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最強冒険者のグルメ旅 ~据え膳も残さずいただきます~  作者: ひだまりのねこ


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第二百十七話 サクヤ姫

「いやはや、危ないところであった。助太刀感謝するぞ。私はこの国を治める領主の娘サクヤ。何か礼をしたいのだが……」


「待ってました!! それならホズミください!! たくさん!!」

「お、おう……威勢の良い娘じゃな。わ、わかった、その程度ならなんということもない、用意させるので屋敷まで来てもらえると助かる」


 先ほどからチハヤと助けた少女が何かを話しているのだが――――さっぱり言葉がわからない。


 あの言語能力もチハヤの能力なのだろうか?


「アリスはわかるか?」

『はい、私は言語ではなく思念を言語化して理解しておりますので言葉の壁はございません』


 そうだったな。そもそも心を読むから言語すら必要無かった。


『ホズミ……くれるって』


 セリカもわかるのか……まあ古代竜だからな。


『良かったねファーガソン』

「ああ、そうだなセリカ、なんとかなりそうで良かった」


 ああ、俺の古代竜はかわいい。


『私のファーガソンもかっこいい……よ?』


 頬を染めるセリカをそっと抱きしめる。


「ファーギーなに隙あらばイチャイチャしてんの!! 早く行くよ」

「お、おう、ありがとなチハヤ」

「ふふふ、すべてはお米を手に入れるため!! 我が覇道を阻むものがあるならば、すべて燃やし尽くしてやる――――セリカが!!」


『えっ!? 私……?』

『チハヤさま、カッコいいです!!』


 動揺するセリカと憧れの眼差しで見つめるアリス。


 ち、チハヤが……燃えている!!




「これは……すごいな」


 ホウライの街並みに目が奪われる。


 大陸のどの国とも違う建築様式、木造が中心で柱一本にも繊細な意匠が施されていて非常に興味深い。


 使われている文字も独特で、俺の目からはまるで古代魔法文字のようにしか見えないが、なんというかカッコいい雰囲気がある。文字そのものに力があるように感じられるのだ。


 街の風景も異なるが、人々の容姿もかなり違う。


 大陸とは違ってあまり明るい髪色の人間がいない。チハヤのような黒髪とまではいかないが、それに近い灰色や濃い茶色。そしてアリスが言っていたように見たこともないような種族も普通に歩いている。


 また武器や装備も見たことが無いものばかりだ。


「ふふ、なんか城下町っぽい。あ!! なんか団子みたいの売ってる!! あああ、あのお店入ってみたい~!!」


 チハヤが楽しそうに街を眺めている。やはり母国の雰囲気に似ているのだろうか?


 俺も色々寄ってみたいところだが、今はホズミを手に入れるために屋敷へ向かわなければならない。




「姫さまがお戻りだ!! 門を開けよ!!」


 さすが国を治める領主の屋敷だ。燃えるような赤い塗装が施されていて巨大で荘厳、実用性よりも芸術性に重きを置いているように感じるが、それは俺が知らないからそう思うだけなのかもしれない。


 門番が門を開くと、屋敷の中ではずらっと居並ぶ家臣や使用人たちが出迎える。 


 俺たちのような明らかに異国の者が居ても好奇の視線すら向けてこない。相当教育が行き届いている証拠だろう。



「あらためて自己紹介させてもらおう。ホムラ国領主が娘、ホムラ=サクヤじゃ」


挿絵(By みてみん)


 おお……本当に言葉の意味がわかるぞ。


 実はアリスの力を借りることで言葉がわからなくても意味が通じるようになっている。  


 ふむ、ということはサクヤは大陸で言えば王女ということになるのか……? 


 見た目の雰囲気はチハヤと同じくらいの年頃だろうか。やや暗めの灰色の髪を不思議な髪飾りで留めている。一番目を引くのは瞳に文字のようなものが入っていることだ。


 フィーネのような魔眼だろうか? 少なくともサクヤ以外の人間はこんな目をしていなかったから、彼女が特別なのかもしれない。



「そなたたちのおかげで無駄な血を流すことなく刺客を捕らえることが出来た。実に見事な手腕であったゆえ、褒美を取らせる――――希望はホズミということで間違いないかチハヤ?」

「うん、間違いない」

「ふふふ……お前は面白い話し方をするな。よしわかった、すぐに用意させよう。必要であれば指定の場所まで運ばせるが?」

「ああ、大丈夫だよ、ファーギーがたくさん入る魔法の袋持ってるから」

「ほう、そのような便利な袋が!! ファーギー、良かったらその袋、私にも売ってくれぬか?」

 

 魔法の袋に興味津々のサクヤ。


「すまないサクヤ、この袋はとても大事なもので手放すことは考えていないんだ」


 エレンにもらった伝説級の魔道具だからな。


「気にするな。それほどの品、簡単に手放せるはずもない、なに、言ってみただけじゃ。それよりお主――――この私の前でも手を放さないとは……よほどその女子のことが大事なのじゃな?」


 う……やはり気付くよな。


 アリスの力を借りるには体の一部が接触している必要がある。一番健全な形ではあるのだが……どうみてもいちゃついているようにしか見えないのが難点だ。


「ああ、大事なんだ」

「ふぁ、ファーガソンさま……」


 サクヤは大いに笑っているし、アリスは真っ赤になって震えている。チハヤは――――相変わらずジト目だな。

 

『……私は?』


 せ、セリカ!? いつの間に俺の膝の上に……!?


「もちろんお前も大事に決まってる」

『えへへ……』


 く、本当に可愛いな、この古代竜さまは!!



「くくく、なるほどな、なかなか甲斐性のある男なのじゃなファーギーは。ほれ、チハヤも遠慮せず甘えればいい」

「そう? じゃあお言葉に甘えて」


 チハヤまで飛び込んで来た。


 というか大丈夫なのかこの状況……いかに教育された家臣でもさすがに怒られそうだが。


「あはははは、これは愉快じゃ!! ファーギー、私も所望するぞ」


 なぜサクヤまで来る!?


「肩車でもするか?」


 女子に大人気肩車、ここホウライで通じるかわからないが……。


「おおっ!! 肩車か、憧れていたのじゃ!!」


 どうやら肩車の魅力は国境を越えるらしい。それにしても……面白い王女さまだな。


「うむ、この乗り心地、安心感……最高じゃ」


 どうやら気に入ってもらえたようで一安心だ。

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