追跡者 3
「あ……がはっ……」
「なっ……古谷さん!」
銃弾は古谷さんの胸を貫通していた。血がドボドボとあふれている。
「み、宮本さん! 何してるんですか!?」
しかし、そう言ってから俺は愕然とした。宮本さんは顔色1つ変えず、血を流す古谷さんを見下ろしていた。
「ふんっ。ソイツは化け物だ。銃弾を胸に食らったくらいじゃ死なないさ」
「かはっ……ぐはっ……」
「古谷さん! 紫藤さん! 何かコンビニから血を止める……タオルか何か持ってきて!」
「あ、ああ!」
あまりのことに紫藤さんも動点していたようだ。慌ててコンビニに向かう。
「まぁ、さっきの化け物みたいに、脳天を撃ちぬかれれば一日は動けない。だが、次の日には元通りだ。わかっただろう? コイツらは化け物なんだよ」
宮本さんの言葉はどうでもよかった。今は目の前で苦しそうにしている古谷さんが問題だ。
「古谷さん! しっかりして!」
「あ……赤井君……」
「……化け物のくせに赤井君の名前を気安く呼ぶんじゃない」
そう言うと、宮本さんはもう一度銃を発射した。今度は銃弾は古谷さんの太ももを貫通する。声に成らない悲鳴を上げ、古谷さんは大きくのけぞった。
「宮本さん!」
俺は大声で怒鳴った。すると、ようやく宮本さんは困ったように俺を見た。
「赤井君……どうしてそんな怖い顔をするんだ? ソイツは化け物なんだぞ? それなのに……私が間違っているっていうのか?」
宮本さんの言葉はもうどうでもよかった。今は来るそうにしている古谷さんを、一刻もはやくどうにかしてあげたかった。
「赤井! タオル、持ってきたぞ!」
紫藤さんが持ってきたタオルをとりあえず、古谷さんの胸に押し当てる。足にはタオルをキツく縛った。
「う、うぅ……」
「古谷さん……安心して。大丈夫だから……」
俺がそう言うと古谷さんはまるで俺を安心させるかのように、優しく微笑んだ。
俺はぎゅっと優しく古谷さんの冷たい手を握る。古谷さんも嬉しそうだった。
それから、しばらく、俺は、紫藤さんが持ってきた大量のタオルをとにかく、交換しながら古谷さんの胸に押し当てた。
宮本さんの言ったことは確かに正しかった。
タオルを押し当てる度に、出血の量が少なくなっていく……普通の人間ならあり得ないことだ。
それでも、俺は古谷さんの介抱を続けた。その様子を紫藤さん、小室さんは心配そうに見ていた。
ただ一人、宮本さんだけが、不思議そうに俺のことを見ていたのだった。




