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最強冒険者のグルメ旅 ~据え膳も残さずいただきます~  作者: ひだまりのねこ


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第五十六話 従魔登録

 

「よし、そろそろお昼時だ。食べる前にギルド行くぞ」


「ギルド? なんで」


「あ、もしかしてドラコの従魔登録ですか?」

「その通りだファティア、今後ドラコを連れて行くなら登録しておかないと街に入れなくなってしまうからな」


「ねえ! 従魔登録って何? そういえば街で色んな魔物見かけたけど、登録すれば魔物をペットに出来るの?」


「ハハハ、彼らは魔物を飼っているんじゃないぞチハヤ。テイマーという職業だな」

「ていまー?」


「うーん、そうだな……わかりやすく言えば魔物使いだな。彼らは自らが戦うというよりも、魔物や魔獣と心を通わせることが出来る特殊な能力を使って仕事をしている。数は少ないが冒険者として活躍しているテイマーもいるぞ」

「ふーん? でもあんまり強そうな魔物を連れているようには見えなかった」


「戦うテイマーというのもいますけれど、ほとんどのテイマーさんは、農作業や荷物運びなんかの力仕事をするみたいですよ。手紙なんかは、飛行系の魔物を従魔にしているテイマーさんの独壇場ですしお給料もすごく良いって聞いたことあります」


 ファティアが補足してくれたが、通信系はやはりテイマーが強い。馬よりも速いし、何より自分が一緒に同行する必要がないのが強みだ。必要コストも餌代くらいだから、その分人件費として上乗せされる。


「騎士団や外交でも偵察などの任務で活躍できるし、そもそもテイマー自体の数が少ないから王国内はもちろん、どの国でも法的に優遇されているんだ。契約できる魔物にもよるが、比較的安全で高給、都会でも田舎でも職には困らないんじゃないかな」


「へえ……テイマーってすごいんだ。でも……私、別にテイマーじゃないのに大丈夫かな?」

『うにゅう……』


 不安そうにドラコを抱きしめるチハヤの顔をお返しとばかりにペロペロ舐めるドラコ。


「問題ない。テイマーは登録制の自己申告だ。ちゃんと言う事を聞く魔物を連れているという事実だけが必要なだけで、特別な資格やスキルは必要ない。登録しただけでお金がもらえるわけでもないから嘘をつくメリットもない。直接金にはならないが、登録しなければ魔物を街へ連れ込むこと出来ず仕事も出来ないから登録しない奴はいないけどな」


「じゃあ、ドラコも登録すれば一緒に旅を出来るんだよね?」

「もちろんだ。人々を不安にさせないようにするため、首輪などの定められた所定の目印を装着することが条件にはなるがな」



「従魔か……フレイガルドの魔法使いは使い魔を持つことが一般的だから、懐かしいな」


 黙って窓から遠くを眺めていたリエンがボソッとつぶやく。


 それはすごいな。どんな光景なのか一度行って自分の目で見てみたかった。


「リエンも当然使い魔を持っていたんだろ? 今はどうしているんだ?」

「帝国に捕まった時点で契約解除して逃がした。私が死ぬと彼らも死んでしまうからな……」


 言った瞬間後悔した。考えてみれば当たり前のことだ。


「すまん……余計なことを聞いてしまったな」

「気にするな。使い魔ならまた集めれば良い。だが……たしかな絆を結んだ者たちだ、無事生き延びてくれていれば良いんだがな」


 使い魔を使えば逃げられる可能性もあったかもしれないのに、逃がしたんだな……。心優しいリエンらしい行動だ。


「あ、そういえば前にチハヤさんが見たがっていた竜騎士なんかもテイマーの一種なんですよね?」

「ああ、他国のことだから詳しくは知らないが、竜騎士になるためには生まれ持った資質が必要らしいから、似たようなものなのかもしれないな」

  

「ところでファーギー」

「なんだチハヤ、まだわからないことがあるのか?」


「ん、ドラコをどうやってギルドに連れて行くのかなって?」


「…………」

「ファーギー?」


「…………リエン、何とかなるか?」


「あはは、私のローブでも被せておけばいいんじゃないか?」


 なるほど名案だ。チハヤが抱っこしていれば、大きめの赤ちゃんにしか見えないはず。


 まだ小さくて助かった。


「ついでに認識阻害をかけておくよ。気休め程度の効果しかないけど」

 

 魔法万歳。





「お疲れローラ」

「ローラ!!」

「遊びに来たぞローラ!!」


「これはファーガソン様、チハヤ様にリエン様方もいらっしゃいませ~!!」


 今日の昼当番はローラか。


「従魔登録をしたいんだが」

「え? 魔物の登録ですか? 本日連れてらっしゃいます?」

「ああ、実はこの子なんだが……チハヤ、ドラコをこっちへ」


「ドラコ、出てきて良いよ」

『うにゃう?』


 良い子に大人しくしていたドラコがひょこっと顔を出す。 


「え……ええっ!? きゃああ!! 何ですかこの可愛らしい生き物は!! さ、触っても良いですか?」

「ドラコ、ローラが触りたいって」

『ろーら? さわる?』


 つぶらな瞳でじっとローラを見つめて体を差し出すドラコ。


「はうっ!? おしゃべり出来るの? はああ可愛い!! もっふもふ」


 ドラコは人を駄目にするな。可愛すぎる。


 フレンドリーではあるが、仕事中は決してプロフェッショナルな態度を崩さないローラがこんなにメロメロになるなんて……。


「なあリエン、まさかとは思うがドラコのヤツ、魅了の力とか持ってないよな?」

「……ファーガソン、よりにもよってお主がそれを言うとはな」


 リエンにジト目で言い返されてしまった。ん? どういう意味だ?



「ドラコちゃんの受付、ここでも出来ますけど、申請の認可はギルドマスターの権限ですから、直接行って頼んだ方が早いですよ」


 なるほど、たしかにその方が早そうだな。




「――――というわけで、ドラコを登録しに来た」


 普通、ギルドマスターの部屋って滅多なことでは入れないんだが、ここでは毎日入り浸っているような気がする。今更だが。


「ははは、私も長年生きているけど、すごいなあ……こんなの見たことないよ。この子……一応竜なんだよね?」

「ああ、あの卵に入っていた子だ」


「ふーん……でもあの卵まだまだ生まれる気配全くなかったのに一体どうやって……ああそうか、チハヤちゃんか!!」


 エリンは納得がいったのか、満足そうな表情を浮かべるのだった。

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