こういうのを割れ鍋に綴じ蓋って言うのかしら?
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あまりの衝撃にデイビス様が怯えなくなったので、アラン様は自分たちの心の安定を図るべく、デイビス様とアイリッシュ様をホワイト付きでお庭の散歩に行かせた。オーフェリアはアイリッシュ様が心配みたいでくっついていったけど。
残されたわたくしたちはぐったりよ。
「なあオリヴィア。この縁談、本当にまとめていいのか? 私は不安になって来たんだが」
オリヴィア様が頬に手を当てて、目を左右に動かした後で、「たぶん……」と自信なさそうに答える。
「く、国の問題が絡みますし、本人たちがいいのであれば……よろしいのでは、ないでしょうか?」
「本人たちがいいというが、今の時点でいいと思っているのはアイリッシュ嬢だけで、デイビスはわからないぞ。というか、私はあいつがあんなに困惑した顔をしているのをはじめて見た」
「デイビス様って驚くと逆にまともになるんですね。常に驚かせておけば、あのおどおどした態度が直るんじゃないですか~」
「ティアナ、それは元も子もないと思うぞ……」
だって、最初はあんなに怯えていたのに、アイリッシュ様のひどすぎる発言で普通になっていたわよ。顔は困惑してたけど。
「あんなにちぐはぐな様子で、結婚生活は大丈夫なんでしょうか……」
ぽっちゃりおじさんバックスさんがふっくらした手をいじりながら言う。バックスさんもとっても困惑しているわね。
アラン様は残った紅茶を一気飲みして息を吐き出した。
「性格は水と油みたいに違うが、パトリス以外愛せないデイビスにはそれほど悪い縁談でもないだろう。アイリッシュ嬢と普通に会話できるようになれば、問題ない気がする。あとはファレル公爵夫人の方だが……」
そうよねえ。あっちを何とかしない限り、結婚生活に横やりをガンガン入れてきそうね。
「ファレル公爵夫人の方は、お二人が実際に結婚するまでの一年の間に対策を練ればいいのではないでしょうか? ひとまず、婚約がまとまれば一年ほど猶予ができますし」
婚約がまとまれば、一年の婚約期間を経た後で結婚式を挙げるんだったわね。だったらオリヴィア様の言う通り、ファレル公爵夫人の対策は一年の猶予があるってことよ。
「一年で何とかなるのか?」
「結婚後の生活拠点を離せば多少は何とかなるかと。ファレル公爵家は王都の本邸以外に別邸をお持ちですし、新婚だから二人でゆっくりしたいという名目で移り住むとか」
「それで大人しくしていると思うか?」
「……それは何とも言い難いですが、アイリッシュ様はあのようにカラッとした性格ですので、意外となんとかなさるんじゃないですか?」
「オリヴィアにしては珍しく投げやりだな」
「すみません……」
ま、オリヴィア様だって投げやりになりたくなるわよ。というか、そこまで干渉してあげる必要ないじゃない。あとは当人の問題なんだから。
アラン様が腕を組んで、うーんと唸る。
「もうこうなればあれだな。アイリッシュ嬢にデイビスが置かれている状況を説明し、彼女に守ってもらおう。それしかない」
普通は王子様がお姫様を守るものでしょうけど、デイビス様の場合はどう考えても彼が姫役よね。
「ふむ、そう考えると、非常にちぐはぐコンビたが、悪くない縁談に思えて来たな。他の令嬢との間に縁談が持ち上がるよりよほどいいだろう。何故ならデイビスの引きこもり生活を応援してくれるような令嬢はほかにいないだろうからな」
「それ、応援するんじゃなくて改善してもらった方がいいんじゃないですか?」
「できると思うか?」
わたくしは「パトリスぅ」と泣くデイビス様の様子を思い浮かべて、首を横に振った。
「無理ですねえ」
「だろう?」
わたくしたちは、散々話し合った結果、縁談がまとまれば放置でいいだろうという結論に達した。というか、この件に関わっていたらエンドレスな感じがするもの。あとはご両人だけで何とかしてくれることを祈るわ! 心の底から!
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次の章は「諦めていなかった女」です。
開始までもう少々お待ちくださいm(__)m











