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勇者√←ディレクション!  作者: nns
魔法と冷気と拳と勇気

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227/250

第227話

 ヴォルフがニールを煽る理由。

 彼はニールに力を使わせ続け、氷漬けにするつもりなんだ。

 きっと、彼にとっては容易いことだろう。

 魔法の腕も確かだし、その上身体強化で、魔法を使わなくたってそこそこ対応できるし。

 あのヴォルフに、魔法で真っ当にぶつかるよりも楽だと判断されているのは何気にすごいけど。


「難儀なもんじゃのう」

「あぁ?」

「魔力自体を己の身体に行使して使用する。それは強力じゃが、身体への負担が掛かりすぎるわい」


 ヴォルフが話している最中だったけど、ニールは構わず、民家の壁から真横に氷柱を出した。

 彼はギリギリのところでそれを回避して笑う。


 私は、彼がニールにあんな話をしたのが意外で仕方なかった。

 自分がヴォルフなら、ニールの身体に負担が掛かっているなんて話はしない。

 自爆を狙うなら、このままじゃ自爆してしまうと気付いていることを、相手に知らせるメリットは無い。

 煽っているのも計算の内だと知られるのは、都合が悪くなるだけだ。


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!」

「全く、田舎には本が無いんじゃな。そんな田舎をワシは知らんが、

 きっとワシが見たこともないような田舎なんじゃろうて」

「…………………………あ?」

「いや、本はあるのか。無いのは知恵かも知れぬ。

 文字を読めないから、こんな原始人のような魔力の使い方しかできんのじゃろ」

「…………………………………………………………」


 ヴォルフが言い終えると、周囲の気温がぐっと下がった気がした。

 急激に下がった気温に身体が付いていかない。

 フオちゃんはそれなりに寒さに耐性があるだろうけど、隣にいるマイカちゃんは堪らず、

 「ちゃん!」とくしゃみをしている。何そのくしゃみ、可愛い。


「おい! ニール!」


 寒さに耐えられることと、この状況を受け入れられることは別だ。

 ニールの身体を案じたフオちゃんは、喉が千切れるような勢いで彼女の名前を呼んだ。


 だけど、私には分かる。ニールは止まらない。

 目が爛々と輝き、口元が笑っている。

 さっきまでは憤怒の表情を浮かべていたはずなのに。

 頭にきすぎて笑える、ということだろうか。


 ニールは遂に駆け寄ろうとしたフオちゃんの足元を凍らせ、近づけないようにすると天を仰いだ。


「あはははははははは!!!!」

「ぬぅっ……!」


 そして、氷柱に変化する雪玉を手中に生成しては、再び投げ始めた。

 多分、このメンツの中で一番ハロルドの民家を破壊してるのは彼女だ。

 マジでやめてほしい。


 1つの雪玉が作り出す氷柱は、さっきよりも明らかに大きくなっている。

 彼女の背中から生えている羽根も、なんだか豪華になっている。


「哀れな田舎者に、ワシが呪文を教えてやろうか?」

「あああぁぁぁ!!?!?」


 彼女の攻撃は、たまにヴォルフをかすめている。

 おそらくは、彼の想定外まで強くなりつつある、ということだろう。

 だけど、未だに攻撃は当たっていないし、彼もニールを攻撃していない。

 本気でやりあったら、身体が限界を迎えつつあるニールでは分が悪いだろう。


 それにしてもダメだ、あの魔法の使い方。見ているだけでハラハラする。

 マイカちゃんも、ただならぬ様子に気付いたらしく、

 「ちょっと、あれ、大丈夫なの……?」とおそるおそる指差している。

 大丈夫じゃないよ。


「あぁ呪文というものが何か分からんのか。本当に難儀じゃのう」

「てめぇブチ殺すからな!!!!!」


 ヴォルフもヴォルフで、よくこうも相手を煽る言葉が出て来るものだ。感心しそうになる。

 相手のキレ方と戦術に、私はぼんやりエビルKとの戦いを思い出していた。


「ニール……? どうしたのかしら……?」

「さ、さぁ……」


 彼女は急に、電池が切れたように動きを止めた。

 まさか、全身が氷漬けになって……動くことすらできなくなってしまったのだろうか……。


 私はニールに駆け寄ろうと数歩進んだところで、歩みを止めた。

 何故って、ニールが腕を首を動かして、自分の腕を食いちぎったから。


 衝撃的な光景に足が止まった。

 全身が凍ってしまう一歩手前だからか、出血の量は思ったほどではない、が……普通にグロテスクだ。

 くちゃくちゃと自分の腕の肉を咀嚼する美少女を、どんな目で見ればいいのか分からない。


 さすがのヴォルフも硬直していた。

 何故そんなことをしようか、聡明な彼は考えようとしているのかもしれない。

 だけど、()()を知っているのと知らないのとでは、導き出される結論が全然違う。

 そう、アレ。

 多分、彼は知らないだろう。


「いってぇな……オイ、クソボケハゲジジイ。そんなに言うなら呪文見せてやるよ」

「は、は……?」

「ゴージャスプラッシュ!」


 ニールは左腕から血を流しながらも呪文を唱えた。

 口の周り、顎くらいまで真っ赤になってて怖い。


 からからにひからびたヴォルフは、そっと倒れた。

 水分が無くなってその分軽くなったんだろう。

 ヴォルフが倒れたのを見届けると、ニールもその場にへたり込んだ。

 魔法が解除されたフオちゃんは、全速力で彼女の元へと駆け寄る。

 ゴージャスプラッシュ、食べたことのある生き物の水分量を自在に調整する技。

 ニール、これで対人戦で最強になったんじゃ……。


 とりあえず、終わったんだ。

 お互いに消耗したけど、まさかニールが強敵をやっつけてくれるなんて。

 私とマイカちゃんも、彼女の元へと駆け出した。


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