デズロの癇癪(BL注意)
「一度この辺りでサウジスカルに帰還したいのだがな」
事の発端はエルハドのこの一言。
僕達は今、エドロン帝国にいる訳だから最短でサウジスカルに帰るには船に乗らないといけないんだけど、その手続きが結構面倒なんだよねぇ。
「何? 僕達を陰で護衛してる奴から何か言われたの?」
折角の二人旅なのにハイトのやつ監視を送り込んで来たんだよ? お陰で僕達、外でイチャイチャ出来なくなっちゃった。腹立つなぁ。ぶぅ!
「ギャドとセラの子供がもう直ぐ産まれそうなんだ。祝ってやりたいだろう?」
そうだね。僕もね? きっと前なら純粋に祝いたいんだろうなって素直に首を縦に振ったけど・・・エルハド?
お前またお決まりの鈍感さを発揮してるね?
「別に急いで帰らなくてもいいでしょ? セラだって大変だろうし、産まれてからゆっくりお祝いしてあげれば?」
「いやしかし、弟の子供だぞ? 私の姪か甥だ。うむ!いい響きだ」
おいおい。
何ウットリしちゃってるのエルハドさん?
お前本当に家族の事になると急にデレるよね?
「だから〜お祝いはセルシスに任せておけばいいと思うよ? 僕達は予定通りオスカールに戻ろう」
「・・・なんだ? お前さっきからおかしいな。帰りたくないのか?」
本当にコイツ鈍い。
どうしてこんなに鈍感なんだろう?
・・・主に恋愛面において。
「なんで、そんなにギャドばかり追い回すの?」
「・・・・・・は?」
「もしかして気付いてない? 大樹の呪いが解けた後もエルハド、ギャドを特別扱いしてるよね? 確かにエルハドは家族を大切にしてるけど、自分の子供にだってギャドみたいに絡んで行くことないよね? エルハドは僕以外に本気で甘えた事ないからね?」
「・・・・っな!」
あ、ちょっとエルハド。その顔いいね?
エルハドがそんな風に狼狽えるなんて珍しい。
あー今日は我慢しようと思ったんだけどなぁ。
「おい? ま、待て待て! お前まさか・・・」
「大丈夫。こんな山奥の小山誰も来ないよ・・・エルハド」
「そうではない! お前、人の話聞いてたのか!」
エルハドこそ聞いてた? 僕の話。
珍しく聞き分けが悪いなぁ?
「駄目だよエルハド。僕以外に関心を持ったら」
「お、まえ・・は、何を・・・」
「いくらギャドがノア様に似てるからって、夢中になったりしたら許さないよ? エルハドは僕のものだろ?」
ありゃ? 完全に固まったね?
エルハド? 本当に全く気付いてなかったみたい。
「・・・っは、何を、ふざけたこと・・・」
「ふざけてないけど? だってエルハドは最初ノア様の為に僕を探しに来たんでしょ? 君の血が呪われてるって知った時合点した。エルハド。どんな人間でもただ漠然としたものを守る為だけに何十年もの歳月、危険をおかして他国に潜入しようなんて思わないよ? 君の強い意志はノア様に対する想いそのものだ」
「それは、あの人は私の父であり、我が国の・・・」
「でも、エルハドはノア様と殆ど接点がなかったよね? ずっと避けられてた。側に置いたら危険だとノア様が気付いたんじゃないの?」
あ。これは、まずいかな?
エルハド本気で混乱してるみたい。
そっか。ノア様は、だから何も言わずに君を避けていたんだね? 君をとても愛してたんだ、きっと。
「私は、父をどうかしたいなどと一度たりとも思った事はない」
「そうだね? きっと側に居れたとしてもエルハドがノア様にギャドの母親が向けた様な愛し方はしなかっただろうね? でもねエルハド。狂気的な愛の表現方法は一つとは限らないんだよ? 例えば・・・エルハドはどうしてリメルディナスと結婚したの? ノア様が望んでいたからだよね?」
「何が言いたい?」
「君を殺したい程の憎む彼女を説得して、君は早急過ぎる速さで子供をもうけた。敗戦国の国の姫を無理矢理皇妃に据えたのはノア様がリメルディナスの国を、リメルディナスを救いたいと願ったからだ。だから、君は彼女しか手元に置かなかった。彼女をこの国に繋ぎ止め逃げられない様にする為に」
僕はサウジスカルに連れて来られた当時ずっと違和感を感じていた。ここは確かにエルハドの国なのに、彼の居場所がなかった様に思えたんだ。だから、僕はずっとエルハドの側に居た。エルハドが僕の側に居てくれたように。
「私は、確かにリンディに恋心など抱かなかったが、彼女の事はちゃんと愛している。彼女でなければ側に置きたくなかったからだ」
「"彼女でなければいけないから"だよ? 彼女以外は無意味だった。そして、リメルディナスにとってもね? 彼女もとっくに気付いてるんじゃないの? どこの世界に自分の妻の想い人をわざわざ探して連れてくる奴がいる? 君は後ろめたかったんでしょ? ノア様の希望を叶える為だけに彼女の国を滅ぼした事が。僕にはリメルディナスの気持ちがよくわかるよ? だってそれは、エルハドが僕にも向けたものと似ていたから」
「お前は・・・ずっとそんな風に思っていたのか?」
「エルハド。お前は本当に腹が立つ程鈍感だよね? でも、僕はエルハドを許してあげる。だってエルハドの罰はもう下ってるもんね?」
そう。
僕だってエルハドを責める事なんて出来ない。
僕だってテリアーゼに同じ事をしたんだから。
「罰?」
「僕を本気で愛した事だよエルハド。そして、その想いがノア様に対する執着を上回った事だ。そう、僕だよ。馬鹿なエルハド。僕を見つけた時、直ぐに拐ってくれば君はきっと、こんな事実を知らないままリメルディナスと幸せになれた筈なんだ」
「・・・デズロ?」
「直ぐに、僕をあの国から連れ去っていたら、君は僕を愛さなかったのかな?」
本来なら大樹を救う役目は僕が担うはずだったんだ。
でも、結局大樹は僕の娘のティファを選んだ。
ここに来た時、僕はもうエルハドを愛していたから。
「・・・それは、ないと思うぞ」
「・・・は?」
「もし、出会った頃お前を無理矢理連れて来たとしても、私はきっとお前に惹かれただろう。私が呪いで父に執着していたとしたら、お前は真実この国と私を救ったのだろうな」
そうかな?
エルハド鈍いからなぁ。
なんせ自分の気持ちに気がつくのに30年以上かかったからね? 長すぎる。僕は自分の忍耐力を褒めたい。
「お前の言うことが全て真実だとして、お前は何を恐れている? 私が今更お前以外を愛すとでも? お前私を一体どんな人間だと思っているんだ?」
え? エルハド、まさか自分がまともな人間だとか思ってないよね? 軽く見積もっても君、一山分越えるぐらいは常識から逸脱してるからね?
「恐れているんじゃないよ。ただ気に入らないだけ。僕散々我慢したから、もう遠慮はしない事にしたんだ」
例えエルハドを多少傷付けたとしても手段は選ばない。
僕以外をそんな目で見るなんて許さない。
「お前は俺だけに夢中になってればいいんだよ」
あれ? 絶句?
お前本当に、こんなに長く僕と居て僕の事まだ理解してなかったんだね?
「分かったら黙ってこっちに来い。返事は?」
「・・・・・・お前、我慢などした事あったか?」
あるよ! ここに来てからずっと我慢してたから!
お前一度生まれ変わって人生やり直した方がいいよ。
そして、一度くらいまともな恋経験して来なよ!




