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風邪 =参=


「鬼の霍乱てヤツですかね?」




茶を啜りながら。

総司が呟く。




「……煩ぇよ」




床に横たわり。

呻く土方さん。


鼻にかかる。

いつもより低い声。

熱く荒い息。

ぼんやりと。

潤んだ瞳。


総司を怒る声も。

心なしか。

迫力に欠ける。


土方さん。

風邪引いたみたい。

とっても辛そう。


だけど。

ずうぅっと!

土方さんと一緒にいれて。

ちょっと幸せな私。


土方さん。

ごめんなさい。




「今日一日は寝てて下さい」




と、言って。

総司は。

部屋を出て行った。


ふう……


と、一つ息を吐くと。

土方さんは。

目を瞑る。


私は側で。

コロリと丸まる。


はう~、幸せっ




暫く。

ウトウトしてたら。

足音が近づいて来て。

障子が。

カラリと鳴る。




「トシ、すまんっ、あの事なんだが……」




近藤のバカが来て。

土方さんが。

起き出す。




「後は山南さんに任せれば、大丈夫だろう」


「分かった、助かったよ!」




近藤のバカが。

出て行き。




「やれやれ……」




と、呟き。

横になる土方さん。


もおぉぉっ!!

具合悪いのに。

起こすなんてっ!!


近藤……

いつか、コロス。




「すみません土方さん……」


「副長、急ぎの報告だけ……」


「副長、あの件は……」


「副長ー、これは……」




「……寝てて下さいと言ったでしょう?」




部屋に顔を出した。

総司が。

怒った様な。

呆れた様な。

声を掛けた。


ひっきりなしに人が来て。

寝てられなくて。

結局。

起き出した土方さんは。

机に向かって。

お仕事。




「セイを何とかしてくれねぇか?」


「大人しく横になれば、離れると思いますよ?」




私は。

何とか。

休ませたくて。

土方さんの背中に。

へばりついていた。




「爪を立てるのは止めれっ」




私に急かされ。

総司に怒られ。

土方さんは。

横になる。


再び。

私と土方さんの。

至福の時間。


漸く。

土方さんが。

寝息をたて始めると。

またしても。

足音が……




「セイ? 廊下の真ん中で何して…… ぎぃやあぁぁ!?」


「いや! ここ通りたいだけっ、いだだだだだっ!?」


「えっ! 行かないから、や、やめ…… ぐわああぁっ!?」




土方さんの。

眠りを妨げ。

私の。

至福の時を。

邪魔する奴は。

何人たりとも。


ゆ、る、さ、んっ!!




「……まるで番犬ですね」




――――――――――

――――――――

――――――

――――

――


この日、新撰組において新たな『鬼』が誕生した。

鋭い牙と爪を持つ、しなやかで美しい茶トラの鬼が。




『流石は、鬼の副長の猫……』




と、誰もが震え上がったのだった。




.

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