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分岐点にて  作者: 星野☆明美、chatGPT
6/7

5


人混みの中から叫び声が聞こえた。

ざあっと人垣ができて、その真ん中を千鳥の方へ近づいてくる人影。

優也?

「千鳥、逃げろ」

優也の胸の辺りがどす黒く染まっている。ーー血?怪我をしているの?


人混みのざわめきが、急に遠くなる。

千鳥の視界には、もう優也しか映っていなかった。


「千鳥……」


名前を呼ぶ声が、かすれる。

胸元のどす黒い染みは、じわじわと広がっている。

血の匂いが、風に乗って届いた。


「逃げろって……どういう……」


言い終わる前に、千鳥は感じた。

背中に突き刺さる視線。

――見られている。


優也の肩越し。

人垣の隙間に、立ち止まったまま動かない影があった。


周囲は騒がしいのに、

その人物だけが、異様なほど静かだ。


目が合う。


瞬間、千鳥の全身が粟立った。

理由はわからない。

でもはっきりとわかる。


――この人、私を見ている。

――優也じゃない。

――逃げなきゃいけない。


優也が、最後の力で腕を伸ばす。


「……来るな……そいつは……」


影が、一歩、前に出た。


世界が、きしむ。

あの感覚。

胸の奥が、ひらりと光る。


(また……分岐点……?)


千鳥は歯を食いしばる。


逃げる?

それとも――確かめる?


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