表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター23
123/204

追跡者 3

「あ……がはっ……」


「なっ……古谷さん!」


 銃弾は古谷さんの胸を貫通していた。血がドボドボとあふれている。


「み、宮本さん! 何してるんですか!?」


 しかし、そう言ってから俺は愕然とした。宮本さんは顔色1つ変えず、血を流す古谷さんを見下ろしていた。


「ふんっ。ソイツは化け物だ。銃弾を胸に食らったくらいじゃ死なないさ」


「かはっ……ぐはっ……」


「古谷さん! 紫藤さん! 何かコンビニから血を止める……タオルか何か持ってきて!」


「あ、ああ!」


 あまりのことに紫藤さんも動点していたようだ。慌ててコンビニに向かう。


「まぁ、さっきの化け物みたいに、脳天を撃ちぬかれれば一日は動けない。だが、次の日には元通りだ。わかっただろう? コイツらは化け物なんだよ」


 宮本さんの言葉はどうでもよかった。今は目の前で苦しそうにしている古谷さんが問題だ。


「古谷さん! しっかりして!」


「あ……赤井君……」


「……化け物のくせに赤井君の名前を気安く呼ぶんじゃない」


 そう言うと、宮本さんはもう一度銃を発射した。今度は銃弾は古谷さんの太ももを貫通する。声に成らない悲鳴を上げ、古谷さんは大きくのけぞった。


「宮本さん!」


 俺は大声で怒鳴った。すると、ようやく宮本さんは困ったように俺を見た。


「赤井君……どうしてそんな怖い顔をするんだ? ソイツは化け物なんだぞ? それなのに……私が間違っているっていうのか?」


 宮本さんの言葉はもうどうでもよかった。今は来るそうにしている古谷さんを、一刻もはやくどうにかしてあげたかった。


「赤井! タオル、持ってきたぞ!」


 紫藤さんが持ってきたタオルをとりあえず、古谷さんの胸に押し当てる。足にはタオルをキツく縛った。


「う、うぅ……」


「古谷さん……安心して。大丈夫だから……」


 俺がそう言うと古谷さんはまるで俺を安心させるかのように、優しく微笑んだ。


 俺はぎゅっと優しく古谷さんの冷たい手を握る。古谷さんも嬉しそうだった。


 それから、しばらく、俺は、紫藤さんが持ってきた大量のタオルをとにかく、交換しながら古谷さんの胸に押し当てた。


 宮本さんの言ったことは確かに正しかった。


 タオルを押し当てる度に、出血の量が少なくなっていく……普通の人間ならあり得ないことだ。


 それでも、俺は古谷さんの介抱を続けた。その様子を紫藤さん、小室さんは心配そうに見ていた。


 ただ一人、宮本さんだけが、不思議そうに俺のことを見ていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ