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81.勢いよく

 一先ず、ゴルバの話で出没した魔物については大体の情報を得ることができた。

 相手の動きは素早く、まだ完全にその姿を見た者はいないということ。

 大きさはそれほどでもないということ。

 だが、性格は攻撃的――すでに討伐隊にも大きな被害が出ている。

 自ずとアウロが呼ばれた理由も分かる。

 そのレベルでなければ、対応できない可能性が高い――そういうわけだ。


「サーシャよ、しばらくは屋敷でゆっくりできるのだろう? さあ、父と共に――」

「父様は先に帰ってください」

「サーシャ!?」


 冷たくあしらわれたショックか、ゴルバはその場に膝を突いて落ち込んでいるが、サーシャはアウロに声を掛ける。


「アウロさんは、どこか泊まる予定はあるんですか?」

「決めてはいないな。まあ、この辺りで宿を探すか、野宿でもいいと考えているが」

「……仮にも騎士団長が野宿って」

「仮じゃないだろ、それに野宿だって当たり前にすることだ」

「相手は正体不明なんです。いざという時、アウロさんが戦えないと困りますから」

「別に、どこで寝ようと戦えるようには――」

「とにかく! 宿がないのなら、うちに来てはどうですか?」

「……なんだと?」


 アウロは少し怪訝そうな表情を浮かべた。

 サーシャとしては、アウロのような大男がこの辺りをうろつくのはやはり目立つし、騎士団長という立場があったとしても――クルトン家の世話になっている、という名分があった方がいい。

 アウロは少し考え込むような仕草を見せて、


「いや、野宿にしておこう」

「私の家より野宿の方がいいって言うんですか!?」

「……何でそうなる。せっかく、家族で再会できたんだ――少しはゆっくりしたらどうだ?」


 アウロなりに気を遣っている、ということだろうか。

 だが、それこそ大きなお世話だ。


「家を離れたのだって半年ですし、私だって仕事のために来てるんですよ? どうせ一緒に行動するなら、泊まる場所だって同じ方がいいに決まってるじゃないですか」

「……まあ、一理あるが」

「そうですよ。どうせ、王都でも同じ家で暮らして――」

「サーシャよ、それは一体どういうことだ……?」


 不意に、話に割って入ってきたのはゴルバだった。

 その表情は、知ってはならない事実を聞き、今にも怒りで爆発しそうになっている時のもので。


「あ、ご、語弊がありました! 同じ家と言っても、その、一緒に暮らしているというか……!」

「アウロ殿ッ! 今日はぜひ、屋敷に来てくれないか……? 色々、聞きたい話もあるのでね……」


 勢いよく、アウロの肩を掴むゴルバ。

 地面にめり込むような勢いで、思わずサーシャは押し黙る。

 一方、それほどの凄みであっても全く怯まないアウロは、


「領主殿にそこまで言われては、断る理由もないか」


 少し諦めた様子で、渋々合意していた。

 ――ゴルバからすれば、最愛の娘が男と一つ屋根の下で暮らしているという事実を知られたばかり。

 すでに言い訳をする状況になく、アウロにできるだけ休んでもらうつもりが、却って面倒事に巻き込む結果となってしまった。

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