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勇者√←ディレクション!  作者: nns
戦いのあとに

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245/250

第245話

 街の至るところで火が灯る。

 薪が街を優しく照らしていた。

 人々が戻ってきて、彼らはすぐに自身の家を確認しに行った。

 この薪は家を失くしてしまった人たちの為のものだ。

 これから彼らは、それぞれ知人の家に身を寄せるという。


 壊れてしまった街を見ても、彼らは一言も私を責めなかった。

 それどころか、街の為に今までずっと戦ってくれてたんだなと労ってくれた。

 人に感謝されるために冒険をしてきた訳じゃないけど……

 守ろうとしてきたものに理解されるってこんなに嬉しいんだって、改めて思い知った。

 私は泣きそうになりながら、街の人達とありがとうを言い合った。


「もうちょっと右」

「こう?」

「いきすぎ」

「あたしの力、微調整は向いてないんだよー」


 クロちゃんとレイさんは瓦礫の撤去で大活躍だった。

 あと数日もすれば、機嫌を直したゴーレムも稼働させられるようになるらしい。

 体の修復が終わるとかじゃなくて機嫌で決まるってなんか可愛いなって思った。


 だけど、魔法でどうにかできるところだけじゃない。

 むしろどうにもならないことの方が多いだろう。

 壊しちゃったものはごめんなさいして回った。

 私よりも、勇者一行とクーの方が申し訳なさそうにしていた。

 クーは悪くないんだけど、謝りに行くって言った私の肩から降りることはなかった。



 そして、ありがとうとごめんなさいを終えて、やっと広場へと戻ってきた。

 カイル達は街を立ち去ろうと、そそくさと身支度を整えていた。

 争いの元凶となった自分達がここにいるべきではないと判断したのだろう。


「待って」


 私は迷うことなく一行を引き止める。

 勝手かもしれないけど……だけど、このままじゃだめだと思ったんだ。


「寝泊まりする場所は提供するから、しばらく街の復興を手伝って欲しい」

「でも、僕は……」


 少しでも人手が欲しいというのは本当だ。

 私の提案は色んな人達が聞いていたけど、誰も反対しなかった。

 カイルが周囲を見渡すと、みんな静かに頷いていた。

 そして、彼は言葉を詰まらせて、できるだけ償えるように善処すると言ってくれた。


 ウェンとのやりとりを見て、ほんの少しだけ手を差し伸べたくなってしまったのだ。

 この街にしようとしたことも、クーにしたことも許してないけど。

 特にクーにしたこと。



 片付けを進める人達の手を止めてもらって、事情を説明した。

 ジーニアやマッシュ公国にあったスピーカーというものを使えば楽だったんだろうけど、

 そんなものはないから声を張り上げて喋るしかなかった。

 この街に何が起こったのか。

 カイル達が何をしようとしたのか。

 これからどうするのかも。


 カイルが話を補填してくれたおかげで、かなり話しやすかった。

 ちょっと緊張したけど、ちゃんと話すことができた、と思う。

 街の人達は、カイルに「死ぬ気で働けよ!」なんて声を掛けはしたけど、誰一人出ていけとは言わなかった。


「……いい街でしょ」

「あぁ……君が命を賭して守るだけのことはある」


 それから、マイカちゃんは家に戻った。

 彼女の家も屋根が壊れているから片付けが必要だろうし、何より積もる話もあるだろう。

 私はまた明日と彼女を送り出し、巫女のみんなに寝床は決まっているかと確認した。

 フオちゃんとニールはセットで同じところにお世話になるらしい。

 ニールの脱ぎ癖を考えるとベストだと思った。


 勇者一行は私の家に寝泊まりさせようと思ったんだけど、街の人達のご厚意で

 呆気なく泊まる場所が決まった。

 それぞれ、半壊している家にお世話になることを決めたようだ。

 もしかしたら、寝る間を惜しんで片付けを手伝おうとしているのかもしれない。


 今日のところはこんなものだろう。

 私はクーを連れて自宅に戻ろうとした。

 ずっと帰っていなかった家に。


「ラン、ちょっといいか」

「……いいけど」


 振り返ると、そこにはウェンが居た。

 今の彼に、私をどうこうする力は残っていないはずだ。

 それに、敵意のようなものは感じられない。

 私は誘われるまま、小高い丘まで付き合った。


「で、何?」

「…………………………………ありがとうよ」

「はい?」

「あいつの生きる目的、変えてくれて」


 彼の現王政に対する怒りは聞いていたけど、あんまり深く聞かない方がいいと思って、

 誰もそこには触れなかった。

 ウェンがしようとしているのはその話のようだ。


「俺は人生であれほど誰かに同情したことはない。

 確かに旅先じゃカイルは、勇者業に関係のないところでは無愛想だったし、

 問題を放置したことも多かった。

 ただそれは、あいつにそんな発想がなかったからなんだ。

 命令されたこと以外であいつがなんとか思い付けたのは復讐だけだ。

 それ以外、何も見えていなかった」

「……なんか、可哀想」

「そうだな。金さえ手に入ればどうでもいいと思っていたが、さすがに

 俺もヴォルフも情が移っちまったよ。あいつは、魔界に行きたかったんだ。

 詳しくは俺達も聞かされていないが、魔族に取り入ってセイン国王を裏切るつもりだったみたいだ。

 外面を何よりも気にする国王が、国民に罵声を浴びせられ、失脚したら。

 そう考えるだけで、カイルは楽しかったらしい」


 そんな感情に支配されていたなんて……なんて、虚しい人なんだろうと思った。

 気付けば、さっきと同じ感想が口を突いて出た。


「……可哀想」

「さっきと感想が被ってるぞ。……ま、でも、そういうことだ。もうほっとけないんだよ。

 カイルの復讐以外のことを思って旅をするだなんてなぁ」

「そっか……良かったね」

「おう」


 早く水に流したいとは思うけど、なかなか上手くはいかない。

 ウェンもそれは理解しているようだ。

 私達は妙な距離を感じつつも、今はこれが精一杯なんだと信じて、それぞれの家に戻った。


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