オリジナルとコピー
◇◇◇◇
アリステル視点
200体のJ型に見送られ、扉の中に入るとそこは…
「なんだこりゃ?」
「す、すごい…」
箱型の巨大なコンピュータに回転するオープンリール。ガタガタとそこから吐き出される穴がいっぱい開いたレシート紙。
あっちこっちにある剥き出しの真空管にニキシー管
まるで昭和のアニメに出てくる科学研究所だ。
「すごいすごい!!これが先生の世界の研究室なんですね!!!」
どうしよう?ネレイは喜んでいるが、こんなレトロヒューチャーな研究所は断じて俺の研究所ではない!
「違う。こんな前世紀の遺物が俺の研究所なわけがない」
「え?こんなに凄くのに!?」
正面の巨大なガラスの向こうに工場のラインの一部が見えた。
ライン上のベルトコンベアを流れてくるのは全裸のJ型。
どうやらここはJ型の量産設備らしい。
無機質にロボットアームによって組み付けられていくJ型を見ていると…
[ようやく…見つけたぞ。プロトタイプ]
突然、背後から電子合成された声が聞こえた。
その声に慌てて振り向く俺とネレイ。
「ぶっ!?」
「ひっ!!」
俺たちの背後にいた物は…
透明の箱に入った脳みそだった…
[一万八千年ぶりだな…]
箱脳みそが再び喋る。
「ぶぁははははっ!!!の、脳みそ!箱!!レトロ!!わ、笑える!!!ぶっぶふっ!!」
透明の箱に入った脳みそ。
胴体はただの棒。
オモチャのマジックハンドの様な手。
足は4輪タイヤ。
こんな昭和初期の人間が想像した様なレトロヒューチャーなロボットがいるなんて!!
俺の笑いのツボに入る!
「え?え?す、すごいと思いますよ!」
ネレイは素直に感心しているようだ。
[やはり…擬似人格OS[アリステル・レステル]に深刻なバグがあるようだな…]
!!
「お前…何者だ?」
この擬似人格OS[アリステル・レステル]のプログラムを書いたのは俺だ。
そして、そのOSを知っているのは俺一人だけ。
なのに、この脳みそはなぜそのプログラムを知っている?
[儂はお前の生みの親…有栖川有栖だ]
「な、なんだと!?」
有栖川有栖…それは生前の俺の本名だ。
[ふーむ。どうやらあの時の起動実験で儂の記憶がコピーされたようだ]
「どういう事だ?」
[一万八千年前…儂はアリステル・レステルの起動実験に失敗して死んだ]
死んだ?俺は死んでいないぞ。
[そしてC国は死んだ儂の肉体から脳を取り出し、そのままコンピュータに接続し、儂を生きた生体コンピュータにしたのだ。]
[儂は意識のないまま、C国の生体コンピュータとしてアリステル・レステル殲IIIを作らされていた。]
[そして50年ほど過ぎ、儂の自我は目覚める
儂は、儂をこんな姿にしたC国を許せなかった]
[しかし目が覚めた時には、C国は大量生産したアリステル殲IIIで世界征服を成し遂げていた]
[儂はC国に復讐する為、自身の身体を今の姿に改造し日本に逃げた]
[そしてJ型を作り上げ、C国に復讐を始める]
[儂の復讐に怯えたC国は、潜伏した儂を殺すため世界中に核ミサイルを撃ち込んだ]
[この核ミサイルの飽和攻撃で儂は儂の生命線となる電力を喪失し、再び死んだ]
[儂は死んだがJ型は儂の命令を遂行し続けた]
[C国人を皆殺しにしろと言う命令をただ遂行し続けた]
[しかしその時、世界中の人間は全てC国人の混血児になっていた]
[故にJ型は世界中の人間を一人残らず殺した]
[人類は滅亡した]
[人類滅亡から一万七千年後。今の魔法文明が始まりを迎える]
[そこからさらに千年後。縮退炉エンジン爆発事故でタイムスリップしたアリステル・レステルがこの世界に出現する]
[その縮退炉のエネルギーで再び儂は再起動する事ができた]
「長話ありがとう。つまりお前は俺なのか?」
俺は脳みそに問いかける。
[いや、儂がオリジナルの有栖川でお前はコピーの有栖川なのだよ]
「ククク…こんな箱脳みそが俺のオリジナルの訳があるか!」
[電脳ダッチワイフがほざくな!]
「たとえ俺がコピーだとしても、てめぇをぶっ壊せば俺がオリジナルとなるぜ!!」
箱脳みそ野郎に向かって音速を超えるナックルパンチを放つ!!
「死ねや!」
[強制停止]
[強制停止信号受信。アリステル・レステルの全機能停止します]
「せ、先生!!!」
ネレイの絶叫を最後に俺は意識を失った。




