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勇者√←ディレクション!  作者: nns
魔法と冷気と拳と勇気

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228/250

第228話

 フオちゃんはニールを後ろから抱きしめる格好で、魔力を放出していた。

 何をしているのかはすぐに分かった。

 治療の魔法に、少し火の精霊の力を混ぜて、ニールの冷えた体を温めつつ回復しているんだ。


「悪いけど、あたしらはここで戦線離脱だ」

「うん……」

「あたしはここでニールを治癒する」


 今回ばっかりは優秀な彼女の魔法を持ってしても、ニールが再び目覚めるかは分からない。

 私だって助からないとは思いたくないけど……きっとフオちゃんもそう思ってる。

 それは、私達が二人とも、普段から魔法を使う人間だから感じることだ。


 ニールを想う気持ちは、ここに居る三人とも一緒だったと思うけど、

 マイカちゃんだけは彼女がいまどんな状態なのか、ピンときていなかった。


「ねぇ、治せるんでしょ?」

「しらねぇよ……!」


 無神経に感じたのか、フオちゃんは歯ぎしりをして言葉を荒げたけど、ごめんと一言謝ると続けた。


「食った腕はどうにかなると思う。吹っ飛んだワケじゃないからな、乱暴に言うと少し抉れただけだ。

 だけど、この体は……まぁ、一つ試したいことがあるから」


 フオちゃんはニールをお姫様だっこしたまま胡座をかいた。

 彼女がニールのために試したいことならなんだって応援する。


 私とマイカちゃんは、この場に身体を落ち着けようとしているフオちゃんを見て、周囲を警戒した。

 バリアを張っただけで勇者はまだ生きている。

 何があってもおかしくはない。

 だけど、結論から言うと何も無かった。今のところは、だけど。


 何をするのか見守っていると、フオちゃんは半開きになっていたニールの口の中に指を突っ込んだ。

 意外な行動に、私は少しぎょっとする。


「あんた、何してんのよ」

「あたしの巫女の力を、体内にゆっくりと流してる」


 ニールの頭を抱えていた腕を回して指を噛ませると、フオちゃんは破れていたドレスへと

 空いた手を滑り込ませた。

 状況が状況なら本当にただの変態だけど、そんなことを言う人はいない。

 直接体に触れた方が良いのだろうと察しはつくから。


「それ、どこ触ってるのよ」

「へそに指突っ込んでる」

「特殊な変態みたいね」

「マイカちゃん……」


 変態って言う人はいないって思った直後に……もう……。


 私が密かに呆れていると、じわじわと魔力を流している様子を見ていたマイカちゃんが、

 真剣な顔をしているフオちゃんに告げた。


「一気にやっちゃいなさいよ」

「体は急激な変化を嫌う。常識だ」


 辺りにはニールの発した冷気がまだ漂っているというのに、フオちゃんは一人だけ汗をかいている。

 彼女はマイカちゃんに返事をしたけど、視線はずっとニールに注がれていた。

 調子を確かめるように、ニールの色んなところを触ってる。

 かなり際どいところも構わず触れているので、敵に見つかるのはもちろん、

 逃げ遅れた人に見つかるのもいけない気がしてきた。


 フオちゃん達に背を向け、さりげなく隠すように立ってみる。

 マイカちゃんも私の真似をして、周囲に気を配っている。

 勇者がなんらかの力を発揮して、私の結界を破ってこないことを祈りながらじっと立つ。


 不意に背後の気配が気になって首だけで振り返ってみると、ニールの顔色が

 格段に良くなっているように見えた。

 赤みが差したほっぺに、私は安堵する。

 目が合うと、フオちゃんは言った。


「多分、あたしらは大丈夫だ」


 さらに周囲に目配せをして彼女は続ける。


「それよりも、二人は自分の家や家族を確認してきた方がいいんじゃないか?」

「そうしたいのはやまやまだけど、無理だよ」

「なんでだ?」

「まだ決着がついてない。勇者が私を追いかけてきて、みんなを危険に晒すかもしれない」

「あぁ……それも、そっか」

「でも、ありがとう」


 自分だってニールのことで大変だろうに、つくづく優しい人だと思う。


「なぁラン。このあと、どうするんだ」

「どうって……」


 勇者は一時的に閉じ込めてるし、その間にどうにかして攻略法を考えるべきだとは思う。

 彼はまだ全力を出しきっていない。

 私だって、ヴォルフやウェンが居て戦いにくかったのは一緒だけど……

 それらが無力化された今も、勝てるビジョンは見えていない。


「このままじゃ、お前が勝つ確率は1%もないぞ」

「何よ、それ……」


 その言葉に反応したのはマイカちゃんだった。

 フオちゃんは慌てる様子もなく、淡々と告げる。


「二人が弱いとか、そういう話じゃねーよ。単純に、クリア条件ってやつが天と地だ」


 指摘された内容について考えてみる。

 だけど、考えるのが苦手なマイカちゃんはすぐに音を上げた。


「……え? どういうことよ。どっちが強いか、それだけじゃないの?」

「そりゃそうだけど、フオちゃんは私の気持ちを汲んだ上で考えてくれてるんだと思うよ」

「……?」

「ランは勇者を殺さずに無力化して、さらに再犯を防がなきゃならない。

 それに対して、あいつは? 条件は一つ。邪魔者を殺すだけだ」


 な? ランの方が難しいことをやろうとしてるだろ、フオちゃんはそう締めくくった。

 マイカちゃんやめて、「じゃあランも勇者を殺せばいいじゃない」って目で見ないで。


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