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最強冒険者のグルメ旅 ~据え膳も残さずいただきます~  作者: ひだまりのねこ


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第二百二十話 やり残したこと


「そういうわけだからサクヤ、お前さえ良ければ俺は――――その褒美、喜んで受け取らせてもらうつもりだ」

「ファーギー……ありがとう」


 ようやくいつもの笑顔が戻ったサクヤ。礼を言うのはこちらの方だよ。


「うむ、そうとなったら善は急げじゃ、すぐに寝所の準備を……」

「ま、待て、サクヤ、お前年はいくつだ?」

「今年で十五になるが?」

「まだ未成人じゃないか!! 駄目だ来年まで待て」

「なっ!? 子ども扱いするな!! この国ではもう成人じゃ!!」


「サクヤ、諦めな、ファーギーはこういうところ頑固だから」


 チハヤがため息をつきながら失礼なことを言う。まるで俺が悪いみたいではないか。


『ふふふ、私からみれば赤ちゃん以下』

『ですね。サクヤさま、ファーガソンさまのお相手は我々大人の女にお任せを』


 セリカとアリス基準で言えば俺を含めて全員赤ちゃんだがな……


「きぃっ!! なんだか悔しいのじゃ……」

「焦ることは無いさ、それよりも少しずつお互いのことを知ってゆく方が大事だろ? 一緒に出掛けたり食事したり。俺はそれがとても楽しみだよサクヤ」

「むう……逢引を重ねるということか。わからぬではないが……」


 理解しつつもまだ少し不満そうなサクヤの頭を撫でる。


「じゃ、じゃから子ども扱いするなと言っておろうが……ま、待て、べ、別に嫌だと言っているわけではないからなっ!! や、止めたら怒るぞ!!」

 

 難しいお年頃だな。よし――――


「うにゃっ!? い、いきなり何をするっ!!」


 おでこにキスしただけなんだが……


「悪かった、刺激が強すぎたな」

「そ、そんなわけあるか!! 接吻というのは――――唇にするものであろうが……ちょっとだけ驚いただけじゃ!?」


 真っ赤になったサクヤの瞳がぐるぐる回っている。


「姫さま!! 呪術が発動しかかっておりますぞ!!」


 後ろで控えていた家臣が鋭く声を発する。


「へ? あわわわ、危なかったのじゃ……」


 もしかして俺、気を付けないと結構危険なんじゃ……?


「す、少しずつ慣らしていこうな、サクヤ」

「……そうじゃな、初夜でお主を殺すわけにはいかんからな……」


 うおっ!? しゃ、洒落にならない。


「ね、念のためチハヤに一緒にいてもらうのも……」


「は!? 馬鹿なの!? 殴られたいのファーギー!?」


 どうもチハヤはこういうことに抵抗があるみたいだな。おそらくは生まれ育った文化、環境の違いだろう。


「チハヤも少しずつ慣らしていこうな」

「ば、馬鹿じゃないのっ!? し、死ね、死んでファーギー!!」


 ……真っ赤になったチハヤにめちゃくちゃ殴られた。なぜだ?


『よしよし……私が一緒にいてあげるからね』

『はい、私もご一緒します!!』


 セリカとアリスが慰めてくれる。


「まったく……そうやってすぐに甘やかすんだから……」

「……チヤハも大変じゃな」


 ジト目でため息をつくチハヤをサクヤが慰めている。なんだか俺が完全に悪者――――いや、俺が悪いんだろうな……。




「本当にありがとね、セリカ、アリス」

『良かったねチハヤ、見せてもらった料理再現してみる』

「うわっ!! めっちゃ楽しみ!!」

『うん、期待してて』


 セリカはチハヤの記憶で見た料理をすべて再現するつもりらしい。俺も今からワクワクしている。


「ところでアリス、ちょっと聞きたいことがあるんだが?」

『何でしょう?』

「実はゲートについて確認したいんだが――――」




「こんな遅い時間に皆に集まってもらったのは大切な話があったからだ」 


 ミスリールに戻った俺は、パーティメンバーに集まってもらっていた。


 誰一人不満を漏らすことなく真剣に聞こうという姿勢を見せてくれていて感謝しかない。


「ここミスリールに滞在できるのもあと少しだ。その後は当面の目的地であるウルシュに向かい、その後王都へ向かうつもりだが――――その前に、済ませておきたいことがある」


 全員の視線が俺に集中し続きを促す。


「一つはセリーナが依頼してきたキラーアントの駆除だ。まだ時間に猶予はあるらしいが……今後のことを考えると放置しておくのは得策ではない。転移が容易なミスリールに居る間に済ませておいた方が良いと思っている」


「ちゃんと覚えてくださっていたのですねファーガソンさま……」


 感激の表情を見せるセリーナ。おい……俺はこれでも白銀級冒険者だぞ? 他のことならともかく依頼に関して忘れることなどあり得ない。いやちょっと盛り過ぎたな……うむ、滅多にない。


「当たり前だろセリーナ、それにキラーアントは本当に危険だ、下手をすれば街が地図から消える」


 それでもなかなか対処できないのは危険度が非常に高く、依頼を受けられる冒険者がそもそも少ないということ、高位の冒険者や騎士団が戦線に駆り出されていて余裕がなかったこともある。俺も今は良いが、今後の展開次第では余裕が無くなるかもしれない。


「ごめんなさいセリーナ……私にもっと力があれば……もっと早く対処できたのですが……」


 通常キラーアントの駆除は騎士団の仕事――――というよりも、他に対処できる存在がいないと言った方が正確だ――――セレスが申し訳なさそうに頭を下げるが、騎士団とて遊んでいたわけではない、人手も時間も限られている中で出来ることには限界がある。


「セレスティアさまは悪くないです。北部戦線で敗れるようなことがあれば、街どころか国が危うかったのですから」 

「そう言ってもらえると救われます。もちろん今回の件は私も協力しますよセリーナ」

「セレスティアさま……!!」


「いや、セレス、今回は俺とセリーナの二人で行く」

「え? ですが皆で協力した方が――――」


 たしかに皆で協力した方が簡単かつ安全に駆除できるだろう。だが――――


「この件は俺個人がギルドを通じて依頼されたものだからな。それにセリーナの実績を積み上げて金級へのランクアップへ向けて丁度良いチャンスだと思っているんだ」


 パーティメンバーに手伝ってもらうこと自体は問題ないのだが、実績ポイントを人数分で割ることになってしまう。


「なるほど……そういうことでしたら」


 頭で理解は出来ても不満そうだなセレスは。まあ……騎士団に要請が届いていたのに対処できなかった負い目もあるのだろうが……


「それもあるんだが、セレスたちには別件で協力してもらいたいんだ」

「別件……ですか?」


「ああ、これから話すのがもう一つの目的だ。むしろこっちが本命だと言ってもいい――――」


 本当はもっと後になると思っていたんだがな――――状況が変わった。




「俺は――――帝国に占領されているフレイガルドを開放するつもりだ」

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