裏切りの婦警さん 2
「……どこへ、行くんですか?」
俺は、数十分ぶりに宮本さんに話しかけた。
車はデパートから結構離れてしまった。
しかし、まだ見知らぬ土地というわけではない。最寄りの駅の隣の隣……ってくらいだ。
デパートまで行く時のような暴走運転ではなく、安全運転であったのも車があまり遠くまで行かなかったことに貢献していた。
俺が話しかけると同時に宮本さんは車のスピードを落とし、路肩に車を停車させた。
「ようやく、口を開いてくれたか」
嬉しそうに目を細めながら、宮本さんは俺のことを見る。
なんだか、嫌な気分だった。まるで滑るような目つきで俺のことを見る宮本さん……普通じゃない、というのが俺の印象だった。
「どこまで……どこか行きたい場所のリクエストはあるか?」
「は? 何を言っているんですか……そもそも、どうしてこんなことをしたんですか?」
俺がそういうと宮本さんは不思議そうな顔で俺のことを見る。
「こんなこと……私は、何か悪いことをしたのか?」
その表情は本気で悪いことをしたという実感がない顔だった。
俺はその表情をされて、どうすればいいのかわからなくなってしまう。
「宮本さん……その……宮本さんは、小室さんと古谷さんのこと、気にならないんですか?」
俺がそういうと宮本さんの表情が変わった。先ほどまで穏やかで優しげだった顔つきはキッと俺のことを睨むようになる。
「……なんだ。まだそんなことを言うのか。酷い奴だな。君は」
「え……だって、二人はデパートに置いてきちゃったし……正直、僕は帰りたいんですけど……」
そういうと宮本さんは咄嗟に拳銃を取った。「ひっ」と小さく悲鳴を出すのを自分でもわかった。
「……本気で、言っているのか?」
「え……な、なんで……?」
「……いいか? 赤井君。私はね……君のことを好きになってしまったんだ」
「……は?」
少し頬を紅く染めて、宮本さんはいきなり俺にそう言ってきたのだった。




