26 花乙女と悪役令息(ウェンディ視点)
ウェンディ・ラミルは貧しい平民の出身だ。
幼いころから病弱で、一年の大半を救護院で過ごした。
療養の時間が長く、同年代の子どもと接する時間や機会はあまりなかった。
そんな彼女にとって何よりの友人は、院の庭園に咲き誇る花々や草木だった。
植物に触れているだけで気持ちが安らぐ。
彼女は花や木に話しかけ、心を癒やしていた。
そんな生活の中で、ウェンディは少しずつ健康を取り戻していった。
まるで花々や草木から生命力を分けてもらっているかのように――。
やがて、彼女の魔法の素養があることが分かった。
魔法の素質者は希少なため、彼女は平民でありながら王都の王立学院への入学が決まった。
特待生扱いのため、平民でも高い学費がかからない。
将来の就職にも有利になるため、両親は手放しで喜んだ。
ウェンディにとっては王都のような場所で、しかも貴族の子息に混じって学院に通うというのは精神的なプレッシャーが多かったが、しかし……、
「将来のためよね。がんばろっ」
持ち前の前向きな精神で入学を決めたのだった。
ただ、学院での生活は予想していた通り、楽ではなかった。
貴族の生徒たちの中には、彼女を見下す者もが多かった。
教師の中にも、露骨に貴族の子息を贔屓し、平民にきつく当たる者もいた。
それでもウェンディは明るい気持ちを失わなかった。
わずかなかがら分かり合える者もいたからだ。
同じ平民出身の生徒や、貴族の子息の一部とも仲良くなった。
中でも……ジュリエッタ・フォルテは名門貴族の令嬢ながらウェンディのことを『親友』とまで呼んでくれた。
そんな人たちの支えを受けて、ウェンディは努力を続けた。
そして、今日――その努力がついに花を開いたのかもしれない。
植物魔法。
入学以来、魔法の成績はずっと低迷していた彼女にとって、今日の出来事は奇跡だった。
それを為しえたのは今までの努力だけではなく、今日出会った一人の少年がきっかけのような気がしてならなかった。
ディオン・ローゼルバイト。
どこか陰のある美しい少年貴族に、彼女は魅せられていた。
彼の言葉の一つ一つがウェンディの心を揺さぶり、出会ったばかりだというのに、彼のことが気になってたまらない。
彼のおかげでウェンディは自信を深めることができたし、一緒にいてこんなに楽しい気持ちで話せる異性は初めてだったのだ。
「ディオン様……か。また会えるかなぁ」
ポウッとした気持ちでウェンディは空を見上げた。
早まった胸の鼓動が、いつまでも収まらなかった――。
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