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勇者√←ディレクション!  作者: nns
【最終決戦】黒と闇と光と優しいドラゴン

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234/250

第234話

 クーが時間を稼いでくれているのは分かっている。

 早く戻らないといけないんだ、私は。

 だけど、訊かずにはいられなかった。


「レイさん……? これって、どういうこと……?」


 きょとんとした私の顔を見た彼女は、少し得意げに教えてくれた。


「あたしらは封印の柱に納められるのを経験した巫女じゃん?

 更にその柱の女神と直接言葉を交わして力を借りて、新たな封印に関わっている。

 そして、第一の封印になっていたこの街の剣を、ランちゃんが抜いた」


 彼女の説明に、少しずつ頭がついていく。


「……まさか」

「うん。あれ? これって、双剣を抜く準備整ってない? って気付いちゃって」

「あ、う、うん」

「持ってきちゃった♥」


 そんな「来ちゃった♥」みたいな感じですごいこと言わないで。


 こらこら、と思う反面、どうしてこんなことに気付かなかったんだという後悔がすごい。

 私達がしたかったのは、新たな封印を完成させること。

 双剣を手放したかったワケじゃない。

 封印を完成させて手順を踏んだら、すぐ抜いちゃえばよかったんだ。


 空っぽだった鞘に受け取った双剣を納めていると、レイさんはイタズラっぽく言った。


「現役の伝説の剣、マジでめっちゃすごいと思うよ?」

「そう」

「あたしはもう少し隠れとく。じゃ」

「あ、待って。これ」


 私は踵を返すレイさんを呼び止めた。

 そして、あるものを差し出す。


「精霊石? どしたの?」

「私には剣があるから、レイさんに持ってて欲しい」


 フオちゃんが私を回復するときに使ってくれた精霊石だ。

 宝石みたいに輝いている、きっと純度の高いものなのだろう。

 機転の利く彼女なら、きっと有効活用してくれる。

 私が持っているよりもずっといいはずだ。


「分かった。じゃあ、あたしは他に潜伏したままできることがないか考えてから向かうから」

「よろしくね」


 私は踵を返し、勇者を追って駆け出す。

 レイさんはこれまでに色々な知恵を貸してくれた。

 ちょっとマッドな方法が多いのがタマにキズだけど。

 今回だって……この双剣さえあれば……。


 片手で懐かしい剣の柄に触れると、しっくり来る持ち手になんだか泣きそうになった。

 私達はまだ、戦えるんだ。


 間に合え、棒のように言うことを利かない脚を無理矢理に動かして地を蹴る。

 音が聞こえるのは、さっきまで居た広場の方だ。

 そこで風の精霊に力を借りたあるショートカットを思いつく。


 彼らに「私のこと、飛ばせる?」と聞いてみたけど、はいともいいえとも答えてくれない。

 さすがに難しいかな、と思ったところで体が浮いた。

 ちょっとジャンプしてみたって感じじゃない。


「はい!?」


 私の体は空高く、町並みを見下ろしながら広場の方へと飛んでいく。

 これ、着地でまた力を貸してくれないと、私死ぬけど。

 高所からの着地については黒の柱でもやってるし、きっと問題ないはず。

 それよりも……。


「マイカちゃん!」


 私がその場を離れた時の状況とは一変していた。

 フオちゃんに抱かれながら、首だけは化け物に向けているニール。

 あえて体を少し小さくし、地上に降りて化け物と対峙しているクー。

 そして、その隣に立つ、肩で息をするマイカちゃん。


 マイカちゃんはまた額から血を流していて、だけど戦うことをやめる様子は無い。

 マイカちゃんとクーは、フオちゃん達が居た場所から少し離れていた。


 目覚めたばかりでまともに体を動かせそうにないニールを置いて、

 マイカちゃんがその場を離れた理由も、私には一瞬で理解できた。

 彼女がここまで必死になる理由も。


「うああぁぁ!!」


 落下する勢いを借りて、全力で化け物に剣を振り下ろす。

 真後ろから斬りかかったにも関わらず、肩から生えているオークの腕のようなもので攻撃を防がれる。

 防御に使われた腕は斬り落とせたけど、勢いはだいぶ死んでしまった。


 わらわらと生えている尻尾やら顔やらが、本体への攻撃を妨げる。

 剣に眠る炎の力と、精霊の力を借りて剣を振り切ったけど、大したダメージは与えられていないはずだ。


 化け物の動きを止めることには成功した。

 本体の首が振り返る前に、背中から浮き出るようにして生えている目がぎょろりとこちらを向く。

 体中に纏っている様々な生き物のパーツは、それぞれがちゃんと機能しているのかもしれない。


 私は背中の目と睨み合いながら、後ろに下がった。

 斬りつけてやったんだからもう少しこっちに意識を集中させてもいいだろうに。

 奴はこちらに一瞥もくれずに、マイカちゃんの背後にある民家を指差した。

 体中から生えるいくつもの腕も、それを真似るように建物を指差す。

 はっきり言って不気味な光景だった。


「さっきからなんだ。ここ、お前の家か」

「は、はぁ?」

「そうだろ。庇いながら戦っている」


 実家だから壊さないで、なんて言えるわけがない。

 マイカちゃんは静かに拳を構え直そうとしたが、結局化け物は返答なんてどうだってよかったんだ。

 嫌な予感がした私は奴に斬りかかったけど、触手のように伸びる腕に阻まれてしまう。


 化け物は上を向いて、そして家屋を覆うように火を吹いた。



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