狂人と狂人
帝国技術開発局局長ネスティは王都でアリステルの秘密を探る
◇◇◇◇◇
帝国技術開発局局長ネスティ視点
「ここでいいか…」
大通りを適当に進むと、それなりに繁盛している食堂が目に入った。
入店しようとすると…
「ネスティ殿…姫にこのような大衆向けの食堂の食事など…」
姫お付きの騎士隊長がイチャモンも付けてきた。
「いいえ、情報収集が目的です。その為にはこのような下々の者向けの食堂がいいでしょう」
姫に言われ、渋々引き下がる騎士隊長。
必要とあらば、市井に混ざる事も辞さない姫の姿勢は評価に値する。
「7人だ。席はあるか?」
給仕の女性に尋ねる。
「えー…バラバラの席で相席でいいなら」
「それで結構」
動揺する騎士達。
姫の護衛の都合上、席が離れる事を危惧したのだろう。
「こちらにどうぞ」
姫と私が案内された席には先客の少女が一人いた。
女同士になるよう給仕が気を使ってくれたのだろう。
「相席失礼するよ」
「あぁ、どうぞ」
相席になったこの少女も大きなウサ耳を付け、アリステルの真似をしていた。
食事に興味がない私は姫と同じ物を注文する事にする
「うーーん?」
パラパラとメニューめくりながら唸る姫。
「ここは自分で食べるコースを決めるのですか?」
おいおい、ここは王宮じゃねぇ!!
「ぶほっぶほっ…し、失礼」
突然、むせる相席の少女。
「ひ…エーシャ…ここにコースメニューはありません。ご自分で食べたい物を注文するのです」
うっかり忘れていた。
姫は世間知らずなのだ。
「では、黄金カニの黄金トマト添えを…」
1匹20万ゴールドの食材を注文しやがったぞ!
ぷるぷる小刻みに震えている相席の少女。
「え、えと…サワガニの塩茹ときゅうりの塩漬けならあります」
おずおずと告げる給仕の少女。
「そ、それを2人前で!!」
「かしこまりました」
次からは姫は口を開かないようにお願いしよう。
「ねぇねぇ?お姉ちゃんはお姫様のなの?」
相席の少女がにこやかな笑顔で尋ねてくる。
「えぇ、私は帝
ガンッ!
私は無礼にも姫の座る椅子の足を蹴る。
ダメだ!この姫!!
人生の大半をワイバーンに乗る事に費やしてきたせいで、脳みそまで軽量化が進んでいやがる!
「と、ところで君の服…王国で流行っているのかい?
女の子達がみんな着ているけど?」
これ以上、姫がボロを出す前に話を変える。
「うん、これが私の正装なの」
「ほほう…」
改めて少女の姿を見る。
金髪ロングヘアー、美しい碧眼。美の神によって造られたとしか思えない美しい顔立ち。
報告書に添付されていたアリステルの写し絵とそっくりだ。
つか!!!アリステル本人じゃね!?
円卓会議でアリステルと同席した事がある姫を見る。
(…別人です。あの側に居るだけで感じられる幽鬼のような威圧がありません)
姫が耳打ちする。
「ほんと…君が一番アリステルにそっくりだよ!」
アリステルとの唯一の違いは、彼女が人間である所だ。
もしアリステルが古代魔法人形と言う事前情報がなかったら間違えて誘拐していたかも知れない。
「私達は王国を救ったそのアリステル様に会いたくて遠い所から来たんだ」
ここまで再現度の高い模倣ができる彼女はアリステルの関係者か身内かもしれない。
「あぁ、自己紹介がまだだったね。私はファーラスト国の商人ネル。そしてこちらが我が商会の主人エーシャです。」
「私がそのアリステルだよ?」
少女はアリステルになりきっているようだ。
ならば、それに合わせて色々アリステルについて聞き出してみよう。
「ねぇ?アリステル様の剣は本当に300キロ以上あるのかい?」
「サワガニの塩茹のキュウリの塩漬けお待ちどうさま〜」
「うわぁぁぁ…カニの死骸ですわ」
丸茹でされたサワガニを見てヒく姫。
「ど、どうやって食べるのですの?」
「丸齧りするのです」
「ナイフもフォークもありませんわ?」
「手掴みで食べるのです」
目を丸くする姫。
市井の生活を勉強させてから連れてくるべきだった。
「あ、あの…アリステルさん、良かったら一緒に食べませんか?」
アリステルにサワガニが乗った皿を差し出す姫。
ナイス、アシストだ!姫!!
もし少女が本物の魔導人形なら食事は出来ないはずだ。
「いいの?」
可愛らしく笑顔を見せ、サワガニを一つ摘み上げるアリステル
ポイッバリバリボリボリ…ごっくん。
「美味しい」
やはり、彼女は魔導人形ではなかった。
アリステルがサワガニを食べる様子をじっくり見る姫。
「そうやって食べるのですね」
見よう見まねでサワガニを一つ、口に放り込む姫。
姫は別に探りを入れる為に食事を進めた訳ではなかった。
単に食べ方を知らなかっただけのようだ。
と言うかアリステルは最初から普通に食事をしていた。
バリバリバリボリボリボリ…
姫らしからぬ下品な音を立て噛み砕く。
「!!」
それから両手でサワガニを掴みつつ、次々にサワガニを口に放り込む姫。
「ほかほかでパリッとしていて塩味が効いて美味しいです!」
素材の悪さを濃い味付けでごまかす庶民料理は、
子供舌のエターシャ姫に合ったようだ。
「ねぇ、アリステル様はもしかして魔導人形なのかな?」
「魔導人形?」
小首を傾げるアリステル。
「300キロの剣を振り回し、火竜を倒すなんてただのバニーガールと思えなくて…もしかすると古代魔導人形かなって」
「古代魔導人形って見た事ないから分からない」
それもそうか、古代魔導人形はドワーフ王国から発掘された数体しかない。
「古代のお人形さん、私も見たい!!」
席から立ち上がる自称アリステルの少女。
「良いけど、その代わりアリステル様に会わせて貰えないかな?」
ダメ元で聞いてみる。
「だから…私がそのアリステルだって」
「いや、だって君は普通の人間じゃないか」
だが、私はそこで気がつく!
周りの冒険者達が青い顔をしている事に。
「じゃ、証拠みせてあげるよ」
偽アリステルのその一言で逃げ出す冒険者達!
ま、まさか!本物!?
◇◇◇◇
ランバード王国第三王女アルフレア視点
「次!」
ガーンッ!
「外れ!」
「次!」
ガーン!
「外れ!」
私が掛け声を出すと、兵士がクレーを空に向かって投げる。
それを撃つ。
そして結果をレイチェルが報告する。
私は、今アリス様が提案した目隠し状態でのクレー射撃をしている。
成果はまるでない。
「やはり、生きた標的を使わないとダメかしら…」
王都内の犯罪者や反逆者は皆、標的がわりにしてしまったし…近々盗賊狩りでもして標的を補充しよう。
そう思っていると…
「姫!!大変です!!!アリステル様が!!アリステル様が!!」
伝令兵が射撃訓練所に駆け込んできた。
「どうしました!?アリス様がまた何か破壊しましたか!?」
またあの歩く破城槌が何かやらかしたのかとため息をつく。
「ゆ、誘拐されました!!!」
「…………はっ?」
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