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左手


「あっ!」




短い呟きと共に。

白い輝きが走る。


ビィー…… ン……


と、金属の唸り。

それは。

刀。


日の光を。

反射するそれは。

息を飲むほど。

美しい。


鍛え上げられ。

磨き抜かれた。

見惚れるほどの。

至高の輝き。


私は。

うっとりと。

見とれた事だろう。


それが。

私のひげを。

掠めるほど。

近くに。

飛んで来て。

突き立ったのでなければっ

おのれ……


イバハチいぃ!!


私を。

殺す気かああぁ!!




「うわっ、セイ居たの? ごめんごめんっ」




慌てて。

駆け寄るイバハチ。

私は。

迷わず。

攻撃を開始した。




「まてまてっ、わざとじゃ無いからあぁ!!」




悲鳴を上げて。

逃げるイバハチ。

私は。

容赦なく。

噛みつき。

爪を立てる。




「いたたたたっ!?」




暫くして。

イバハチは。

大の字に。

撃沈した。


私は。

満足して。

イバハチの。

腹の上に座る。




「セイちゃん酷ぇ、顔は止めてよ二枚目が売りなんだから!」




………………。

否定は。

しないけど。

自分で言うなっ




「ぐえっ」




私が。

抗議を込めて。

腹を踏むと。

イバハチは。

潰れた様な。

声を上げた。


しかし。

何してたんだろ?




「腕が鈍るといけないから、刀振ってたんだけどねぇ……」




私の疑問を。

知ってか知らずか。

イバハチが。

状況説明をする。




「やっぱ片手はきついなぁ、もっと筋力つけないとね」




そう言いながら。

腹の上の。

私を撫でた。


そうだ。

イバハチってば。

左手が。

無いんだっけ……


いつも。

服装とか。

ピシッとしてるし。

器用に。

何でもこなしてたから。

うっかり。

忘れてた……




「雪も溶けて来たし、そろそろだろうから何とかしないとね」




日の当たる。

ここの地面は。

もう乾いてる。


土方さんの。

呟きを思い出す。


もうすぐ。

春が来たら。

そうしたら……


何となく。

項垂れていたら。

イバハチが。

起き上り。

胡坐をかくと。

私を。

膝に乗せた。




「セイちゃんは変わってるねぇ、何でも分かってるみたいだ」




能天気な笑顔で。

ぐりぐり。

撫でるイバハチ。


………………。

褒めて無いだろう。

と、思ったけど。


いつも平気そうに。

笑ってるくせに。

結構。

努力してるんだな……


とか。

不覚にも。

思ってしまったから。


今日は。

大人しく。

膝に乗っててやるか……


今日は、ね。




.

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