に対処のしようが無いだろう。


「何処を狙ってるんだ?」

「ッッッ?!」


 為す術なく炎に呑まれたと思い込んでいたオーガの瞳に、今度こそ本物の恐怖が映る。

 それはそうだろう。

 つい先程まで目の前にいた者の声が背後から聞こえてきたとなれば、時空魔法の存在を知らないものは誰だろうと恐ろしくなるものだ。


「はぁっ!」


 当然、隙だらけのオーガへ刀は容易く届き、付与魔法により強化された斬れ味によって呆気なく頸が飛んだ。

 それを見ていた部下のオーガ達は動きを止めて、呆然と地に転がったボスの頭を見下ろす。


「なっ、何者なんだあいつ……」

「何がどうなったんだ……?」

「……確かあいつ、Aランクの冒険者だよな」

「あれで……A?」


 冒険者達も動きを止めて此方を見てくる。

 まあ、驚くのも仕方無い。俺もこういった反応にだいぶ慣れたものだ。


 そんな中アストさん率いる『希望の種子』のメンバーだけは、なに食わぬ顔でオーガを狩りまくっているが……。

 アストさん達もかなり慣れたってことだろう。


「離れてください!」


 俺は、オーガキングへ近付いていた冒険者達に叫んだ。

 その声に反応しピタリと足を止める冒険者達。


 ──その瞬間、彼等の目の前を大剣が横切った。


「「「ッッッ?!?!」」」


 既に俺は走っていた。


(流石に頸刎ねて生きてるオーガは初めて見たな……)


 オーガキングはまだ生きている。それは俊敏に動いた奴の腕が教えてくれる。


 オーガは元々、他の魔物と比べかなり生命力が高い魔物だ。

 手足を引き千切った所で絶命することなどなく、上位の個体ならあっという間に傷が再生してしまう程の治癒力を持っている。


 それが何者かによって底上げされているとなれば、頸を刎ねてなお生きている事にも納得がいく。


「『フレイムエンチャント』」


 刀身が燃え盛る炎に包まれた刀を手に高く跳躍する。

 一瞬でオーガの真上に到達し、続けて大剣を振るおうとする奴の身体へと振り下ろした。


「グッ……ガァアアアアアアアッッ!?!?」


 炎の斬撃と化した飛刃がオーガを断ち、あっという間に身体が炎に呑み込まれる。

 離れた場所に転がった頭からは絶叫にも似た悲鳴が響き、やがて何も聞こえなくなった。


「素材の回収は難しいか、……選択を間違えたな」


 焼け焦げたオーガキングの死骸を見下ろし肩を落とす。

 これなら殆ど傷付く心配の無い『アクアエンチャント』にしておくべきだった。

 お陰で無事なのは頭だけだ。こんなもの持ち帰って売れるのだろうか。


「……っと、そんな事より残りを片付けるか」


 それから三分と経たずに残りのオーガは全て討伐された。

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