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最強冒険者のグルメ旅 ~据え膳も残さずいただきます~  作者: ひだまりのねこ


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第二百三十四話 もっと先へ


「お初にお目にかかります、辺境伯家五男ヒューイと申します殿下」

「頭を上げてください。貴方のことは先生から聞いています」


 口調は丁寧だが不機嫌そうに冷たい視線を送るセレスティア。


「ね、ねえファーガソン、殿下に変なこと吹き込んでないよね?」


 ヒューイは冷や汗をかきながらファーガソンに助けを求める。


「さあな? それよりもこうして直接話すのは久しぶりだなヒューイ?」



 当主を討たれ、主要な者たちも次々と降伏したため、反乱は戦闘開始する前に未然に終わった。


 セレスティアは、ヒューイを臨時の辺境伯代理に任命して現在事態の収拾を図っている。ライアンを止めるだけならファーガソンでも出来たかもしれないが、王族で国民の英雄である彼女がこの場に居なければここまでスムーズにはいかなかっただろう。



「しかし二人だけで乗り込んでくるなんて……無茶したね?」

「ははは、さすがに二人だけじゃないさ。万一に備えて各所に仲間を待機させていた。まあ……結局出番は無くてそれはそれで良かったが」


 そういうことじゃないんだけどね、とヒューイは心の中で呆れる。


「ところでさ……ファーガソンと殿下はどういう関係なんだ?」


 ヒューイは自宅に避難していたので一連の騒ぎを目撃していない。先ほどからファーガソンとセレスティアの距離がやたら近いのが気になっていたのだ。


「ああ……それは――――」


 なんと説明したものか? ファーガソンは一瞬返答に困ったが――――


「最愛の婚約者です」


 セレスティアは満面の笑みで見せつけるようにファーガソンと腕を組む。


「へっ!? こ、婚約者!? ええええええっ!?」


 ヒューイの絶叫が辺境の空に消えていった。




「というわけだからヒューイ、お前が次の辺境伯な」

「はああああ!? 嫌だよ面倒くさい、第一俺は自由気ままな冒険者――――」

「そうですよね、加担していなかったとはいえ家族が犯罪を企てていることを知りながらろくに阻止する努力もせずに甘い新婚生活を満喫していた方は言うことが違いますね。先生のご友人ということで今回は大目にみておりますが、本来であれば極刑は免れないんですが……。私も王都へ戻ってから事後処理とかそれはもう大変なんですけれど……まさか大恩を受けながら自分だけは好きなことをしようとか……さすがにそんな方ではございませんよね、ヒューイ?」


 女神のような笑顔の裏に圧倒的な圧を乗せてセレスティアに念を押されれば断ることなど出来るはずもない。


「は、はい……身命を賭して励む所存です……」


 全身から冷や汗を流しながら震えるヒューイ。


「ふふ、引き受けてもらえて良かったです。では早速ですが、革新派の貴族たちの身柄を拘束して王都へ移送お願いしますね」

「か、かしこまりました。近日中に必ずや」

「今日中にお願いしますね」

「え?」

「今日中と言いましたが聞こえませんでしたか?」

「は、はい!! か、かしこまりました!!」


 セレスは決して怒らせてはいけない……走り去るヒューイの背中を見ながらファーガソンはあらためて心に誓うのであった。


◇◇◇


「疲れただろうセレス?」

「先生……私は大丈――――いえ、ちょっと疲れたのでぎゅっとしていただけませんか?」


挿絵(By みてみん)


 最近のセレスは、二人きりになるときまって頬を染め甘えたような上目遣いで見つめてくる。こんな彼女をヒューイが見たら驚くだろうが、こんなに可愛い俺の女神を誰にも見せるつもりはない。

 

「わかった、おいでセレス」

「はい!!」


 胸に飛び込んで来たセレスを受け止めてぎゅっと抱きしめる。抱きしめられながら頭を撫でられるの好きなんだよな。


「んふふ~。ねえ先生……これでしばらくは平和が続くでしょうか?」


 セレスは気持ち良さそうに目を細める。


「そうだな……フレイガルドが復活したことで帝国とは国境を接することが無くなった。北部のヴァルガンドも当分は南下する余裕は無いだろう。国内も王弟派に続いて革新派も崩壊。あとは帝国がどう動くか次第だが、少なくとも春までは大きな動きはないと思う」

「ヴァルガンドは獣人の王を擁立支援していこうと考えています。帝国に関しては……先生も同じ考えでしょうけれどこちらから先手を打って動くべきだと考えます。帝国に関しては受け身で動くのは悪手です」

「ああ、俺もそう思う」


「帝国さえなんとかすれば……私は先生と晴れて結婚できるんですよね?」

「え? そ、そうだな……それは俺が決めることではないが、少なくとも先延ばしする理由は無くなると思うが……」

「ですよね……先生、明日帝国を討ちに行きましょう!!」


 真顔でとんでもないことを迫ってくるセレス。彼女の真剣な表情を見れば冗談である可能性はゼロだ。まるでデートに誘うような感じで帝国に攻め込むつもりなのがらしすぎて笑ってしまう。


「気持ちはわかるが落ち着け。さすがに明日は無茶だろ? それに明日はセリーナと一緒にキラーアントの駆除に行く日だからな?」

「ああ、そうでしたね……では明後日にしましょう、ね、先生?」


 吸い込まれるような揺れる瞳に見つめられると言葉を失ってしまう。彼女の熱がその肌を通じて伝染してくるのがわかる。その張りのある艶やかな唇は早く触れて欲しいと誘惑してくる。


「わ、わかった、とにかく俺たちだけで決められることでもない。後で皆の意見も聞いてから決めよう」


 ごくり。理性が飛びかけるのを懸命に押さえながら、それだけ伝える。


「……わかりました。お話はこれでおしまいにしましょう……だから……ね?」


 可愛いおねだりの後、セレスはまるで熱に浮かされたように唇を重ねてくる。


「……はあっ……私……先生ともっと先へ行きたいです……他の皆が羨ましいんです」


 泣き出しそうな表情に胸が締め付けられる。


「……俺も同じ気持ちだよセレス」

  

 たしかに俺もこれ以上我慢することは難しい。


「やはり今から帝国行くか……」

「まあ……先生ったら……」


 少しだけ背中に回した両腕に力を入れて――――貪るようにセレスの唇を奪い返すのだった。

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