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善界のフェリス

☆善界のフェリス視点

 六歳の誕生日、私は叔父に連れられて小さな教会に行き、洗礼を受けた。幼いながらも誕生花の風習は知っていて、楽しみにしていた。

 両親を亡くしていた私は叔父の家の家畜小屋で死んだ様に眠る毎晩だったのに、その前日はワクワクして寝付けなかったのを記憶している。

 スミレが可愛くて良いなとか、オレンジも美味しそうだし、もしかして薔薇だったらどうしようとか、今思うと恥ずかしい。

 絶対にメリナ様には秘密です。


 私に与えられた花は翁草だった。聞いたことがない花だった。だけど、初めて貰ったプレゼントが嬉しくて、その日の夜は夢の中で両親に自慢していた。当時でも、もうすっかり顔を思い出せなくなっていた親に。


 叔父の一家は私を家族としては扱っていなかった。住まされていた場所からしてそうだったのだが、教会の手前、洗礼を受けさせない訳にはいけなかったのだろう。私の境遇は問題視しないが、自分達の儀式が(ないがし)ろにされたと思えば、教会は影で牙を剥くものだから。



 翁草の花言葉は奉仕。「貴女も周りの人間に懸命に奉仕なさい。良き道が開かれるでしょう」と、洗礼の後に教会の偉い人がそんな訓示をくれたので、私は本気にした。


 明くる日から、私は寝る間を惜しんで働いた。畑仕事も家畜の世話も、家屋の修理も。辛かった野良仕事も私に授けられた運命だと思うと楽しくて、笑顔になっていた。

 数日もすると、洗礼を受ける前は怒ってばかりだった叔父が私に感謝の言葉を伝えてきた。私は嬉しさを表すのが恥ずかしくて、やはり微笑むだけだった。


 その後、叔父だけではなく村中の人間に奉仕した。もちろん、いやらしい意味ではない。メリナ様に言うと絶対に深読みするので伝えない。


 教会の付近の草むしりや道の修繕も欠かさずやっていて、僧女と顔見知りになっていった私は、彼女に引き取られた。寝床が腐った藁から布に変わったが、私の生活は変わらない。何も変えずに奉仕して、村の人達は私を誉めてくれた。誕生花を貰って、私の人生は間違いなく好転した。



 12歳になって、私は2回目の洗礼を受けた。成人の儀である。もう子供ではなく、職に付くべき歳とされる。

 司祭と僧女は「貴女の奉仕の精神は目を見張るものがある」と、私に神学校への進学を勧めてきた。信頼する彼らに促されるままに、私は進路を決めた。



 そこで私はイジメを受ける。


 自己紹介で誕生花について語ったところ、皆に笑われた。そこで翁草の翁の意味を知る。内気だった私は下を向いて黙るしかなかった。

 ほかのクラスメートは貴族の者なら薔薇や蘭などの豪華な花、庶民出身であっても紅花や桔梗などキレイな花が多かった。羨ましくはない。むしろ、私は他人と被ることのなかった自分の花が誇らしくもあった。


 学校でも私は奉仕した。暇さえあれば汚い厠や広い庭の清掃をしていた。だから、悪目立ちしていたのだろう。

 今考えると、私は人並み以上に可愛いし、物事の覚えも良かったからやっかみもあったのだと思う。


 最初に、教会から頂いた教本や文房具が消えた。私は狼狽した。また、そんなに日を開けずに、今度は机に落書きがされた。移動教室で1人違う部屋を教えられたり、提出物を鞄から抜かれたりもした。その時点で皆の悪意には気付いた。

 それでも私は笑顔を絶やさない。奉仕も止めなかった。また好転すると信じていたから。それに、対処の仕方が分からなかった。


 半年くらい経ったある日、誰かの財布が教室で盗まれた。犯人は私ではなかったけど私にされた。庇う者は誰も居なくて、私は学校を追放された。

 初めて泣いた。悔しかったのでなくて、村の皆を、特に司祭と僧女を裏切る結果に怯えたから。でも、誰も私の涙には動かされず、私は退学になった。


 あの当時の私にメリナ様程の豪放さが有ったならばとも思う。入学前に退学って面白過ぎです。気落ちしているのではと、少し心配した私がバカでした。正直、あのタフネスは羨ましくて眩しい。

 当時の私に分けてあげたい。



 重い足取りで数日の距離の村に帰ると、司祭も僧女も別の村へ異動となっており、新しい司祭が教会の主になっていた。

 私が居なくなった事で村の人々の仕事が増え、それを不満に思った彼らと、私を学校に出した教会の2人との関係が悪くなった為だった。

 教会は厳格な性格の司祭を村に置き、性格通りに村人を厳しく指導していた。教会組織は緩んだ村の規律を正す意向を持っていたのだろう。そんな人選だった。


 そんな彼にとって、盗人の罪を負って学校を追放された私はクズ中のクズである。奉仕活動は許されず、それを期待していた村人は怠ける私に冷たい目を向けた。


 村に戻って3日後くらいに、司祭は集会で私を指弾した。


 「その者の誕生花は翁草である」「そして、裏切りの恋の花言葉の通りに、我らの想いを裏切り聖職を目指す学校で盗みを働いた」「また、翁草は何も求めないという言葉も持つ。この極端な言葉には裏がある。この娘は欲が深く、何事も求めるからこそ、逆に何も求めていないと欺瞞する卑怯な女である」


 うふふ、今、考えても酷い。

 私には誕生花しか誇れる物がなかったのに、それさえも奪われたと当時は思ったが、彼には彼なりに村の統治のために努力していた。私が戻って村の雰囲気が緩んだことを見逃さなかったのだろう。

 皆の前できつく私に当たる事で、村人が私に頼ることを禁じたのだ。


 最後に「この者に託して自らの仕事に不真面目な者は、己れ自身の精神をも腐らせるのだぞ。この者も自身で出来る範囲で仕事をすれば、自然と立ち直るであろう」と付け加えていたから。


 後に、クリスラ様のお呼び出しで聖宮を訪れた際に彼と偶然に再会し、私に気付いた彼から謝罪を貰った。大人になっていた私は「司教様の思いは当時から伝わっておりましたよ」と受け流した。それで、彼の気掛かりが一つ減ってくれていたら嬉しい。



 その日の夕方には、私は村を去った。人の視線が怖かったから。


 死のうと思っていた。山に深く入り、血の臭いで獣が寄ってくるようにと、自分の腕を傷付けた。

 そこで獣や魔物の代わりに現れたのが頭領であった。私は彼女に救われた。



―――――


 そんな頭領と対峙することになるとは運命は不思議です。

 頭領の転移先は不思議と私が予期した場所に出ますね。でも、毒釘は刺さらなくて、再転移で避けられますか。

 違和感が残ります。何故に攻撃をしてこないのでしょう……。何かの意図があるんだろうなぁ。


―――――


「翁草ですか。つまり、善界草ですね。良き花です。貴女は善界と名乗りなさい。マイア様に仕えるために生まれてきた存在みたいですね」


 頭領は私には新しい名前をくれた。表で活動する時のためにフェリスとも名付けられた。

 あの場所に頭領が現れた理由は教えてくれなかった。ただ、神学校時代から私は目を付けられていたのだと思う。暗部に入る人間は表でドロップアウトした実力者だけだから。そして、私はその中でもトップクラスに強かったから。


 死を望むほどに墜ちた人間を拾う。

 それは頭領の優しさなのか、冷酷さなのかよく分からなかった。でも、私は救われた。また楽しい奉仕の毎日がやって来た。


―――――


 私は釘を投げるのを止め、お互いに雪原に立ったのを確認してから、頭領に話し掛けます。

 

「もしかして私を油断させようとしておりますか、頭領?」


「善界は強いよねー」


 ……チッ。その舐めた口調をその姿で吐くな。


「でも、教えたのは私だよー」


 釘が投げられ、それを私は手に持つ同じ形の釘を当てて針路を変えます。武具を真似しているのが気に障ったりしませんかね。相手の怒りは行動を単純化するので有利になるのですが。

 さて、頭領は攻撃と同時の転移を取ったでしょうね。場所は背後かな。


 私の美しい回し蹴りは腕でガードされました。

 うーん、メリナ様みたいな化け物パワーが欲しいなぁ。


―――――


 暗部で訓練を受けることで、私は魔力的に成長する。素質が開花したのだ。

 主な仕事は王都の情報局の犬を狩ること。

 犬というのは隠語でスパイを意味する。私は彼らを炙り出したり、殺したりを熱心に繰り返した。それが頭領の求めた私の役目だから。

 毎日が充実していて、笑顔に溢れる幸せな日々。

 今も頭領には感謝の気持ちしかない。


―――――


 頭領が初めて反撃をしてきました。

 狙いは私の腹で、左からの蹴りは囮。


 受けましょう。


 グサッと私の腹に、頭領の暗器が刺さります。拳に隠して放つ刺突用の武具です。


 やはり刺すだけで切り裂く動きはありません。私を殺したくないのでしょうか。


「私に毒は効きませんよ? 忘れましたか、頭領?」


 魔法の発動には通常、詠唱が必要です。優れた術者になると無詠唱での発動が可能になりますが、それでも発動したいという意思が最低限には必要です。でも、エリートである私はその先の常在発動にまで達していて、常日頃から解毒魔法の効果に守られています。

 稀有な能力だけれども、体内の魔力が筋力を補強していることと実は同じような現象なので、私にとっては普通の事です。


 頭領には回復魔法を常在化することは止められています。私が人間でなく魔物、或いは魔族になるからと。私は素直で良い子なので守っています。


「そうでしたね」


 チッ。その口調で私の腹を刺していると、少しだけ悲しい気持ちになりますね。


 魔法の常在化は暗部だけの秘密。しかし、クリスラ様は気付いていらっしゃいますね。ビャマランを、倒したはずの彼を何回もお殴りで、恐らくは彼の常在魔法を停止させようとのご意志を感じました。


 あんな方法が有るのかと感心します。クリスラ様は魔力の流れが断ち消える特別なポイントをお探しでした。


 体内の奥深くに魔力が湧いてくる点が有ります。その場所は各人で異なり、頭部の真ん中に持つ者が多いのですが、胸や背中の者もいます。その一点を正確に撃ち抜くと、魔力の流れが一瞬だけ止まります。

 でも、大概の人間はそこを正確に穿たなくとも、脳に深いダメージを受けるので死にます。


 クリスラ様は打撃の後に鋭く魔力を飛ばして、その一点を魔力だけで貫こうと試行錯誤されているように思いました。そうすれば、殺さずに済むことも有り得ますから。戦いの中で独自に見いだされたのでしょう。認めましょう。あの人も私くらい天才だと思います。


―――――


 情報局の犬を大量に排除した事がある。頭領でさえ気付かないくらいに巧妙に、暗部の中に浸透していた彼らを私は1人で仕留めた。

 私の動きを気取られないように、仕事が完了するまで頭領にも秘密にしていた。感謝はされたが、同時に仲間を勝手に殺し回ったことを咎められた。やり過ぎたらしい。こちら側から情報局に潜入していた何人かが報復で消えたと聞いた。


 結果、暗部としては閑職である聖女付きの担当に回された。そこでクリスラ様と出会い、自分の意思を抑えてデュランの街の為に行動する彼女の精神に感銘を受けた。また、頭領を除いて自分より強そうな人を初めて発見したとも感じた。


 任された仕事は暗部と聖女の連絡係。簡単な仕事だった。

 聖女によっては暗部の存在を疎んで遠避ける方もいたらしいが、クリスラ様は気にすることなく、私を通じて暗部の情報を利用していたし、政治的に必要な場合は他の街を貶める行為を暗部に依頼したこともある。


 任務に就いて間もない頃、クリスラ様からプレゼントを貰ったことがある。翁草の根だ。育ててみたらと言う。

 実は私は自分の誕生花を見たことがなかった。

 その日のうちに鉢に植え、世話をした。


 最初の洗礼の前日以来のドキドキが訪れた。どんな花が咲くのだろうか、老人のようにクシャクシャで茶色い花だったら苦笑するしかないな、とか。


 毎日の世話もあって、芽は育ち、茎も伸びて、遂には無事に蕾が開いた。

 赤茶色の花で、でも、存外に悪くない草だった。花が若干垂れている姿がお辞儀をしているみたいで、私は同じように頭を下げてみた。うん、こういうのも悪くないと思った。



 丁度クリスラ様との息もあってきた頃で、その日、「フェリス、嬉しそうだけど何かありましたか?」「有りましたが秘密です」「……結婚なら私が取り仕切り致しましょう」と会話をしたのを覚えている。クリスラ様は自身が結婚していないため周りがその手の話を振らないことを気にされていた。


 今ではクリスラ様を真の主人だと思う程に、私はクリスラ様に心酔している。そもそも暗部は聖女を支えるというのが組織目的だから間違っていないし。

 でも、頭領への感謝も忘れてない。私はとても義理堅いから。


―――――


「頭領、死ぬ気ですか? 攻撃が生温いで御座います」


 私は腹の痛みを我慢して、至近距離にいる元上司に尋ねます。彼女が本気なら暗器を通じて魔力を放ち、私を内部から破壊する事もできるはず。


「……永遠の命を持っても、死の恐怖とは別の恐れに襲われましたからね」


 死にたいって事でしょうか。それとも、私を惑わす策でしょうか。


「じゃあ、私の釘を避けないで下さいませんか?」


「正直、それも怖いのです」


 我が儘でございます。メリナ様と同じくらいですよ。二撃目の暗器を使った攻撃が、今度は横腹を刺します。


「善界……貴女も死にたいのですか?」


 敢えて避けなかった私に頭領は尋ねてくれました。


「申し訳御座いませんが、死ぬ気はサラサラ御座いません。今日で頭領とも最後かと思うと感慨深くてですね、つい殺すのが遅れてしまったみたいです。私の恩人ですからね」


 私はにっこりしたと思います。癖ですね。

 神学校での苦難で身に付いたものです。……当時は効果がなかったのが皮肉です。


「不遜ですね。そして、非効率で愚かです」


 こちらも速攻を決めようとしたんですよ。でも、奇襲を掛けようとしたらメリナ様の氷の槍が襲ってきたのです。頭領だけでなく、私が姿を現そうとしても関係なく氷が飛んできてビックリしました。あの人、高性能の魔力感知が使えるのに全く容赦無しでした。才能のムダ使いです。


―――――


「善界、諸国連邦での諜報活動を担当しなさい」


 クリスラ様が聖女を退任され、私の役目も満了し、新たな任務が与えられた。その内容は意外だった。

 デュランの地から離れて敵国に入るということは珍しいことではない。しかし、諜報活動という末端が担う仕事を高序列の私に任せるのは不可解で、もう私の存在が不要と言い放つも同然だと感じた。

 それどころか、もう既に表で顔の知れた私を犬に使うなんて、死地に赴けと命令されたのだと解釈しても良い。


 でも、私は拒絶しない。求められた仕事は何であっても楽しく務めるのが私のモットーだし。

 細かいことだが、いつもはあった労いの言葉がなかったのが寂しかった。私が頭領よりも聖女だったクリスラ様を選んでいることを悟られたかなと、当時は感じた。


 この頃には頭領の中にヤナンカ本体の意識が入り込んでいたとの話だから、性格も変わっていたのかもしれない。


―――――


「頭領の雅客(がかく)とは水仙のことでしたよね」


 広がる痛みを堪えて私は喋ります。顔に汗が滲んでいないか心配ですね。それはカッコ悪いです。


「水仙の別名に雪中花っていうのも有ったように思いますが、頭領は雪がお好きだったんですか?」


「そうだよー。雪も冬も好きだったよー。水仙は雪の中で咲くしねー」


 その口調はバカにしてるのですかね。メリナ様以上にバカになったのですかね。


「じゃあ、殺しますね」


 私が毒釘を飛ばすと頭領は消えました。私の首の上に転移ですか。


「やっぱ、死ぬの止めたー。怒ったら弱くなるよねー」


 言いながら、頭領はわたしの首の後ろにダガーを差し込んでいました。あら、それを見たメリナ様が動かれましたね。私を心配してくれたのでしょうか。


「いえいえ、ちゃんとお導きしますからねー」


 私は頭領の頭へと、更に上から釘を刺します。頭領が刺している私は残念ながら幻影です。私の転移は残像を残す珍しいタイプ。魔力的な説明を学者の誰かに聞いたけども、もう頭の片隅に追いやっています。説明しろと命じられたら、勿論出来ますよ。

 あの幻影、頭領が知らなかった訳は無いんだろうけど、私の技量の成長を報告されていなかったのかな。



 ナーシェルに左遷されて、私は今まで以上に技の切れを磨いた。もう一度デュランに戻り、クリスラ様に奉仕するために。

 そして、私の見張りだった第三序列の早乙女のルーフォはそれを本国に報告していなかった。恐らく、彼も頭領を見限り始めていたのかもしれません。諜報の監視なんて彼の能力の無駄遣いですから、他に仕事が欲しかったでしょう。



「瞬きする間もなくの早業、見事でした」


 完全に魔族の急所を貫いたのに頭領は私に話し掛けました。


「最後まで生死をお迷いでしたね」


「それを断ち切って頂き、雅客はフェリスを救って良かったと思います」


「私も貴女に救って頂き、感謝しております」


 私の最後の言葉は聞こえたかな。その顔を隠す布の奥で笑ってくれたでしょうか。



 私が雪の上に舞い降りた瞬間に、頭領は爆散します。これは私が魔力の湧く頭部の奥を刺したから。

 そこが魔族の弱点。内部からの魔力暴走です。特別に異質な魔力がそこに触れると、魔力の制御を失って体内の魔力の流れが乱れるのです。


 結果、頭蓋骨が粉々になる程の勢いで脳が膨れたり、腕が木っ端微塵に吹き飛んだり、手足の関節が千切れるくらいに逆に曲がったりします。人間も同様です。


 急所の特定と、暴走させるための魔力の質を細密に調整する必要があって大変に難しい技なのですが、私は天才なので余裕です。

 ナーシェルで王都の元情報局員狩りをしている時に練習しました。いっぱい爆発させました。



 クリスラ様も、この領域に来るのでしょうか。そうすると、拳、いえ、指先一つで敵を爆発させる危険な人が出来ますね。控えて頂くためにもイルゼさんの地位を安泰にして元のクリスラ様に戻って頂きましょう。



「ショーメ先生、強いですね。お疲れ様です」


 メリナ様が私の勝利を祝ってくれました。恩人を殺した感傷は見せない方が良いでしょう。

 でも、今日は少し寝るのが怖いです。


「ところで、前に私と戦った時は手加減していたんですね。許せないです。どっちが強いかはっきりさせましょう。ショーメ先生が調子に乗った姿なんてレジス教官も見たくないでしょうしね。さぁ、構えてください」


 ……困った生徒さんですねぇ。いつまで私を先生と呼ぶつもりなのかな。


「お腹が凄く痛いので勘弁して貰えますか? あっ、メリナ様が受けるテストももうすぐですよ」


「……私もお腹が痛くなってきました」


 容易いです。

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