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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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71.猊下とか

 

 ミヤコちゃんはひらりとキャンプ地――じゃなかった野営地に降り立つと、あとからヒッキーと筋斗雲もついてきた。

 私たちを下ろしたミヤコちゃんはいつもの美少女に変わったけど、水の王様は驚いてない。

 ただ筋斗雲で地面すれすれを飛んで近づいてきた。

 と思ったら、いきなり土下座したよ。……筋斗雲の上でだけど。


『まさか……まさか、ドラゴン猊下に直接お目にかかる機会があるとは……なんという栄誉。喜び。誉れ。この矮小な胸は歓喜に震えております』


 えーっと、猊下って何だろう?

 とりあえず水の王様がミヤコちゃんを敬っているのはわかったよ。

 あと間違いなくめんどくさいタイプだね。

 そう考えてたら水の王様がこっちを見て睨んだ。


『ほれ、そこの娘、何を突っ立っておる! 早く猊下に椅子をお持ちせぬか!』


 ほら、やっぱりめんどくさい。

 でも立ち話もなんだし、移動しようか。


「ミヤコちゃん、あっちの椅子に座ろう」

『うむ。そうだな』

『娘! 人間の分際で猊下に何という口をきくのだ! 吾輩が成敗して――』

『黙れ、水の王! コルリは我の友達である! 無礼な物言いは許さぬぞ!』

『――はっ! 仰せのままに!』

「……ツグミさん、とりあえず座っテ話そうってコトになったヨ」

「そ、そうなのね……」


 ちょっと違うけど、要約すればそういうことなので、ツグミさんに伝えたら理解してくれた。

 うん、納得してないみたいだけど。


「って、ヒッキーがいない!?」

『むむ。あやつはまた土に還ったのか』

「ミヤコちゃん、その言い方はちょっと違う。でもまた隠れちゃったみたいだね」


 まあ、いいか。

 ヒッキーがいたら余計にややこしくなりそうだし、まずは水の王様に説明して協力してもらおう。

 アウルはまだかな?

 そろそろ帰ってきてくれてもいいんだけど……って、あ。


「ミヤコちゃん、バリアーを……防壁魔法を解いてくれないとアウルたちが戻って来れないんじゃないかな?」

『おお、忘れておった』


 わざとじゃなかったんだ……。

 どうやらここはバリアーの端っこだったみたいで、ちょっと目線をずらせば権兵衛が踊ってるのが見えるのに。

 うん。たぶん気付かなかっただけで、みんなも無視してたんじゃないよね。

 もうわかったから踊る必要はないよ、権兵衛。


 仕方なく目を合わせれば、権兵衛はぱっと顔を輝かせた。

 頑張れ、私。可愛いなんて思ったら負けだ。


『はっはっは! ようやく俺様に気付いたか』

「あ、うん。久しぶり、権兵衛。お母さんたちは元気だった?」

『うん? 何のことだ?』

「……何でもない」


 遅くなっただけでなく、忘れてるとか。

 まあ、手紙を届けることはできて、お母さんたちには私たちが無事にここにいることは伝えられたからよしとしよう。


『風の王よ、なぜお前がここにいる?』

『何を馬鹿な質問をするのか、水の王よ。俺様はドラゴンやコルリとはすでに友達だからな。お願いをされるほどの仲だぞ?』


 うん。そのお願いを忘れてるし、水の王様を見つけることもできなかったけどね。

 まあ、ヒッキーについては感謝してるけど、いつの間に友達になったんだっけな。


 ミヤコちゃんを崇拝してるっぽい水の王様は権兵衛の言葉にぷるぷる震えてる。

 水の王様は権兵衛とは仲悪くないのかな?

 ちょっと心配になったけど、ミヤコちゃんは気にしてないみたいなので大丈夫そうだね。


 椅子にちょこんと座ったミヤコちゃんは、ツグミさんが注いでくれたジュースを飲む姿が可愛い。

 というか、ツグミさんがこの状況に馴染んでることにびっくり。

 慣れってすごいね。


『猊下、なぜこのような風来坊を相手になさるのです! この者は傲慢で、いい加減で、自惚れが強く、迷惑しかかけぬのですよ!』


 まだ筋斗雲の上に立ったまま、水の王様は悔しそうに訴えた。

 うん。権兵衛については全く否定できない。

 私もツグミさんにお礼を言ってからジュースを飲みつつ、ミヤコちゃんが何て答えるか待った。

 水の王様についてはあまり私が喋らないほうがいいと思うから。


『ふむ。我は友達のために力になりたいのだ』

『まさか風の王が友達などとおっしゃるのですか!?』

『……友達の友達はみな友達なのだ』


 待って、待って。

 友達の友達って、私と権兵衛が友達ってこと?

 まあ、それでもいいけど、よくないのは水の王様みたい。

 さっきよりも機嫌が悪くなったのがわかるよ。


『その、友達というのが……』


 水の王様は耐えきれないかのように歯を食いしばり、私を睨んだ。

 ええ、怖いんですけど。

 そりゃ、私がドラゴンの友達っていうのはびっくりだけど……。


「ミヤコちゃん、大好き!」

『なっ――!』

『うむ。我もコルリが大好きだぞ』


 立ち上がってミヤコちゃんを抱きしめれば、水の王の口がぱかって開いた。

 ふふん。

 意地悪い自覚はあるよ。

 それからいつもにこにこして黙って見ていてくれるツグミさんに抱きつく。


「ツグミさんモ大好き!」

『我もツグミが好きだぞ』

「ありがとう、二人とも。私も大好きです」


 ミヤコちゃんも私と一緒にツグミさんに抱きついたから、言葉がわからなくても伝わったみたい。

 三人でぎゅってしてたら、なぜか権兵衛が両腕を大きく広げた。

 

『よし、コルリ。俺様の胸にも飛び込んで来い』

「あ、遠慮します」

『なぜだ?』


 なぜってこれでも乙女だからね。

 友達かどうか以前に、気安く半裸の男性に抱きついたりするわけないよ。




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