表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分岐点にて  作者: 星野☆明美、chatGPT
3/7

2

千鳥は一歩、後ずさった。

男の言葉が、まだ耳の奥で反響している。


――規定外だ。


意味は分からない。

けれど、良い言葉じゃないことだけは分かった。


「……ごめんなさい」


自分でも驚くほど、小さな声だった。

男は眉ひとつ動かさない。


「謝罪は不要です。事実を伝えただけなので」


淡々とした口調。

そこに感情はなかった。


千鳥の胸が、ぎゅっと縮む。

ここにいたらだめだ。

理由は分からないけれど、ここに立ち続けたら、戻れなくなる。


「……失礼します」


そう言って、千鳥は踵を返した。


歩き出す。

早歩き。

それから、小走り。


背後から追ってくる気配はない。

呼び止める声もない。


それなのに、

背中に視線だけが刺さっている気がした。


駅前の喧騒に紛れ込むと、

胸いっぱいに息を吸った。


(夢じゃない……)


手が震える。

指先が冷たい。


家までの道を、ほとんど覚えていなかった。

鍵を開け、靴を脱ぎ、玄関に座り込む。


静かだ。

いつもの部屋。

いつもの天井。


それなのに――

世界が、少しだけ遠い。


千鳥は布団に倒れ込んだ。

目を閉じても、

あの黒い瞳が浮かぶ。


――どの世界線でも、私は君を見つける。


心臓が、また早く打ち始める。


「……知らないよ、そんなの」


誰もいない部屋で、呟いた。


けれどその夜、

千鳥はひとつだけ確信していた。


もう、

何もなかった昨日には戻れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ