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【ダンジョン公社、求人のお知らせ】 勤務地、72号ダンジョン。 オープニングスタッフ募集中。 未経験OK、アットホームな職場です。  作者: 小倉ひろあき


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20話 冒険者サンドラ2

 シュイヴァンの街に着いてからのサンドラは忙しく働いた。


 紹介状もあり、いかにも凄腕のような印象を与えてしまったようだが、それも何度か依頼をこなしたら治まったようだ。

 今では前衛、斥候、後衛がこなせる便利屋として臨時パーティーによく誘われる。


 意外だったのは斥候の人気だ。

 偵察スキルが中級になったことでいっぱしの斥候として認められたらしい。

 荒くれぞろいの冒険者は前衛が多く、斥候のほうが需要が高いのだ。


 サンドラの投擲を用いた索敵はなかなかの精度であり、すっかりと『前衛もできる斥候』という立ち位置となった。


 斥候として活動が増えた結果、ダンジョンで罠に挑む機会も増えた。

 自然と罠解除スキルも習得し、ますます斥候として声をかけられるようになった。


 つまり、冒険者としてサンドラは良い循環に入っている。

 一気に自身の実力が伸びていることを彼女は感じていた。


 固定でパーティーこそ組んでいないが、これは見知らぬ土地で人を知らないからだ。

 サンドラは焦りは疫病神を呼び込むと信じ込んでいる。

 今は信用できる者、頼りにならない者を慎重に見極めていた。


「やあ、サンドラ。いいとこに来た。今日は町依頼か?」

「ん? ああ、ドアーティか。森の村に物資を届ける依頼があってね。帰ってきたとこだよ」


 ギルドで声をかけてきたのは中堅冒険者のドアーティだ。

 何度かサンドラと臨時でパーティーを組んだ顔なじみである。

 ごま塩のヒゲと垢じみた身なりがいかにもむさ苦しいが、冒険者には珍しく優しげな雰囲気がある。

 槍を巧みに操る印象が強いが、精霊術も使えるそうだ。


 冒険者の仕事は大きく分けて2つ。

 モンスターの素材や宝箱を求めてダンジョンを攻略すること、そして住民の依頼をこなすことだ。

 総じて危険で実入りも大きいハイリスクハイリターンのダンジョン攻略が人気があり、雑用のような依頼を嫌う者も多い。


 だが、護衛依頼で運を開いたサンドラは積極的に依頼もこなすようになった。

 これがまた『仕事を選り好みしない』とギルド職員からも好評価なのだ。


「それで、わざわざ声をかけてきたってことは何かあるのかい? さすがに明日はダンジョンには行かないよ」

「ああ、こっちも仕事あがりさ。それはいいんだが、ちょっと気になる話があってな」


 サンドラは「おごりだろうね」とドアーティの向かいに座る。

 ドアーティは「1杯だけだぞ」と苦笑いだ。


 サンドラはビールを頼み、木製のジョッキをグイッとあおる。

 ぬるくて泡も少ないがビールはビールだ。


 冒険者ギルドは酒場も併設されていることが多い。

 これは元々酒場などで冒険者同士が情報交換していたのが冒険者ギルドの発祥らしく、その名残りのようだ。


「お前さん、たしかプルミエの街から来ただろう?」

「ああ、やっとこ慣れてきたところさ。向こうで何かあったのかい?」


 サンドラはドアーティに相づちをうち、まずいビールのおかわりと食べ物を注文する。

 店員は「あいよっ」と威勢よく応じ、すぐに芋とベーコンの煮物が出てきた。

 ニンニクの風味が香ばしい。


「実はな、向こうで新しいダンジョンが発見されたそうだ。なにか知ってるか?」

「ああ、ちょっと話題になってたやつだね。調査に行ったヤツが何人も死んだって聞いたけど、アタイは仲間を死なせたばかりでそれどころじゃなかったよ」


 ドアーティは「そうか、悪かった」と頷き、ジョッキを掲げた。

 サンドラの仲間を悼み献杯をしてくれたのだ。

 彼女も応じてガツンとジョッキを合わせる。

 これも冒険者の流儀だ。


「ああ、気にしないでくれ。それで?」

「お前さんはダンジョンの隠し部屋って知ってるか?」


 少し突飛な話だが、サンドラは気にもしない。

 粗野な冒険者同士、しかも酒まで入っているのだ。

 皿にツバを飛ばしたり机を叩いたりしないだけマシである。


(隠し部屋、ね。ドラゴン退治の話か。バカバカしい)


 サンドラは「おとぎ話だろ」と鼻で笑う。

 いわく、ダンジョンには新月にしか現れない扉があって、そこを抜けると見たこともない魔道具や宝物をドラゴンやキメラが守ってるとか、そんな与太話だ。

 冒険者の現実を知るサンドラからしたら、そんな一発逆転は妄想でしかない。


「まあな。だが、実際に例はある……らしい。信じられない宝石を持ち帰ったダンジョンブレイカーの噂を知らんか?」


 ダンジョンブレイカーとはまた大げさな異名だ。

 サンドラは鼻で笑うが、ドアーティは熱心に語る。

 宝石を持ち帰った時にダンジョンが崩壊したとか、何個もダンジョンを制覇したとか、そんな感じでついた異名らしい。


「んで? それがなんでアタイにビールをおごる話になるんだい?」


 当然の疑問である。

 ただでおごってもらえたと思うほどサンドラはうぶ(・・)ではない。


「ああ、ダンジョンは変異を繰り返して規模が大きくなるだろ? 生まれたてなら小さいし、そのダンジョンなら隠し部屋にも行きやすいのかなと思ってよ。何か情報が欲しい」

「バカバカしい! そんなうまい話があるもんかい!」


 ドアーティはサンドラに笑われてムッと不満げに下唇をつき出した。

 だが、すぐに「だよなあ」と苦笑する。


「実はよ、たまに組んでたヤツらがその気になっててな。ハッ、俺としたことが気が迷ったみたいだ」

「別に止めやしないさ。だけどね、調査に向かったのは初心者(ルーキー)じゃなくていっぱしのヤツさ。それが何人も死ぬようなダンジョンで悠長に隠し部屋探しかい? アタイならやめとくね」


 サンドラも酒が入って舌が滑らかになったようだ。

 ひと仕事終えたこともあり、懐も寂しくない。

 つい、もう1杯とビールを追加するのも無理からぬところだ。


「それで、ダンジョンブレイカーってのはどんなヤツなんだい? 大金を稼いだんなら、さぞや豪気な暮らしをしてるんだろうね」

「いや、俺も話に聞いただけだ。剣も魔法もいける凄腕のソロだとか言ってたな」


 サンドラは「ふうん」と相づちを打ちながら、とある冒険者を思い浮かべていた。


(魔法が使える前衛で、ソロ……あいつなら剣が使えても不思議じゃないか……)


 サンドラは「まさかね」と薄く笑い、自分の妄想をビールで流し込んだ。



■ステータス■


サンドラ(人間)レベル14

21才、女性。

スキル

剣術(中級)

偵察(中級)

投擲(初級)

罠解除(初級)


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