風邪 =弐=
「どうにも、様子がおかしいんだがなぁ……」
文机に向かい。
お仕事中の土方さんが。
ぽつりと。
呟いた。
何か。
考え込んでしまって。
私が覗き込んでも。
気づかない。
ううぅ……
土方さあぁぁん!!
こんなに真剣に。
誰を思ってるか。
知ってるんだから!
悔しいから。
八つ当たりに。
行こうかな……
土方さんが。
考えてるのは。
きっと。
総司の事。
最近。
総司は。
風邪を引いたらしくて。
よく寝てる。
どうやら。
今も寝てるみたい。
私は。
コッソリ。
総司の部屋に入った。
そろり、そろり。
………………。
総司の枕元まで来たのに。
気づかない……
本当に。
具合悪そう。
気になって。
すりよってみたら。
総司の胸の辺りが。
ひゅー、ひゅー
て、鳴ってる。
……どうしよう。
総司なんて。
嫌いだけど。
でも。
誰か呼ぶべき?
「……セイ、ですか?」
悩んでいたら。
総司が。
ぼんやりと目を開けた。
声は、掠れてて。
目は、潤んで。
顔は、赤みがさして。
むくんでる。
「いつの間に、来たんですか?」
緩く微笑みながら。
総司が。
起き上り。
私を撫でる。
その手が熱くて。
落ち着かない気分。
何か言おうとしたのか。
口を開けたところで。
総司が。
咳き込んだ。
身を折って。
苦しそうで。
どうしよう。
誰か。
呼びに行こう!
と、動きかけたら。
総司の熱い手が。
私の前足を。
掴んで。
止められた。
「何だか…… ゴホッ、誰か呼びに行きそうな気がしたんですが、駄目ですよ」
コホ、コホと。
小さく。
咳をしながら言われて。
私は。
そこに座り込む。
それを見て。
総司は。
「良い子ですね」
と、笑い。
また。
咳き込む。
ぐうっ、と喉が。
鳴る音がして。
咳が止まる。
でも。
総司の部屋に。
血の臭いが。
広がった。
押さえていた手と。
口元を拭うと。
総司は。
真っ直ぐ私を見て。
「セイ、今の内緒ですよ?
すぐ治りますから、ね?」
と、微笑んだ。
すぐ。
治るよね?
風邪。
だよね?
土方さんが。
一番、可愛がってる。
総司。
嫌いだけど。
でも。
早く。
治ると良いなぁ……
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