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分岐点にて  作者: 星野☆明美、chatGPT
5/7

4

夕方のシフトは、いつも同じ時間帯に混む。

千鳥はレジに立ちながら、機械的に袋詰めをしていた。


「ありがとうございましたー」


声だけが、体から少し遅れて出ていく。

考え事をしているときの癖だった。


次の客。

次の客。


そして、その次。


ふと――

見覚えのある横顔が、視界の端をよぎった。


(……え?)


一瞬だった。

背の高さ。

歩き方。

肩の力の抜け具合。


千鳥の指が止まる。


(今の……)


振り向いたときには、もう人混みに紛れていた。

気のせいだ、と言い聞かせるには、胸の奥がざわつきすぎている。


(似てただけ。

世の中、似た人なんていくらでもいる)


そう。

それは分かっている。


けれど――

思い出してしまった。


小学生の頃。

帰り道が同じだった、幼馴染。


山田優也。


特別に仲が良かったわけじゃない。

でも、気づけばいつも近くにいた。


雨の日、傘を忘れた千鳥に、

「どうせ俺も濡れるし」

そう言って、平然と半分貸してきた。


中学のとき、

進路の話をしていたときも、

優也は曖昧に笑って言った。


「まあ、なんとかなるでしょ」


その言い方が、なぜか腹立たしくて。

でも同時に、少し羨ましかった。


(私は、なんともならなかったな)


高校を卒業してから、

連絡は自然に途切れた。

喧嘩したわけでもない。

ただ、それぞれの生活が始まっただけ。


それなのに。


さっきの横顔が、

記憶の中の優也と、

不思議なくらい重なった。


千鳥はレジ下のカウンターに手をつき、

小さく息を吐いた。


「……疲れてるな、私」


そう呟いた声は、

自分でも驚くほど弱かった。


その日の帰り道。

信号待ちの交差点で、

千鳥は無意識に人の流れを目で追っていた。


もう一度、

あの横顔を探すように。


もちろん、いない。


幼馴染は過去にしか存在しない。

そういうものだ。


――なのに。


胸の奥で、

何かが「違う」と囁いていた。


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